v1.6 で 下駄を使用して Celeron 766[MHz]を使う

■BKi810 v1.6 で FC-PGA 版 CPU を使うもう一つの方法
■BKi810 v1.6 は FC-PGA 版 CPU を使う
 ここにも書いたように,基本的に BKi810 v1.6 は FC-PGA 版の CPU は動作保証外になっており,PPGA 版の Celeron ,つまり Celeron 533[MHz] までしか 動作保証がなされていません.しかし,cB0 コアであり,コア電圧が 1.5[V] の FC-PGA 版 Celeron に関しては,BIOS の update を行うことにより,改造を行わずにそのまま問題なく使用できることが分か りました.

 しかし,無改造で動作可能な cB0 コアの比較的低クロックの Celeron は徐々に店頭から姿を消し 始めています.いずれはベースクロック 100[MHz] の Celeron に置き換わることになると思われますが, 当分の間は,cC0 コアである 766[MHz] までの Celeron が,cB0 コアのものと取って代わり,スタン ダードの座を確保するでしょう.

 しかし,この Celeron は,BKi810 v1.6 ではそのまま使用することはできません.このような CPU を 使用するためには,一般に『下駄』と呼ばれる PPGA->FC-PGA 変換のアダプタを介して,CPU を CPU ソケットに接続する必要があります.この手の下駄で,最もメジャーなものは, NEO-S370 という型番の下駄です.店頭価格で2千円台で売られているようです.

['01/07/30] Intel は 7/27 日付けで,Celeron 733/766[MHz]の製造中止 し,今後 Celeron はベースクロック100[MHz]のもののみにする旨発表したそうで す.この発表は BKi810 v1.6 で下駄を使用して普通に使用できる Celeron が 無くなることを意味していますので,アップグレードを検討している方は早めにCPU を押さえに入ったほうが良いでしょう.

■廉価なPPGA -> FC-PGA変換下駄,『HCL-S』
 私は BKi810 v1.6 で Celeron 533A を使用し,大抵の用途においてそれほどパフォーマンス不足 を感じることはありませんでした.しかし,自宅にあるPCの見直しとストレージの入れ替え際に,DVD-ROM ドライブを BKi810 v1.6 に持ってくるに至って,パフォーマンス不足を感じはじめました.ご存知のように, DVD video のジャンルによっては,再生の際にかなりの CPU パワーが必要になります. 一般に,アニメや動きの速いアクション映画の場合に,かなり引っかかったような表示になります.

 このようなこともあり,パーツショップに行く度に NEO-S370 を探していたのですが,残念ながら日本橋 のお店で見つけることができませんでした.しかし,ソフマップの新装開店の際に,『マニュアル無し.問い 合わせ不可.返品不可』扱いで,1800円で売られている変換下駄,HCL-Sを見つけました. 売り文句の通り,全く説明らしきものが無く,箱も白箱ではありましたが,調べればどこかに情報が転がっ ているだろうと思い,一つ購入することにしました.

バルクで売られていました.説明書もありません.
中身のヒントとなりそうなのは,この型番だけです.
中には,下駄の他に CPU ファン固定用の金具が入っています.
下駄はこのような形で,ディップスイッチで CPU の設定を行うようになっています.形状が形状ですので,一度CPUを取り付けると,専用の工具無しで CPU を外すのは大変層です.
CPUファン固定用の金具.これがあるため,一般に売られている普通の CPU ファンが使用できそうです.
下駄の裏側は至ってシンプルです.
下駄は横から見ると,このような形です.嵩が上がるため,使用できるCPUファンの高さにも影響がありそうです.
下駄中央のアップ.設定用のディップスイッチがあります.スイッチを上側にスライドさせるとON,下側にスライドさせるとOFFになります.
取り付け時にはこんな感じではめることになります.金具はCPUソケットに固定する形です.
金具形状がミソで,NEO-S370 に対するアドバンテージです.

 写真のように下駄内部にディップスイッチがあり,これを設定することにより,CPUの設定を行うようです. しかし,Web で検索してみたのですが,残念ながらこの下駄の設定に関する情報は見つかりませんでした. 半ばあきらめていたところ,掲示板の方で,hakama さんからこのディップスイッチの設定方法を教えていただくこと ができました.hakamaさんの話によると,説明書付きの状態で,980円で店頭で売られていたそうです.

HCL-S DIP Switch 設定
DIP SW 6〜7
DIP SW 1〜4FSBクロック設定
FSB Clocksw1sw2sw3sw4
66[MHz]onoffoffoff
100[MHz]offonoffoff
133[MHz]offoffoffoff
自動認識offoffonon
DIP SW 1〜7CPU Type
CPU Typesw1sw2sw3sw4sw5sw6sw7
Intel----off--
Joshuaoffoffonoffonoffoff
CPU Core Type
CPU Core typesw6sw7
Mendocinoonoff
Coppermineoffon
DIP SW8未使用

 HCL-S の良いところは,NEO-S370 は嵩が高くなるため,専用の CPU ファンを使用しなければ ならないのに対し,CPUファン固定用の金具が同梱されているため,普通のものが使用できること です.難点は,入手性の悪さでしょうか.ソフマップの売り場でも 1週間後に行ったところ,見つける ことができませんでした(レイアウトが変更されていたため,置き場所が変わっていただけかもしれません).

 NEO-S370 も同じくらい店頭入手が困難かもしれませんが,通販であればWeb 上でいくつか見つける ことができると思います.

■Celeron 766[MHz]を BKi810 v1.6で使う
■Celeron 766[MHz]を使う
 Celeron に限らず,市販されているCPUは,動作周波数によってかなり価格に差があります.一般に 動作クロックと価格は比例関係に無く,動作クロックが高いほど,指数関数的に価格が上がる傾向にあ ります.Celeron に限って言及すると,,コストパフォーマンスが高いと思われるのは,1万円前後の価格の 辺りの Celeron でしょう.しかし,今回はコストパフォーマンスに関してはあまり考慮せず,出来るだけ高 クロックのものを購入し,動作検証することにしました.

 現在('01/03)販売されている Celeron は,ベースクロック 100 [MHz] の Celeron も発売されており, 800[MHz] 以上のものも存在しています.しかし,v1.6 はベースクロック 100[MHz] で動作させるのは 困難なため,今回は除外します.上記のように,Celeron はベースクロック 100[MHz] に移行しつつあるため,ベースクロック 66[MHz] の Celeron としては,おそらく 766[MHz] が 今後も最速のものとなると思われますので,今回はこれを使用しました.

今回用意した Celeron 766[MHz] リテールパッケージ
マレーシア産です
リテールパッケージのため,中には山陽製CPUファンも同梱されています(今回は使用しませんでした)
Celeron 766[MHz]
Celeron 766[MHz] アップ
Celeron 766[MHz] 裏側.PentiumIIIのように,III と,ランドだけはありますが,抵抗は一部しか実装されていません.
■HCL-Sの設定
 先の情報を参考に,私はディップスイッチの設定を以下のように行いました.

DIP Switch の設定
sw1sw2sw3sw4sw5sw6sw7sw8
offoffononoffoffonoff

 FSBクロックは自動認識,Intel CPUを使用し,Coppermine コアであるという設定です.

■下駄とCPUの取り付け
 まず,前回と同様,CPUソケットが露出する所まで分解し, そして現在刺さっている CPU を取り外します.その後で,以下のように作業を行います.

HCL-S のディップスイッチを設定します
CPUを下駄に固定します.切り欠きが2箇所ありますので,取り付け方向を間違えないように.
このように,隙間無く CPU が差し込まれていることを確認しましょう
下駄さら M/B の CPUソケットに乗せ...
CPUソケットのレバーを下ろして固定します.うまくはまらない場合は,取り付け方向を確認してください.
CPUファン固定用の金具をソケットに取り付けます.
電解コンデンサーとの隙間があまり無いので,取り付ける際には壊さないように慎重に.
この金具の出っ張りを,CPUファン固定用に使います.
シリコングリスを塗った後,CPUファンを取り付けた所
小型のCPUファン(4cm角)ですが,かなりスペース的に厳しいものがあります.ファンの大きさによっては,使えない可能性もあります.
FDD等の固定用のステーを元の位置に戻すと,このような感じです.
上から見るとこのような感じです.FDDのソケットとの隙間がかなり厳しい感じです.

 後は普通に組上げましょう.

■起動してみる
 電源ボタンを押し,起動してみます.

 まず起動画面で確認できたことは,BIOS はきちんと Celeron として認識していることです.ここで別のCPUとして 認識していたら,このページを参照し,BIOS を update するようにしてください.

無事,起動しました.CPUが変更されたため,Warningが出ていますが,無視してOKです.
一度BIOS画面に入れば,このメッセージは出ないようになります.

ベースクロックを75[MHz]にしたままであったため,写真中では 863[MHz]と表示されています

 次に,コア電圧として何[V]が供給されているかを BIOS 画面で確認してみます.表示されている値は若干定格の 1.7[V] と異なりますが,これは誤差の範囲内です.

コア電圧として,1.7[V]が供給されている

 一通り確認後,普通に起動させてみました. OS が無事に起動し,問題なく使用できることが確認できました.

■クロックアップを試す
 BIOS設定でベースクロックを75[MHz]にしたままであったため,いきなり 75[MHz]*11.5 = 863[MHz] のクロックアップ状態で起動してしまいましたが,無事に動きました.当然,定格の 66[MHz]*11.5 = 766[MHz] での動作も問題ありません.

 なお,クロックアップなどのBIOS 設定の変更方法に関しては, BIOSの設定方法のページを参照してください.

■BKi810 v1.6 で Celeron 766[MHz] を使用した際のパフォーマンス
■Byte Bench でのパフォーマンス調査
 パフォーマンスのチェックは,Byte Benchmark を用いて行いました.ベンチマークに関しての詳細は,こちらのページを参照してください.

※Maxtor 91531U3を使用.メモリはSDRAM 256MB
CPUBKi810 Typeクロック[MHz] Ari Dhy Exe File Pipe Shell
Celeron 400v1.6400 (66*6) 41.7 34.8 27.0 138.5 97.8 15.5
Celeron 400v1.6450 (75*6) 46.9 39.1 30.9 138.8 109.9 17.5
Celeron 533Av1.6533 (66*8) 55.7 47.0 31.2 136.5 130.3 19.8
Celeron 533Av1.6600 (75*8) 62.5 52.7 36.1 136.9 146.2 22.2
Celeron 766v1.6 766 (66*11.5) 80.0 67.5 36.8 139.0 186.9 25.5
Celeron 766v1.6 863 (75*11.5) 89.9 75.8 42.3 138.3 208.4 28.9
PentiumIII 650 (参考値)v3.3650 (100*6.5) 67.9 57.3 54.8 140.4 158.4 25.8
PentiumIII 750 (参考値)v3.3750 (100*7.5) 78.3 65.7 59.8 139.9 181.0 28.5

(略語の意味:
 Ari :Arithmetic Test (type = double)
 Dhr :Dhrystone 2 without register variables
 Exe :Execl Throughput Test
 File :File Copy (30 seconds)
 Pipe :Pipe-based Context Switching Test
 Shell:Shell scripts (8 concurrent))


ベンチマーク結果のグラフ

■HDBench 2.61
 参考値として,HDBenchでも計測してみました.

CPU 解像度 色数 ALL Text Scroll DD Read Write Memory
Celeron 766 (66*11.5) 1024x768 16bit 24692 62254 49399 22344 3936 11588 0 37 23757 24264 38115
Celeron 863 (75*11.5) 1024x768 16bit 26975 69902 55469 25353 4146 13051 198 37 23757 23924 41320
PentiumIII/650(参考値.v3.3) 1024x768 16bit 22443 52763 41866 21596 3489 10109 0 29 24380 25345 32183
PentiumIII/750(参考値.v3.3) 1024x768 16bit 24453 60904 48321 21634 3880 11535 0 29 24497 24853 37295

■パフォーマンス考察
 前回Celeron 533A に乗せ換えたときと同様,クロックの上昇に 見合ったパフォーマンスアップが確認できました.ただし,ByteBench の結果のうち,"Exe" の部分を参照 すると分かるように,大きなプログラムの実行パフォーマンスに関しては,Pentium III の低クロックな CPU に 劣る部分があります.これは,このページで考察したのと 同様,Celeron は2次キャッシュの容量が PentiumIII のの半分しか搭載していないのと,ベースクロックが 低いためにデータ転送スピードが劣るためであると思われます.

■DVD再生
 今回の目的の一つである,DVD Video の再生を行ってみました.結果は,とてもスムーズに再生され, PentiumIII/750[MHz] に遜色の無いレベルで再生されました.画面の動きが速いために Celeron 533A ではやや引っかかるような部分も,全く問題なく再生されるようになりました.

■CPU 冷却に関して
 高速な CPU を動作させていることから,CPUの冷却に関して心配な部分があります.そこで 冷却検証実験1冷却検証実験2 と同様に,DVD Video の30分以上連続再生ということを行いました.なお,これらのページでは v3.3Aを 使用しているために FDD を取り外した状態で温度の計測を行いましたが,今回検証するのは v1.6 のため, FDD は取り付けたままで計測を行っております.

Celeron 766[MHz] を 863[MHz]で動作させた際の温度
CPU 温度 [度]M/B 温度 [度]
5041

 室温が約 20度の状態で計測しましたが,問題ないレベルに収まっています.実は検証の際に DVD video を 最後まで観てしまい,約2時間ほど連続再生になってしまったのですが,最後まで問題なく再生できました.

■まとめ
■総括
 メーカーの正式サポートはありませんが,下駄を使用することにより,ベースクロック 66[MHz] で最速の CPU である,Celeron 766[MHz] が問題なく動作することが分かりました.また,そのパフォーマンスは, これまで PentiumIII を使用しないと辛いかなと考えていたような用途に対しても,満足の行くものになりました.

 なお,本ページを読み,同様のことを行われる際には,あくまで自己責任で行うようお願いします.

['01/04/23] DVD-ROM に入れ替え,ベースクロック 75[MHz] で動作させていたところ,CD-ROM に 常時アクセスするゲーム(提督の決断 IV)実行中に一度リセットがかかりました.おそらく,DVD-ROM ドライブをベース 75[MHz] で動作させた場合,何らかの不具合を抱えるのではないかと思います(DVD Video の再生の際には,全く問題は出ませんでした).

 ベースクロックを 66[MHz] に落としてからは,このような問題は発生していませんので,現在は定格で 使用しています.

 しかしこのドライブ, ランダムアクセスのヘッド移動の際に,ちょっと引っかかるような挙動を示します.『BKi810 で DVD Video を長時間連続再生すると熱暴走する』と,いうようなお話も聞いたことがありますので,使用する DVD ROM ドライブの選定には注意が必要かもしれません.


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