v3.3で PentiumIII は本当に使えるのか? [放熱との戦い]

■BKi810 v3.3 でサポートされたFC-PGA
■BKi810 v1.6 は出た瞬間に旧式?
 BKi810 v1.6は出た瞬間に旧式化していた…というのは少々言いすぎですがが, このベアボーンキットが出回り始めた頃には既に Socket370 版の PentiumIII が 出ており,おまけにこれで採用された FC-PGA は従来のPPGAとは互換性が無い ことが明らかになっていました.とりあえずローエンドのCPUを使っておき,後からワンランク 上のCPUへの乗せ換えを狙う…というアップグレードの道は最初から閉ざされていた わけです.あくまでセカンドマシンとしての位置付けで,『ソケット版として売られてい た Celeron が使用できれば良い.その分安価に』といった割り切りなのでしょう.しかし, その後 Celeron も Coppermine-128K コアの 533A MHz から FC-PGA 版となり, 従来のPPGA版は生産中止となりました.今後,パワー不足を感じたときに,高クロック 版のCeleronに乗せかえるというアップグレードの道すら,完全に閉ざされてしまったの です.

 そのようなわけで,PPGA版 Celeron の最高クロックは 533MHz で打ち止めになり, それに伴って BKi810 v1.6で使用可能なCPUの最高も533MHzになりました.また, 今しばらくは PPGA 版Celeronが店頭で購入できなくなるという状況は無いと思いますが, いずれはそうなるでしょう.もっとも,533MHzが実用的なCPUではなくなる以前に,中古 市場からも姿を消すことはまず無いと思われますが….

[00/11/14] 別のページにも書いていますが,v1.6でも 無改造でFC-PGA版 Celeron が使用できるという話がある他,ゲタを使用する ことにより,PentiumIIIも利用できるようです.

[00/12/18] ベースクロック 100MHz で動作する Celeron が発売になりました.今後 Celeron は,ベースクロック 66MHz のものから 100MHz のものにシフトするようです.

■FC-PGA対応 BKi810 v3.3登場
 小さな筐体に必要な機能を凝縮し,そしてトータルコストも安いという BKi810 に魅力を 感じる人は多かったのでしょう.そして『FC-PGA対応版を出してくれ』と,いう声も多かったの でしょう.'00夏から, FC-PGA 版の BKi810 (v3.3) が店頭に並び始めました.新しいBKi810 のメーカーの公称対応CPUは,PPGA版Celeron,FC-PGA版のCeleronおよびPentiumIII (〜800MHz)ということになっています.

 しかし,M/Bのレイアウトが変更されてCPUは小さなスペースに押し込まれてしまい, 冷却能力がやや心配な,専用ファンが付属するようになります.また,店員も,PentiumIIIの 使用は勧めません.これはなぜなのでしょうか?

 本ページは,この新生 BKi810 の売りである,FC-PGA 版 Celeron や PentiumIIIを 使用した場合,どのような問題が起きるのかを検証するページです.

■BKi810 v3.3 では FC-PGA Celeron,PentiumIII を使った方が良いのか?
■用意した(結果的に用意することになった:-) )CPUとCPUファン
 『BKi810 v3.3 購入』のページに書いたように, 今回はFC-PGA PentiumIIIを使用し,羊の皮を被った狼マシーンを狙いました.店員さんは 600MHz以上は厳しいだろうということと,PentiumIIIはやめた方が良いというアドバイスを 下さいましたが,それを振り切って,PentiumIII/750MHzをまず購入しました.そして実際に 使用した後で発熱が半端でないことが発覚し,翌日にPentiumIII/650MHzと銅製CPUファンを 購入.それでも冷却に関してかなりの不安があり,その翌々日に,通販でCeleron533A MHzと 別のCPUファンを発注していました…

 以下の写真は,私の悪戦苦闘の結果,購入することになった品々です.

CPU一覧
CPU Type 表写真 裏写真 定格(Clock,Vcore) 発熱量[W]
(Thermal Design Power)
Intel
 PentiumIII 750MHz
FC-PGA
100MHz*7.5
Vcore: 1.65V
19.5
Intel
 PentiumIII 650MHz
FC-PGA
100*6
1.65V
17.0
Intel
 Celeron 533AMHz
FC-PGA
66*6.5
Vcore: 1.7V(0686h)
Vcore: 1.5V(0683h)
11.2
Intel
 Celeron 400MHz
PPGA
(参考値として)
66*6
Vcore: 2.0V
23.7

CPUファン
CPU FAN Type 写真 コメント
キット付属のCPU ファン キット付属のCPUファン. 上から吸気し,縦方向のみに排気するタイプで, 熱風がDIMMに直接吹き付けられないようになっている.
一見ちゃちだが,そこそこ性能は良い.
すべて銅だ!! mini 昨今の銅ブームで出てきた感じのCPUファンの薄型. 付属のファンの力不足を感じ,急遽1980円で購入.心配だったのは,箱に 『PentiumIII/500,PPGA Celeron 550MHz まで対応』と,書かれていたこと. 薄型のファンでで店頭で他に冷えそうなものが見当たらなかったために駄目モトで 購入.CPU接着面には熱伝導シートが貼られており,熱で溶けて密着度を 高める.ファンは上から吸気し,横方向にのみ排気するタイプ.そのため,DIMMに 熱風が直撃.おまけに冷却能力は付属のファン以下….
Windy Stream 『全て銅だ!! mini』が不甲斐ない冷却能力しか 持っていないのが分かり,スゴク冷えると評判のこれを急遽通販で発注. 3,480円也.上から吸気し,全方向に吐き出すタイプ.ヒートシンクはアルミ でできており,ファンの羽が多いのが特徴.CPUとの接着面には銅の板が 貼られており,その上にシリコングリスが塗られている.シリコングリスはちょっと 塗りすぎの感あり.なお,ファンは取り外し不可.冷却能力は3種類の中では 最高.

[00/12/10] ファンはネジ止めされていないため, 簡単には取り外しできませんが,強引にこじって取り外せば,別のファンを取り付ける ことが可能なようです.

■PentiumIIIを使う上で何が問題になるのか?
 高クロックのCPUを使用する上で問題になるのは,消費電力と発熱です. 消費電力の方は電源ユニットに対する負荷に関係し,発熱に関しては,ヒート シンクをはじめとする放熱装置の能力に関係します.

 BKi810の場合は電源ユニットは 100W しか供給できないため,多少心細く感じます. しかし,メーカーがPentiumIII 800MHzまで動作すると記載していることから, 問題ナシと考えることにしました.なお,当然ながら,CD-Rや大容量HDDを搭載する ことにより,そちらに大電流が流れてトータルで電源ユニットの容量を越えるというこ とは十分考えられますので,あまり無理はしないに越したことはありません.

 次に発熱量ですが,これはCPUファンのヒートシンク,ファンの放熱能力および筐体 自身の構造その他によって,その限界が決まってきます.CPUファンはCPUの熱を 筐体内の空気にきちんと吐き出し,筐体は自然対流または強制送風によってこの 熱せられた空気を排出,そしてフレッシュな冷たい空気を吸入...ということを行わなけ ればなりません.どれか一つでもうまく行かない場合,CPUの発する熱は排出されず, CPUの温度の上昇を招き,熱暴走や最悪の場合CPUの破壊を招くことになってしまいます.

 そういえば昔,DEC Alpha のサーバーを箱を開けて運用すると,CPUが自ら発する 熱で溶けるという話を聞いたことがありました.何でもその話をしてくれた人は,『空気の 流れまで計算し,筐体を設計してあるから』と言っていました.BKi810の場合,見るか らにその辺りまで考慮されていなさそうです…

■CPUの発熱量
 実際には熟考する前に私はCPUを購入していたわけですが,改めてIntelのCeleron, PentiumIIIの発熱量について考察することにします.

 BKi810は筐体内がかなり狭い上にケーブルの取り回しもよろしくないため,冷却に 関してはかなり苦しい部分があります.また,熱せられた空気を外部に排気することは 電源ファンが行っていますが,逆に強制的に外の冷たい空気を取り入れるのはスペース 的にかなり苦しくなっています.吸気用ファンを付けることは,ケースの加工をしなければ まず無理ですし,吸気用の隙間すら殆ど開いていないためです.特にv1.6ではケース横に 吸気用のスリットが開いていましたが,v3.3ではそれすらもなくなっています.

 その上,今回使用する v3.3 ではCPUファンの高さに関しての制約も厳しく,強力な ヒートシンクやファンを付けることができません.つまり,CPUの排熱も筐体内の排熱も思うに 任せないということです.

場所 v1.6 v3.3 解説
ケースサイド  v1.6は両サイドにスリットが開いているが,v3.3はスリット無し.

冷却ファンは(CPUファンを除いて)電源にのみ付いており,このファンでは排気している.つまり,ケースの開口部やFDD,CD-ROMドライブ等の隙間から吸気して,電源から排気するという状態で冷却しているのだ.

CPUの位置  v1.6はCPUソケットが余裕のある場所にあるため,CPUファンを強力なものにすることが 可能.しかし,v3.3では隙間に入ってしまうような位置にあるため,厚さのある強力なファン が利用できないだけでなく,排気もスムーズにできない.

 排熱が十分にできないのだとしたら,発熱を抑える方法を採らざるを得えません.つまり, あまり発熱しないCPUを使用するのが一番手っ取り早いということです.以下に,Intel のデータシートから調べた,Socket版 Celeron の発熱量をグラフで示します.

PPGA/FC-PGA Celeron の発熱量
 このグラフから分かるのは,旧 Celeron (Mendocino コアで,0.25μプロセスルール)の 発熱量の多さです.新Celeron (Coppermine-128Kコア,0.18μプロセスルール) では,旧Celeronよりも高クロックであるにも関わらず,コア電圧が低いために,同クロック でも発熱は半分以下になります.

 BKi810は旧Celeronも使用可能ですが,『低クロックの方が発熱と消費電力は 少ないだろう』と判断してPPGA 版を使用するのは,全く逆の選択をしていることになります. 何と,Celeron300A MHz はCeleron 700MHzよりも発熱してしまうのです.

 それでは本命の,PentiumIIIはどうでしょうか?同じく Intel のデータシートから,TDPの値を 調べ,グラフにまとめてみました.なお,以下のデータはソケット(FC-PGA)版のデータで,スロット 版(Slot1)はこれよりもかなり発熱するようです.

FC-PGA PentiumIII の発熱量
 PentiumIIIの場合も,多少凸凹はありますが,クロックが増していくに従って 発熱量が増していくのが分かります.Celeronと同クロックのものが少ないため厳密な比較は できませんが,600MHz,667MHz,700MHzの3つのタイプでPentiumIIIとCeleronとを比較 すると,600MHzで3.2W (25%) PentiumIII の方が発熱量が多いが,667MHz,700MHzでは PentiumIIIもCeleronも発熱量は同じという意外な結果になります.

 以上のことから,CPUの発熱に関して次のようなことが言えそうです.

  • Celeronを選択する場合は,FC-PGA版のCeleronを使用する方が良い
  • 高クロックになると,CeleronもPentiumIIIも発熱量はあまり変わらない
  • 低クロックであっても,CeleronとPentiumIIIの間に,それほど極端な差は無い

 つまり,BKi810 v3.3においてはFC-PGA を使用することが推奨され,PentiumIIIを使用しても 問題は少なそうだということが分かります.

■CPUを冷やす工夫
■CPUファンを選ぶ
 結論を先に書いてしまうと,性能的には

『ぜんぶ銅だ!! mini』 << 『付属の CPU ファン』 < 『WinDy Stream』
 という感じになります.『ぜんぶ銅だ!! mini』は,はっきり言って使い物になりません.マニュアル通り, 500MHz以下のCPUで使うのには良さそうですが,K6-IIIは400MHzでもCeleron 533AMHz よりも遥かに発熱量が多いはず.箱にはK6-2/K6-IIIは550MHzまで対応と書かれている ので,理解に苦しみます.実際に使用してみますとヒートシンクはかなり熱くなっているので, CPUから伝わってきた熱をきちんと排熱出来ていないようです.ファンを強力なものに換えたら, 多少はましになるかもしれません.
 このクーラーは使用中にPentiumIII/750MHzの温度が70度を越えても上がりつづけたため, 危険と判断して使用を中止しました.熱風が吹き付けられてDIMM,HDDも手で触れないほど熱く なっていたのは言うまでもありません.調子がよければ別のにも使おうと2個購入したのですが, もったいないことをしました.

 次に『付属のCPUファン』ですが,これは本当にオーソドックスな感じの作りです.しかし, ただの薄型というだけではなく,排気の方向が筐体内の空間のある方,つまり電源ユニットの 方にのみ向かって排気するようになっているのは,良く考えられています.これなら,DIMMや HDがCPUの熱をもろに受けるということは無さそうです.
 しかし,ヒートシンクは小さく,ファンもそれほど強力ではない(とは言え,『ぜんぶ銅』よりは 強力)ため,冷却能力不足は否めません.工夫をしても,PentiumIII/750MHzや650MHzは 厳しい感じです.

 最後に『WinDy Stream』ですが,これは評判通り,とてもよく冷えます.ヒートシンクの 見かけ的にはそれほど冷えなさそうな気がしますが,ヒエヒエです.ファンも強力で,5800rpm 以上回る上,羽が多いために沢山の空気をヒートシンクに送り込むことができるようです. これで駄目ならあきらめもつく感じです.ただ,排気は四方に出るようになっているのですが, DIMMの方向に対してとくに空気の通りが良くなっているため,CPUの温度上昇に伴って, DIMMの温度も多少上昇することになります.

■CPUファンを排気にするか,吸気にするか
 殆どのCPUファンでは,ファンが吸い込んだ空気をヒートシンクに当て,熱せられた空気を 周りに排気するという方法を採っています.しかし,場合によってはファンの方向を逆にし,ファン から上方に排気する方が効率よく冷却できる場合があります.例えばCPUファンの 上に電源ファンの吸気口などの外部への排気口があった場合,CPUによって熱せられた空気は 速やかに筐体外に排気されるため,効率が良くなります.

 どちらが効率が良いかを試す方法は簡単で,ねじ止めされているファンを取り除き,ひっくり 返して再びヒートシンクにねじ止めするだけです.しかし,『WinDy Stream』のように,ファンが ヒートシンクに完全に固定されていて,ファンが外れないようになっている場合もあります.

■空気の通り道を作る
 前述したように,v3.3では,吸気用のスリットがケースに開いていないため,吸気はFDDや CD-ROMドライブの隙間から行うことになります.これはとても危険なことです.なんと言っても これらの精密機器の部分に埃がたまりやすくなる上,狭いところから強引に吸い込むために 吸気に必要な力が増え,スムーズに空気が流れないからです.

 そこで今回は,フロントパネルを外したり,FDドライブを外すなど様々な試行をしてみました. フロントパネルを外すとシャーシ部分にかなりの穴があいているため,冷却効果はかなり 高まりそうです.大抵のケースでは,フロントパネルの下部に穴が開いており,フレームの 吸気用ファンを通して吸気可能なようになっていることが多いです.しかし,BKi810では そのようにはなっていません.このような設計に対し,理解に苦しむところです…

 また,外からの吸気とは別に,電源からスムーズに熱せられた空気を排出できるように する工夫も必要です.狭いケース内には幅広のFDケーブルやIDEケーブルが這い回りますが, この取り回しにも気を配り,できるだけケース内で空気が流れやすくしてやる必要があります. 例えば,最近流行のスマートケーブル(フラットケーブルの端子以外の部分を束ね,取り回し しやすくしたケーブル)に変更するのも一つの方法でしょう.

■FC-PGA版 CPU 利用の実際
■温度上昇チェック
 CPUは使用していると熱くなり,使用していないと冷めてきます.しかし,これはユーザーがPCを 操作する=CPUが熱くなるということではありません.Windows95/98はユーザーが操作していない ときにもCPUをフル回転させていますが,WindowsNT/2000,Linuxなどは,負荷がかかってい ないときにはCPUを休ませるようになっているからです.ノートPCやAPM,ACPIを利用可能なPCの 場合でも,同様のことが行われる場合があります.

 そのようなわけで,実際にどこまで熱くなるかは,使用するOSやソフトなどの環境に依ります. また,経験上,冷却がうまく行っている場合には,CPUに負荷をかけ始めて5分〜10分 程度した時点で温度上昇は頭打ちになります.この時点でまだ上昇を続ける場合には, 危険域まで果てしなく上がりつづける可能性があり,危険でしょう.

 今回は,比較的CPUを使用すると思われるDVDのソフトデコードを行iい,どこまでCPUの 温度が上昇するかを計測しました.DVDデコードソフトはWinDVD200を使用し,30分ほど連続 再生した後にBIOS画面で温度をチェックする方法をとりました.数分おきに自動的に計測し, CSVファイルに落としてくれるというような便利なソフトもあるのですが,今回は手作業で行いました. 当初はこれほど多くの状態で計測することになるとは思わなかったためです…

 なお,付属してきたCPUファンではをPentiumIII/750MHzで使用中,『FDDアリ,フロントパネル 閉』という状態で放置した所,30分ほどで熱暴走によると思われるリブートがかかったため, このCPUファンの使用を断念しました.また,『ぜんぶ銅だ!! mini』においては,前述したとおり, フロントパネルを開けた状態でもCPU温度が上がりつづけたため,危険と判断して使用を 中止しました.結局残ったのは『WinDy Stream』だけだったということになり,以下のデータは全て これを使用して計測しています.

■温度上昇の計測
 本当は各条件において総当たり戦で計測すべきでしたが,流石にそれをやると しんどいので,ポイントを押さえて計測しました.最終的には,FDDを付けたままでフロント パネルを開けるか閉じるかして使用することを考慮して,各条件で測定しました.なお, 室温は26度.夏場で空調が利いていて,やや涼しいといった温度で計測しています.

 まず,最低これくらいは動いてほしいという願いを込めて,PentimIII 650MHzを使用して 各条件で計測しました.DVDの再生はかなりスムーズで,問題ない程度のクオリティです.

状態CPU温度M/B温度備考
FDD有り 正面アケ5139
FDD有り 正面トジ6138
FDD無し 正面アケ4738
FDD無し 正面トジ5239

 このように,やはりフロントパネルを開けるか閉じるかはかなり大きなファクターのようです. FDを外してパネルを閉じた状態と,FDDを付けてパネルを開けた状態がほぼ同じくらいの 温度になっていることから,やはりパネルを閉じると外気の吸気がスムーズに行かず, 筐体内の気圧が低くなり,結果的に熱せられた空気の排気も効率的にできないのだろう ということが考察されます.
 多分,殆どの人が使うであろう『FDD有り,正面閉じ』の構成で,CPU温度61度over というのは,精神衛生上よろしくありません.一応コア自身は80度くらいまで大丈夫なよう ですが,CPU周りの回路がこの温度に長時間さらされて大丈夫かどうかは疑問です.ちなみに 機械的な部品だけでなく,半導体の場合でも,熱により急激に寿命が短くなる場合があります. 『今』安定して動いているからと言って,長期間安定して動いているとは限りません.

 では,PentiumIII 750MHzはどうでしょうか?FDD有りでフロントパネルを開けて計測して みました.

状態CPU温度M/B温度備考
FDD有り 正面アケ5542

 やはり 650MHz よりも温度が高くなります.ついでに手持ちのデジタル温度計でDIMM 温度も測ってみましたが,DIMMに熱風があたるため,47度にも達していました.ただし, DVDの再生はきわめてスムーズで,このCPUパワーは捨てがたく感じます.

 フロントパネルを閉じた状態に関しては,相当温度が上昇することが想像されたため, 試すことすらしませんでした.

 それでは,BKi810 で使用可能な最も発熱の少ない CPUである,Celeron 533Aでは どうでしょうか?

状態CPU温度M/B温度備考
FDD有り 正面アケ4838
FDD有り 正面トジ5939DIMM温度45度

 Core電圧1.5Vということもあって,かなり低発熱ではあります.しかし,それでもフロントパネルを 閉じると60度近くまでCPU温度は上昇し,DIMMまでかなり熱くなっています.パフォーマンス的に はDVD再生で多少コマ落ちする感じで,かろうじて鑑賞できるくらいです.

 そのほかFANの回転数をチェックすると,フロントパネル開放時には5800rpm程度は回転するのに対し, フロントパネルを閉じた状態では5400rpm〜5600rpmに低下しています.FDDが邪魔になって,吸気に 苦しんでいるような印象を受けます.下手をすると,CPUの熱で熱くなった空気を,筐体内でただ単にかき回しているだけかもしれません.

■結果の考察とその後
 各種CPUを使用し,いくつかの状態でその冷却状況について検証してみたわけでですが, かなりの条件下において,通常のタワー型 PC では考えられないようなCPU温度にまで 上昇することが分かりました.

 簡単にまとめてみますと,今回の一連の温度測定によって,BKi810のv3.3では以下の ようなことが分かりました.

  • FDDまたはフロントパネルを外さなければ,冷却に関してはかなりの不安を抱える
  • CPU自身がかなりの高温になっている場合は,DIMMやHDDもかなりの高温に さらされている可能性がある
  • PentiumIII/750MHz以上のCPU利用は厳しそうである
 即座にCPUコアの熱破壊を起こすほど温度は高くありませんが,安全を考えると,せめて CPU温度は50度未満で使用するのが良さそうです.なお,50度というのは個人的な 感覚的なものであるので,特に根拠はありません(笑).

 そのようなことを考慮してデータを眺めると,FDD付きで使用することを考えた場合, Celeron 533AMHzをフロントパネルを外した状態で使用する以外選択の余地はありません…. なお,このような状態で使用した場合,フロントに基盤のパターンが露出するので,以下の 写真のように絶縁テープなどでショートしないように対策しておいた方が良いでしょう.

ショートを防ぐためにテープを貼る
(写真では,FDDも外してあります)
見栄えはあまりよろしくない
(右横はNLXマシン)

■やはりPentiumIIIを使いたい!!
 しばらくはこの状態で使用していたのですが,当然ながら見栄えが悪くなる上に, 電源/リセットスイッチを誤って押してしまう確率も上がります.また,多少の不自由は我慢する にしても,やはりDVD再生時のパフォーマンス不足を感じ,何とかしてPentiumIII 650MHzで 動かしたいと考えはじめました.

 以前 PentiumIII を使用して計測したときにはFDDを外せば何とか50度前後に落ち着く ことが確認されているので,今回はFDDを外し,FDDケーブルもケース内から外し,ちょっと 欲を出してフロントパネルをはめた状態で温度を計測してみました.すると,CPU,M/Bが それぞれ50度,39度となり,かろうじて目標範囲内に収まりました.フロントパネルを外して おいた方がさらに温度は下がりますが,誤ってリセットスイッチを押してしまうような事故が起きない とも限らないので,最終的にこのような状態で使用することにしました.

FDケーブルをコネクタ側から外すことにより,ケース内の空気を流れやすくする FDDを外すと,CPUファンは上部の穴から吸気が可能になる ただし,ファン面積の半分は隠れてしまう.鉄板下とファンの間の隙間もそれほど広くは無い
フロントパネルを付けた場合,FD挿入口から吸気することになる

■まとめ
 BKi810 v3.3からFC−PGAタイプのCPUが使用できるようになりましたが,同時に行われた M/Bのレイアウト変更により,CPUの冷却がかなり厳しい状態になっています.これは,BKi810 v1.6 上で Celeron 400Hz を使用した場合,それほど強力なCPUファンを付けていなくて もCPU温度は38度程度であるのに対し,同じ状態で v3.3 でCeleron 533A を使用する と,CPU温度は Stream を使用した場合でも 59度になってしまうことからも明らかです. スペック上はCeleron 533A MHz の発熱量は, Celeron 400MHz の半分で済む はずなので,これはかなり深刻な問題です.

 このような状況の下,BKi810 v3.3 を使う場合気をつけなければならない点は,以下の ようなことであると考えられます.

  • v3.3 では PPGA版Celeronは使用するべきではない
  • v3.3 では CPU に何を使用している場合でも,FDDを外すかフロントパネルを外して使用するのが良いだろう
  • v3.3 ではPentiumIII 650MHz くらいまでが安定稼動できる限界だろう
  • それ以上を望む場合には,ケースの加工(穴あけなど)やファンの増設,交換が必要になるだろう

 つまり,FC-PGA版 PentiumIII を使うことはできますが,FDD付き,フロントパネル付きの ノーマルな状態では,長期間安定稼動しないかも…ということです.

[00/12/10] WindyStream のファンを交換し,PentiumIII/750 MHzで,CPU温度を55度で安定稼動させている方がおられます.本ページ中ではPentiumIII/650MHz が限界だと書いていますが,ちょっとした工夫や改造で,この限界値はもう少し上がりそうです,

■その後の実験
 今回の実験では,PentiumIII/650[MHz] が個人的基準では,安定動作の 限界ではないかという結論に達しました.しかし,その後ステーを加工することにより, PentiumIII/750[MHz]も十分この基準内で安定動作させることができました. 詳しくは,『v3.3でさらに冷却を考える [熱との戦い2]』にまとめてありますので,よろしければこちらもご覧ください.


『BKi810 活用メモ』 へ戻る