BKi810 v3.3 で 1GHz Celeron を使う

■BKi810 v3.3のCPUをアップグレード
■BKi810のアップグレード
 BKi810 が店頭から姿を消し,店頭で売られている PC Chips 製 BookPC が SiS 630E ベースのものに変わってからかなり経ちます.YahooやMSNのオークションでは 最近 BKi810 が売りに出されることも多いようで,『そろそろ買い換えようか』というユーザー がかなり増えてきているのかなと思ったりもします.

 そんなことを考えながら,先日日本橋巡りをし,Book型 ベアボーンPCを見て回りました. しかし,個性的なものはあまり無く,BKi810 を買い換える程の衝動に駆られるものはありま せんでした.また,大抵のものは CPU ソケットが狭いスペースに押しやられており,BKi810 と 同様に, CPU 冷却の問題を抱えそうな設計のものばかりです.かと言って,MicroATXに 行くのは私の趣味に合わないので,現在選択肢として挙げられるものは殆どありません でした.

 そのようなわけで,もうちょっとパワーアップして色々と遊ぶことを考えたわけですが,やはり 多くの人が気にしているのは,BKi810 はどこまで高クロックの CPU が使用できるか ということではないかなと思います.ぶっちゃけた話をしてしまいますと,個人的には これまで v3.3で使用していた PentiumIII の750[MHz]で十分満足していまして,おそらく BKi810 のメインユースであろうと思われる,Office系ソフトの利用や DVD Video の再生, そして Internet 端末としては十分過ぎる性能ではないかと思います.人間の感覚変化は, 刺激の強度の変化の対数に比例するという Weber-Fechinerの法則の法則もあること ですし,例えば 300[MHz] が 600[MHz] になるのと比較して,700[MHz] が 1000[MHz] になったとしても,感覚的には大した差は感じない筈です.

 そのようなわけで,BKi810での 1[GHz]超えのチャレンジは,非力な電源容量のことも 考えますと,少し危険で,かつ,あまりメリットが無い挑戦と言えるかもしれません.

■BKi810で使用できるCPUについて
 さて,つい先日,こちらのページの方に,ベース クロック66[MHz]のCeleronが生産中止になるアナウンス発表されたことを書きました.こ のことにより,BKi810 v1.6 で使用可能な CPU は Celeron 766[MHz]までとなったわけ です.
 BKi810 v3.3 の方はというと,FC-PGA に対応しているため,v1.6 と比較して,CPU の選択の幅が広くなっています.また,ECS より最近公開された BIOS*に update することにより,100[MHz]ベースクロックの Celeron も利用可能になりました.そのため, v3.3 で利用可能な CPU は,PenitumIII(Coppermine),Celeron(Mendocino, Coppermine-128 (base: 66/100[MHz])という多くの種類に対応したことになります.

*[03/02/07]Link切れ. Linkのページからリンクを張り直しましたので, こちらのページから辿り,BIOS Image をダウンロードしてください. それにしても,メーカーがこうコロコロとページ構成を変ると困ってしまいますね…

 しかし,ご存知のとおり,Intel は猛烈な勢いで Pentium4 を売ろうとしています.その 関係もあり,Pentium4 の定価を劇的に下げるのと同時に,Pentium4と競合する PentiumIIIのラインを無くそうとしています.また,最近出てきている新しい CPU は, 対応した M/B でなければ動かないと言われている Coppermine コアの D-step, そして Tualine コアに移行しつつあります.そしてさらに Intel は, '01/08/22 付けで ベースクロック 100[MHz] のCPU,PentiumIII 1[GHz],1.1[GHz],Celeron 850[MHz], 800[MHz]の生産中止を発表しました.つまり,BKi810 v1.6 に続いて,BKi810 v3.3 で利用可能な CPU が殆ど無くなってしまうということになります. '01/11現在のラインナップで BKi810 v3.3 で利用可能だと思われる CPU は,'91/08/31 に発表された Celeron 1.1[GHz],1[GHz],950[MHz]のみということになります(Celeron 1.2[GHz]は Tualatine コアのため,利用不可).ただし,これらCPUはメーカーが BKi810 で利用可能 であると言っているわけではありませんので,あくまでも利用は自己責任ということになります.

 市場を見回してみると,世間はギガヘルツ CPU ばかり.今回は検証の意味も 含めて,マイルストーンとも言える 1[GHz] の CPU を試してみることにしました. なお,1.1[GHz] の Celeron にしても良かったのですが,購入時に価格差がかなり あったため,1[GHz](購入時,13k円くらいでした.今は1万円を切っています)にして います.また,本当は PentiumIII の 1[GHz] の方も試して みたかったのですが,ベース100[MHz]のタイプを店頭で入手することが出来なかった ため,今回は見送りました.

■BKi810 v3.3 で Celeron 1[GHz]を使う
■BIOS を update
 Celeron 1[GHz] を使用する前に,新しいタイプの Celeron を利用可能にするために, BIOS を update しておかなくてはいけません.まず,クリーンなDOS起動用の フロッピーを作成してください.Win9x 系であれば,DOS窓を開け,『format a: /s 』コマンドで作成することができます.作成後,このフロッピーに, BIOS 書き込み用のソフト (awd77.zip をダウンロードし,展開)およびBIOSイメージをコピーします. BIOSイメージ は,このページに ありますので,ここから最新版(bki1509ln.exe)をダウンロードし,展開してください. 01419ln.binというファイルがそれです.

 BIOS update 用のフロッピーを作成したら,このフロッピーでブートしてください.そして, 『awd77 01419ln.bin』と入力し,実行します.それ以降は以下のように update 作業は進みます.

awd77 が起動したら,イメージファイル名を確認してください.現在の BIOS を保存しなくて良ければ,ここで"N"キーを押します(通常はこれで良い).
写真にうっすらと私が 画面に写りこんでいるのはご愛嬌 :-)
BIOS の update 中画面.しばし待つ.決して電源を落としてはいけない
BIOS update 後に再起動すると,BIOS のバージョンが 2001/04/19 S になっているはずなので確認する.
目に見えた BIOS 設定の変更点は,ユーザーがベースクロックを変更できな くなっていることです(残念…)
CPU倍率はこのような感じのものが用意されていますが,Intel製CPUの場合,CPU 側で倍率固定になるため,あまり意味はありません

 なお,BIOS update を行った場合は,一度 BIOS 設定を default 値にクリアし,各種設定を 再度行った方が安全です.

 ちなみにこの BIOS では,64[GB] 以上のディスクもきちんと認識するようになっている ようですので,今後大容量のディスクを使用することを検討している人は,update して おいた方が良いでしょう.

■Celeron 1[GHz] の取り付け
 今回購入してきた Celeron は,所謂リテールパッケージと言われるもので,CPU の他に,ヒートシンクおよびCPUファンが同梱されています.コアは Coppermine-128k であり,100[MHz]*10倍 の 1[GHz] で動作します.従来の FC-PGA 版の Celeron との違いは,ベースクロックが 66[MHz] から 100[MHz]に引き上げられたことだけです.

 なお,余談ですが,Intel はデスクトップ向けの CPU のベースクロックをスライドさせ, エントリー向けの Celeron を 100[MHz] にするのと同時に,PentiumIII を 133[MHz] のもののみにしつつあります.Celeron のベースクロックの上昇が直接パフォーマンスに 影響しそうなため,ベンチマークの結果が楽しみです.

Celeron 1[GHz] リテールパッケージ
ベースクロック 100[MHz]です
マレーシア産
CPUの他に,ヒートシンクとCPUファンが同梱
巨大なヒートシンクとCPUファン.当然 BKi810 では利用できません
CPU表側.これまでの FC-PGA 版 Celeron と異なり,マーキングの仕方が変更になっています(これまでは,レーザーマーキングは下側に1箇所.新しい版では,上下計2箇所).
CPU裏.これまでのものと少しランドが変更になっています.
CPUをはめ込んで…
CPUファンを固定.今回も WinDy Stream を使用しました.
なお, かなりの発熱が予想されますので,シリコングリスの塗り方には注意を払って ください.塗り方一つで温度がかなり違います.
CPU換装後,起動画面できちんとCPUを認識していたら完了です.写真のように,新しい BIOSは,きちんとCeleron 1.0 [GHz]と認識していることが確認できます

 起動しない場合は,FC-PGA/PPGA 切り替えのジャンパーピンの設定や, 各種コネクタの緩みなどを確認してみてください.

■BKi810 v3.3 で Celeron 1.0[GHz] を使用した際のパフォーマンス
■Byte Bench でのパフォーマンス調査
 パフォーマンスのチェックは,Byte Benchmark を用いて行いました.ベンチマークに関しての詳細は,こちらのページを参照してください.

※Maxtor 91531U3を使用.メモリはSDRAM 256MB
CPUBKi810 Typeクロック[MHz] Ari Dhy Exe File Pipe Shell
Celeron 400v1.6400 (66*6) 41.7 34.8 27.0 138.5 97.8 15.5
Celeron 400v1.6450 (75*6) 46.9 39.1 30.9 138.8 109.9 17.5
Celeron 533Av1.6533 (66*8) 55.7 47.0 31.2 136.5 130.3 19.8
Celeron 533Av1.6600 (75*8) 62.5 52.7 36.1 136.9 146.2 22.2
Celeron 766v1.6 766 (66*11.5) 80.0 67.5 36.8 139.0 186.9 25.5
Celeron 766v1.6 863 (75*11.5) 89.9 75.8 42.3 138.3 208.4 28.9
PentiumIII 650v3.3650 (100*6.5) 67.9 57.3 54.8 140.4 158.4 25.8
PentiumIII 750v3.3750 (100*7.5) 78.3 65.7 59.8 139.9 181.0 28.5
Celeron 1000v3.3 1000 (100*10.0) 104.4 88.2 45.4 140.5 242.1 32.2

(略語の意味:
 Ari :Arithmetic Test (type = double)
 Dhr :Dhrystone 2 without register variables
 Exe :Execl Throughput Test
 File :File Copy (30 seconds)
 Pipe :Pipe-based Context Switching Test
 Shell:Shell scripts (8 concurrent))


ベンチマーク結果のグラフ

■HDBench 2.61
 参考値として,HDBenchでも計測してみました.

CPU 解像度 色数 ALL Text Scroll DD Read Write Memory
Celeron 766 (66*11.5) 1024x768 16bit 24692 62254 49399 22344 3936 11588 0 37 23757 24264 38115
Celeron 863 (75*11.5) 1024x768 16bit 26975 69902 55469 25353 4146 13051 198 37 23757 23924 41320
PentiumIII/650 1024x768 16bit 22443 52763 41866 21596 3489 10109 0 29 24380 25345 32183
PentiumIII/750 1024x768 16bit 24453 60904 48321 21634 3880 11535 0 29 24497 24853 37295
Celeron 1000 (100*10.0) 1024x768 16bit 30116 81237 64431 22354 5069 14991 0 29 24322 28523 48563

■パフォーマンス考察
 ByteBenchの結果から,クロック上昇に伴い,CPU の基本性能とも言える整数演算,浮動小数点演算 性能が相応に伸びていることが分かります.また,その他の部分に関しても,クロック上昇に応じた値になってい ると思います.しかし,"Exe" の部分を参照すると分かるように,大きなプログラムの実行パフォーマンスに関し ては,やはり Celeron は Pentium III にかないません.ベースクロックが今回 PentiumIII と同じになった分け ですが,それでも低クロックの Pentium III に負けています.これは,2次キャッシュ容量が半分しか搭載され ていないためではないかと思われます.

 なお,詳しいパフォーマンスの考察に関しては,こちらのページに まとめさせていただきました.

■CPU 冷却に関して
 メーカー保証外である CPU を動作させていることから,CPUの冷却に関してかなり心配な部分があります. そこで冷却検証実験1冷却検証実験2 と同様に,DVD Video の30分以上連続再生を行い,各温度がどの程度まで上昇するかを調べてみました.なお,FDDは取り外した状態で計測を行っています.

Celeron 1000[MHz] を動作させた際の温度
CPU 温度 [度]M/B 温度 [度]
51度37度

 室温が約 20度の状態で計測しましたが,問題ないレベルに収まっています.また,詳しくは こちらのページで説明しますが,内蔵電源を取り外し,外付け ATX電源を使用することにより,さらに冷却することが可能になりました.

Celeron 1000[MHz] を動作させた際の温度(外付けATX電源使用)
CPU 温度 [度]M/B 温度 [度]
47度24度

■総括
■まとめ
 体感速度の変化としては,細かな所でキビキビと動くような感じになりました.しかし, 予め予想されていたことではありますが,普段の使用においては,PentiumIII/750[MHz]と の性能差が全く認識できません :-).Celeron533AのようなCPUからのアップグレードからであ れば別世界のように感じるかもしれませんが,既に高クロックなCPUを使用している場合は, Celeron 1[GHz]へのアップグレードは,あまり意味のあるものとは言えないかもしれません.

 注意点としては,CPUの冷却自体は大丈夫ではあるけれども,電源ユニットが過負荷に なりがちである点,ユニットの冷却が不足気味に感じられる点などがあります.本ページを 参考に作業を行う場合は,あくまでも自己責任でお願いします.


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