BKi810 v3.3 で 1.1GHz PentiumIII を使う

■BKi810 v3.3のCPUをアップグレード
■BKi810で利用可能な最強の CPU
 BKi810 v3.3 で 1GHz Celeron を 使うで BKi810 v3.3 で 1[GHz] を超える CPU を試してみたわけで すが,実際に使用できてしまうと欲が出てきてしまいます.折りしも Intel から,ベースクロック 100[MHz] の PentiumIII は全て生産中止の旨アナウンスが出たこともあり,入手可能な うちに利用可能な PentiumIII を入手しておこうという気になりました.しかし, 前回1[GHz] の Celeron を試したこともあり,同じクロックの PentiumIII を 入手しようと考えて日本橋を徘徊しましたが,残念ながら PentiumIII 1B [GHz] は売られていましたが,ベース100[MHz]のものは見つけることが出来ません でした.

 そこで,ベースクロック 100[MHz] で最速の PentiumIII を 試すことに方針を変え,バルクの PentiumIII 1.1[GHz] を購入しました. これは Coppermine D-Step コアという,『対応したM/Bでな ければ動作しない』というものでして,BKi810 で使える保証はありません. しかし,人柱にでもなればと腹をくくることにしました.値段は2万円を少し 切るくらいです.Celeron 1[GHz]が1万円前後で売られていることを考える と少し割高な感じもしますが,絶対値として2万円はかなり安く感じます. また,今購入しなければ入手できなくなる可能性もあるため, 迷わずに購入することにしました.

 BKi810 v3.3 で動かす際に問題になりそうな点は3点程あります.

  • BIOS が PentiumIII/1.1[GHz] に対応しているか
  • M/B が Coppermine D-step に対応しているか
  • BKi810 の非力な電源が持ちこたえるか

 詳しくは後述しますが,高クロックのCPUを使用する際には,電源の 問題は避けて通れないということを痛感させられました.

■BKi810 v3.3 で PentiumIII 1.1[GHz]を使う
■PentiumIII 1.1[GHz] の取り付け
 まず,CPUを換装する前に,安全のために BIOS を最新版に update して おきましょう.手順については,こちら のページを参照してください.

 さて,今回購入してきた PentiumIII は,バルク品と言われるもので,CPU 単体で売られています.購入時に店頭で,コア欠けやピンが曲がっていないか 確認させられるのには閉口しますが(自分で壊しておいて返品をするマナー の悪い客がいるのだと思うと,あまりいい気分がしません),リテール版と比較 して若干値段が安く設定されているというメリットがあります.また,最近は リテール版の PentiumIII を店頭であまり見かけなくなって来ていますので, そもそもリテール版を入手するのは難しいかもしれません.

 また,今回はかなりの発熱が予想されるため,使用するシリコングリスおよ び CPU ファンも交換することにしました.

PentiumIII 1.1[GHz] (D-Step) の表面.これまでの FC-PGA 版 と違い,マーキングの仕方が変更に なっています(C-Stepでは,レーザーマーキングは下側に1箇所.D-Stepでは上下計2箇所).
CPU裏.これまでのものと少しランドが変更になっており, 抵抗が『III』の形になっていません.Celeron 1[GHz]と同じです.
ヒートシンクメーカーとして定評のある,Alpha製ヒートシンクファンを購入. PAL15U.PAL-153U という型番で売られていました.ラックマウント 1U PC用のヒートシンク,ファンのセットです.
最近はラックマウントPCの販売数が増加傾向にあるためか,各社から出ている 薄型CPUファンの種類も増えてきています.銅製のものが多いようですが, 3k円を少し下回る金額で購入可能です.
今回は,PAL15U を使用することにしました.とは言え,両者は 中身的にはまったく同じでした(違いはあるのだろうか?).値段はそれなりにします.
箱の中にはファン,ヒートシンク,固定用金具,ねじ, リテンション用のスポンジ,シリコングリス,マニュアルが入っています.
ヒートシンクは剣山タイプのアルミ製です
ヒートシンク裏側には銅版が貼り付けられています
ファンは薄型のもの.羽が多くなっています.でも,心持ち力不足な気も…
マニュアル通り組み立てるとこのようになります.なお, このように組み立てると,ファンはヒートシンク側から吸気し,上側に排気 するようになります
WinDy Stream との比較1.PAL15Uは6cmファンを使用しており, 一回り大きくなっています
WinDy Stream との比較2.厚さはほぼ同じです
シリコングリスはこのようなパウダーの含まれた灰色のタイプを使用しました.通常の 白色のタイプよりもよく冷えると評判のものです.これを薄くムラ無く塗るように します.CPUコアとヒートシンクの接触が悪いと,冷却効率が落ちて熱暴走 することもあるので丁寧に
M/BにCPU,CPUファンをはめ込みます.かなりの テンションをかけてはめ込むタイプのため,コア欠けに注意.斜めに強く力が 入らないように,丁寧に取り付けます
起動画面.PentiumIII 1100MHz と,きちんと認識されていることが分かります.

 起動しない場合は,FC-PGA/PPGA 切り替えのジャンパーピンや各種 コネクタの緩みなどを確認してみてください.

■事故発生.電源が昇天!
 PentiumIII 1.1[GHz] を乗せて BKi810 は何事も無く起動し,hdbench 等を走らせたところ 拍子抜けするほど順調に動いていました.CPU冷却関係も問題なし(実はシリコングリスの塗り が甘く,一度熱暴走したけど).パフォーマンス的には目を見張るほどキビキビ動き,さすがは PentiumIII 1.1[GHz] だなぁと感心しておりました.そして事故は恒例の DVD video 再生 30分 のテストを行った際に発生しました.

 最初は順調に再生していたのですが,10分ほどしたときに唐突に電源が落ち,ケーブルが焦げる ような嫌な匂いが部屋の中を漂います.早速分解して調べたところ,電源ユニット内のトランスや レギュレータ,コンデンサー等のパーツがかなりの高温になっており,過負荷&冷却不足で完全に 壊れてしまったようです.

 その後の顛末に関してはBKi810でATX電源を使う で詳しく解説しますが,電源ユニットを外し,BKi810 を外付け ATX 電源で使用するという方法で 急場をしのぐことにしました.

 改めて書くことでも無いかもしれませんが,電源ユニット周りの 事故はとても危険です.最悪発火や発煙等の現象を伴い,深刻な事態を引き起こす 危険性もあります.一連のページを参考に CPU を乗せ換えたり内蔵ドライブを交換することはあく まで自己責任で行うことはもちろんですが,とりあえず今動いているからといって,電源が過負荷に なっていないとは言い切れない部分があることを認識しておいてください.

 一般の電源のように,過負荷になった時点で安全回路が働き,電源供給をストップするような 構造であれば安心なのですが,BKi810 の純正電源ではいきなり死んでしまうみたいですね.

■BKi810 v3.3 で PentiumIII 1.1[GHz] を使用した際のパフォーマンス
■Byte Bench でのパフォーマンス調査
 パフォーマンスのチェックは,Byte Benchmark を用いて行いました.ベンチマークに関しての詳細は,こちらのページを参照してください.

※Maxtor 91531U3を使用.メモリはSDRAM 256MB
CPUBKi810 Typeクロック[MHz] Ari Dhy Exe File Pipe Shell
Celeron 400v1.6400 (66*6) 41.7 34.8 27.0 138.5 97.8 15.5
Celeron 400v1.6450 (75*6) 46.9 39.1 30.9 138.8 109.9 17.5
Celeron 533Av1.6533 (66*8) 55.7 47.0 31.2 136.5 130.3 19.8
Celeron 533Av1.6600 (75*8) 62.5 52.7 36.1 136.9 146.2 22.2
Celeron 766v1.6 766 (66*11.5) 80.0 67.5 36.8 139.0 186.9 25.5
Celeron 766v1.6 863 (75*11.5) 89.9 75.8 42.3 138.3 208.4 28.9
PentiumIII 650v3.3650 (100*6.5) 67.9 57.3 54.8 140.4 158.4 25.8
PentiumIII 750v3.3750 (100*7.5) 78.3 65.7 59.8 139.9 181.0 28.5
Celeron 1000v3.3 1000 (100*10.0) 104.4 88.2 45.4 140.5 242.1 32.2
PentiumIII 1100v3.3 1100 (100*11.0) 114.9 97.0 80.0 140.1 269.9 37.5

(略語の意味:
 Ari :Arithmetic Test (type = double)
 Dhr :Dhrystone 2 without register variables
 Exe :Execl Throughput Test
 File :File Copy (30 seconds)
 Pipe :Pipe-based Context Switching Test
 Shell:Shell scripts (8 concurrent))


ベンチマーク結果のグラフ

■HDBench 2.61
 参考値として,HDBenchでも計測してみました.

CPU 解像度 色数 ALL Text Scroll DD Read Write Memory
Celeron 766 (66*11.5) 1024x768 16bit 24692 62254 49399 22344 3936 11588 0 37 23757 24264 38115
Celeron 863 (75*11.5) 1024x768 16bit 26975 69902 55469 25353 4146 13051 198 37 23757 23924 41320
PentiumIII/650 1024x768 16bit 22443 52763 41866 21596 3489 10109 0 29 24380 25345 32183
PentiumIII/750 1024x768 16bit 24453 60904 48321 21634 3880 11535 0 29 24497 24853 37295
Celeron 1G (100*10.0) 1024x768 16bit 30116 81237 64431 22354 5069 14991 0 29 24322 28523 48563
PentiumIII 1.1G (100*11.0) 1024x768 16bit 32246 89367 70912 22364 5732 16212 0 29 24380 29007 52951

■パフォーマンス考察
 ByteBenchの結果から,クロック上昇に応じたパフォーマンスアップが図られているのが分かる と思います.また,Celeron 1[GHz]では振るわなかった "Exe" の部分に関しては,劇的に上昇 しています.やはり PentiumIII の L2 キャッシュの大きさは,大きなプログラムの実行に際して, かなりパフォーマンスに影響を与えるようです.

 なお,詳しいパフォーマンスの考察に関しては,こちらのページ にまとめさせていただきました.

■CPU 冷却に関して
 冷却検証実験1冷却検証実験2 と同様に,DVD Video の30分以上連続再生を行い,各温度がどの程度まで上昇するかを調べてみました. また,これまで使用していた WinDy Stream, Alpha PAL15U(排気),Alpha PAL15U(吸気)の3パターン を測定してみました.なお,電源ユニット故障により,全ての計測は外付け ATX 電源を使用した 環境下で行っています.FDDはこれまで同様,外してあります.

PentiumIII 1100[MHz] を動作させた際の温度()
環境CPU 温度 [度]M/B 温度 [度]
WinDy Stream50度32度
Alpha PAL15U(排気)59度31度
Alpha PAL15U(吸気)51度33度

 室温が約 20度の状態で計測し,BIOSでモニタした値を列挙しています.

 ここで注目すべき点は,PAL15UよりもWinDy Stream の方がよく冷えるということと,PAL15U のファンの方向を吸気にすることにより,CPU温度がかなり下がったということです.

 前者は,BIOS 画面で確認したところ,WinDy Stream のファンは 5000[rpm] 近辺の回転数 であるのに対し,PAL15U は 4000[rpm] を下回る回転数のため,空気の流量がかなり少ない ためではないかと思います.しかし回転数が低い分,PAL15U は低騒音であり,これまで耳障り に感じていた高周波の騒音が無くなり,かなり静かになりました.
 CPU温度が51度まで下がれば十分であると考え,現在は PAL15U を使用しています.

 後者に関して解説しますと,筐体背面で排気方向にファンを動かしているため,筐体内の気圧が 下がっています.そのため,本来FDDが取り付けられていた部分から筐体内部に外気が 流入するわけですが,この通り道に対してCPUファンが排気をしようとしたところで,気圧の関係から うまく排気出来ていないのではないかと思います.また,熱せられた空気を排気したところで,再び 筐体内に 吸い込まれてしまうため,筐体内で熱が循環してしまっている可能性もあります.
 一方,吸気にした場合には,CPUファンが外部から空気を取り込み,筐体背面から排気するという 空気の流れが出来るため,効率的に冷却が出来ているのではないかと思います.


PAL15U のファンを吸気するように変更して取り付ける

 余談ですが,先日ある方から『BKi810 を使用していると,隙間という隙間に埃が詰まってしまって 困ってしまう』というメールを頂きました.私はきちんと検証していませんが,上記の結果から, あるいは『筐体背面からフィルタ付きのファンで吸気→CPUファンで排気』という空気の 流れにすることにより,この問題を解決できるかもしれません.

■総括
■まとめ
 CPUを変更するだけで,動作がとても軽快なった感があります.正直言いまして,これ程差 体感速度に出るとは思ってもいませんでした.ある意味,PentiumIII/1.1[GHz]は BKi810 にとっての最終兵器かもしれません.

 しかしその最終兵器は両刃の剣であり,電源故障の引き金を引く可能性もあります. 外付け電源の用意をするなど万全の体制で望むのであれば話は別ですが,全ての方に お勧めできるものではありません.

 うーん,一度この快適さを味わうと,元の環境に戻れない….会社で使用している, それなりに高クロックのCPUを積んでいるマシンよりも快適かも…


『BKi810 活用メモ』 へ戻る