v3.3でさらに冷却を考える [熱との戦い2]

■さらなる冷却を目指して
■これまでの試みと目標
 こちらのページに書いたように,これまで v3.3A で PentiumIII を安定して動作させるための冷却に関し,試行錯誤をしてきました.最終的には, CPU ファンとして WinDy Stream を使用し,FDD を抜くということを行い,冷却に関しては一応の満足を得,安定稼動させることができました.

 しかし,当初使用する目的で購入した CPU ,PentiumIII/750[MHz] が浮いてきてしまっています.さらなる CPU の冷却を目指し,この CPU を利用可能なほどの冷却効率を達成しようというのが今回の試みの目標です.

■冷却効率を高める方法を考える
 前回の試みでは極力改造を行わないことを前提とし,試行錯誤を行ってきました.その結果,何とか PentiumIII/650[MHz] を安定動作させる所まではたどり着きましたが, PentimIII/750[MHz] の動作は難しいという結論に達しました.しかし,今回はケースの加工なども含め,より冷却効率を高める方法を目指すことにします.

 まず前回の試行を振り返って気が付いた点としては,v3.3A はケース自身にスリットが無いため,v1.6 と比較してケース内の空気の流れが悪いのではないかということです.

問題点1: ケースに外気の取り入れ口が無い

 その他気が付いた点としては,CPU ファンの上にあまり隙間が無く,吸気がうまく行われていないのではないかということです.FDD を取り除いた場合でも,効率的に冷たい外気を取り入れられないのではないかと考えられるほど,ファンの露出割合が少なくなっています.

問題点2: CPU ファンの露出が少ない

 そこで,今回はこれらの問題を検証,解決すべく,次のようなことを行うことにしました.

     
  • v1.6 のケースを v3.3A に取り付ける  
  • CPU ファンの上に,シャーシを加工してファンの大きさに見合った開口部を作る

■実験準備
■v3.3A で v1.6 のケースを使う
 この方法での冷却効率の検証は,予備実験として行いました.もし,十分な冷却効率が得られた場合には,v3.3A のケースにドリルで複数の穴を開け,十分空気が出入りするだけの開口部を作るつもりでいます.

 この検証を行うためには,v1.6 のケースを持っていることが最低条件です.幸い私は v1.6 も所有しておりますので,そのケースを流用することにしました.

 v1.6用のケースには,以下の写真にもあるように,多くのスリットが開いています.そのため,v3.3Aでは正面パネルを開けるか FDD を外すかしないと吸気不足ぎみになりますが,v1.6 ではそのようなことは無いのだと思われます.

v1.6v3.3A
無数のスリットが開いていて,吸気がうまく行きそうだ 全くスリットが無く,ケース面からの吸気も排気もできない

 ケースの寸法,ねじ穴位置とも v1.6 と v3.3A は共通ですので,入れ替えはスムーズに行きました.

■CPUファン上のシャーシを加工
 現在FDDを外し,CPUファンの上部を露出させていますが,それでもステーの下にCPUファンの半分近くが隠れてしまいます.このような状態では,せっかく強力なファンが装着されているにも関わらず,有効に利用できていない感じがします.

 そこでハンドニブラーを使用し,CPUファン上にあるステーの穴を拡張し,CPUファンに十分な空気を供給できるようにすることにしました.

 ちなみにハンドニブラーとは,てこの原理を利用し,直径 10[mm] 程の穴があればそこから金属板を切っていくことが可能な工具です.値段的には 2,000円 程度で,かなり厚い金属板も切ることが可能です.

今回使用したハンドニブラー.一応替えの刃も用意しておくと良いでしょう.
この刃を押し下げることにより,鉄板を切る
このように握り,握りを絞ることによって厚い鉄板も簡単に切ることが可能

 ハンドニブラーを使用してステーを切り取り,以下のような状態にしました.多少バリが出来ていますが :-) ,最終的にはヤスリできれいに仕上げることにします.

 加工の際の注意ですが,金属片や粉が基盤に落ちてショートしないよう,気をつけて行ってください.

CPU ファンの大きさに合わせてステーを加工

■ケースの変更,ステーの加工とその効果
■ケースを交換した効果
 実験の結果は,以下の通りです.室温は約 20度の環境下で測定しました.CPU としては PentiumIII/650[MHz]を使用し,DVDを30分間再生した後に BIOS 画面に表示される値を読み取りました.なお,前回の実験は夏に行ったため,今回測定した温度とそのまま比較はでないことに注意してください.

測定状態 CPU 温度[度] M/B 温度[度]
v3.3A オリジナルケース
FDD 取り外し
46 30
v1.6 ケースに交換
FDD 取り付け
58 35
v1.6 ケースに交換
FDD 取り外し
46 34

 実験結果は正直意外な結果になりました.ケースの穴の有無は全く放熱に関して効果が無いという結果になっています.

 ケースに穴が開いていれば外気が自由に入ってくるため,自然対流でうまく循環するかに思えます.しかし,冷やしたい所にきちんと効果的に導かないと,結果的に温度上昇を招くということなのでしょう.

 あえてケースの加工を行うとしたら,強制的に外気を取り込むファンを付け,さらにCPU ファンの方に導く仕組みを作らなければならないのかもしれません.

■ステーを加工した効果
 FDDは外しておき,v3.3のケースのままで計測しました.

測定状態 CPU 温度[度] M/B 温度[度]
v3.3A オリジナルケース
FDD 取り外し
CPU ファン上の穴を拡張
42 30

 こちらの試みは,予想以上に効果的でした.

 やはり以前の状態では,CPUファンが十分な外気を取り入れることが出来ていなかったようです.稼動時にFDDの取り付けられていた穴に手をかざすと,かなり強力に吸気が行われるようになったことが分かります.

 CPUファンがCPUの冷却のみならず,ケース内に冷たい空気を取り入れるファンとしても,より有効に利用できるようになったということでしょう.

■PentiumIII/750MHzを試す (01/03/04 追加)
 本来の目的である PentiumIII/750MHz を試してみたところ,次のような結果になりました.

測定状態 CPU 温度[度] M/B 温度[度]
v3.3A オリジナルケース
FDD 取り外し
CPU ファン上の穴を拡張
42 30

 今回は冬場(室温19度)だということもありますが, PentiumIII/750MHz も全く問題なく使用できそうです.

■まとめ
■まとめと考察 (01/03/04 修正)
 v3.3A で,より高いクロックの CPU を使用できるようにするために,放熱に関して今回2つの方法を試みました.その結果,以下のようなことが分かりました.

  • ケースに穴を開けてもあまり効果は無い
  • CPUファンの上に大きな開口部を作ると効果的である
 CPUとしてあまり高クロックのものを使用しない場合,ここまで冷却に気を使う必要はありません.しかし,パフォーマンスも求める場合は,ここまでしないと中々苦しいものがあります.

 また,ステーを加工することにより,より大きな開口部を設け,背の高い強力なCPUファンを付けることも可能になります.電源に対する負担もありますので一概には言えませんが,あるいは 1GHz の PentiumIII も BKi810 で動作可能かもしれません.

■番外編
■銅製 CPU ファン,DCF-C71 について (01/03/04 追加)
 ちょうど本ページをまとめているときに,BKi810のユーザーの方より『DCF-C71』という CPU ファンをメールで教えていただきました.

 番外編として,この CPU ファンについて解説してみます.

 トライコーポレーション製.メーカー製PCを扱っている,近場のちょっとした電器屋さんでも入手可能.
 裏側にはシリコングリスが塗られており,テープを剥して止めるだけです.
 ヒートシンクは全て銅製.かなり小型.
 Windy Stream との比較.背もかなり低い.
 CPUに取り付けた状態.フィンはかなりしっかりしており,風量的にも期待できそうです.


 Windy Strem と比較して,かなりファン上部に隙間があく感じ.

 早速 PentiumIII/650MHzで DVD 再生30分という負荷をかけ,冷却パフォーマンスを測定してみました.なお,FDDは外した状態でステー加工後の状態で試しています.

測定状態 CPU 温度[度] M/B 温度[度]
v3.3A オリジナルケース
FDD 取り外し
CPU ファン上の穴を拡張
DCF-C71 を使用
54 30

 このCPUファンに関しての情報をお寄せいただいた方の話では,フロントパネルおよびFDDを取り付けたままの状態でも, CPU 温度は60度を下回った状態で安定して動いているそうです.

 上記のデータを見る限りでは,残念ながら絶対的な冷却パフォーマンスは Windy Stream と比較すると見劣りがします.しかし,このこの CPU ファンは背が低いため,本ページで行ったような一連の工夫をしなくても,安定してケース内の空気を吸気し,必要十分な程度に CPU を冷却することが可能であるということかもしれません.

 FDD を接続し,フロントパネルを付けたままで,きちんと CPU の冷却を行いたいという方は一度お試しあれ.


『BKi810 活用メモ』 へ戻る