ファイルのバックアップを考える4【ハードディスク編2】

['04/03/06] 内容修正(CPU温度とM/B温度が入れ替わっていた)
['03/02/26] 初稿
■Linux に接続する
■GAWA-DDDSCSIUSB
 こちらのページ,で触れた通り,USB 接続の 方は,プロトコルがメーカー独自仕様なようで,murasaki を あれこれ設定してみたのですが,Linux からはうまく認識できませんでした. そこで SCSI で Terminator に接続することにしました.

 大容量 HDD が接続されている場合,まれに SCSI カードの BIOS が, デバイススキャン時にハングアップしてしまう場合があります.多くの 場合,SCSI カード側の BIOS のアップデートで対応できますが,この方法が 取れない場合,SCSIカードの設定で,当該 ID の デバイスのスキャンをスキップするように設定します.私のカードもこの問題 に当たってしまい,SCSI BIOS を update するのも面倒でしたので,スキップ するように設定しました(SCSI デバイスからブートする場合は問題になります が,今回のような利用方法の場合は問題ありません.また,このような状態 であっても,Linux からは問題なく利用できます).

■AEC-7720U
 GAWA-DDDSCSIUSB と同様に,SCSI カードの問題が出ましたので,同じように 対処しました.また,AEC-7720U は電源投入時に接続されている IDE 機器を チェックし,自分自身を初期化する仕様になっています(CD-RWドライブが接続さ れていた場合,『私は CD-RW ドライブで機種は○○です』と,SCSI インターフェイスに返すように自らを初期化する).

 つまり,折角リムーバブルディスクケースを導入したわけですが, Terminator の電源投入時には必ずディスクの電源を入れておく必要があり, また,電源を落とすこと無しで別のディスクに入れ替えることができない ということを意味します.

 ただし,電源投入時にディスクの電源を入れておき,OSが起動し終わるまで 待ってから,ディスクのみ電源を落とすことは可能です.リムーバブルケースの 電源キー(取り出しロックと併用)を,ディスク&ブリッジ回路の電源スイッチを 兼用するように配線を加工すれば,完全リムーバブル化も可能だと思いますが, 試していません.

 なお,実運用後に発生したトラブルとして,ディスクの電源を落と した状態から,『ディスクの電源投入→Linux で SCSI device の再認識 → マウント』と, 一連の作業をした際に,パーティションテーブルが読めずにエラーが表示され たことがありました.このとき,メッセージには次のように出力されます.

  Vendor: Maxtor 4  Model: R120L0 Rev: RAMB
  Type:  Direct-Access       ANSI SCSI revision: 02
blk: queue da877e18, I/O limit 4095Mb (mask 0xffffffff)
Attached scsi disk sda at scsi0, channel 0, id 1, lun 0
SCSI device sda: 240121728 512-byte hdwr sectors (122942 MB)
 sda: unknown partition table

このような場合は,一度 remove-single-devide でデバイスをリムーブし, 再び add-single-device して再認識させることにより,無事読めるように なります(一瞬焦りました…).きちんと認識したときのメッセージを以下に 示します.

scsi singledevice 0 0 1 0
blk: queue dbf4be18, I/O limit 4095Mb (mask 0xffffffff)
  Vendor: Maxtor 4  Model: R120L0 Rev: RAMB
  Type:  Direct-Access       ANSI SCSI revision: 02
blk: queue da877c18, I/O limit 4095Mb (mask 0xffffffff)
Attached scsi disk sda at scsi0, channel 0, id 1, lun 0
SCSI device sda: 240121728 512-byte hdwr sectors (122942 MB)
 sda: sda1

■SOTO-3.5iUB
 Vine 2.6r1 (kernel 2.4.19-0vl26)環境であれば,USB ポートに接続すれば, 『ピッ』という心地よい音と共に認識され,問題なく利用できます.Linux側 のメッセージ(dmesgコマンドや,/var/log/messages ファイルで確認可能)で 確認しますと,まずは接続時に
hub.c: new USB device 00:01.3-1, assigned address 2
usb.c: USB device 2 (vend/prod 0x4bb/0x102) is not claimed by any active driver.
murasaki.usb[4788]: device is added
murasaki.usb[4788]: vendor:0x4bb product:0x102 Dclass:0x0 Dsubclass:0x0 Dprotocol:0x0 Iclass:0x8 Isubclass:0x6 Iprotocol:0x50
murasaki.usb[4788]: MATCH(usb-storage) -> match_flags:0x380 vendor:0x0 product:0x0 Dclass:0x0 Dsubclass:0x0 Dprotocol:0x0 Iclass:0x8 Isubclass:0x6 Iprotocol:0x50
Initializing USB Mass Storage driver...
usb.c: registered new driver usb-storage
scsi1 : SCSI emulation for USB Mass Storage devices
  Vendor: Maxtor  Model: 4G160J8    Rev: GAK8
  Type:  Direct-Access          ANSI SCSI revision: 02
USB Mass Storage support registered.
Attached scsi disk sda at scsi1, channel 0, id 0, lun 0
SCSI device sda: 320173056 512-byte hdwr sectors (163929 MB)
sda: unknown partition table

 のようなメッセージが出力されます.

 簡単にメッセージを解説しますと,まずは USB デバイスが接続されたヨという ことで,対応するドライバを捜しに行きます.そこで USB 機器からは 『vendor 0x4bb…』 のような,自分が何者であるかを識別するためのコードが PC に送られます. ここで Linux 上で USB/Firewire 機器を監督している murasaki (ホットプラグ ・マネージャー) が『おお,これは USB mass strage class のデバイスやな』 と判断し,usb-strage ドライバをロードします.ロードされた usb-strage ドライバは接続されたストレージを SCSI ディスクとして Linux に認識させ, 以降,エミュレーションを行います.

 ここで少し注目して欲しい部分は,『scsi1 : SCSI emulation for …』と, なっていることです.私の Terminator には SCSI カードが既に刺さっている ため,このカードを scsi0,USB 接続のディスクは,仮想的な SCSIカードである 『scsi1』に接続されたディスクとして認識します.

 後は普通のSCSIディスクとして扱われ,『160GBのこんなディスクを認識した よ』であるとか,『デバイス名として sda にアサインしたよ』であるとか, 『パーティションテーブルが読めないよ』のようなメッセージが続いています.

 ここで気を付けなければならない点は,例えば IDE ディスクであれば, プライマリ IDE のマスターに接続されたディスクは hda,セカンダリ IDE の スレーブに接続されたディスクは hdd といった具合に必ずデバイス名がアサイン されます.しかし,SCSI ディスクの場合は,認識順で sda,sdb,sdc… のように アサインされます.そのため,今回行うような,『非利用時にはディスクを非 動作状態にする』といった使い方をする場合,利用時の状況によってデバイス 番号は変わるため,利用時には充分に注意してください.murasaki で設定をし, 必ず任意の場所にマウントするように設定しておけば事故は無くなるでしょう.

 なお,前述のメッセージは,新品のディスクを接続した際のものです. 『パーティションテーブルが読めないよ』というエラーが出ていますが, パーティションを設定してあるディスクであれば出ません.

 次に USB デバイスを抜くときですが,unmount した後に,ケーブルを抜きます. すると murasaki は必要な後始末を自動的に行い,以下のようなメッセージを出力 します.

usb.c: USB disconnect on device 00:01.3-1 address 2
murasaki.usb[5093]: device is removed
murasaki.usb[5093]: vendor:0x4bb product:0x102 Dclass:0x0 Dsubclass:0x0 Dprotocol:0x0 Iclass:0x8 Isubclass:0x6 Iprotocol:0x50
murasaki.usb[5093]: MATCH(usb-storage) -> match_flags:0x380 vendor:0x0 product:0x0 Dclass:0x0 Dsubclass:0x0 Dprotocol:0x0 Iclass:0x8 Isubclass:0x6 Iprotocol:0x50
usb.c: deregistering driver usb-storage
scsi : 1 host left.
■Linux で使用する
■前準備
 新品のディスクを使用する場合,当然ながらパーティションは切られて おらず,また,フォーマットもされていません.ドライブが認識された後に, ディスクが sda と認識されている場合は fdsik /dev/sdaを実行して パーティション分けする必要があります.仮にディスク全体を1つの区画として 使うのであれば,基本区画として全てを割り当てて sda1 という区画を作ります. 次にフォーマットですが,ext3 ファイルシステムでフォーマット(個人的に推奨) する場合は,mke2fs -j /dev/sda1のようにフォーマットを行います.

 SCSI 接続であればかなり短時間でフォーマットが終了しますが,USB 接続の 場合はかなり CPU 負荷が上がるほか,フォーマットにも長時間を要する と思います.また, 何時間経っても進行状況が進まない場合,ドライバレベルで問題が発生している 可能性があります.Vine2.5β2で USB ディスクを試用したした際には,1/3 程 フォーマットするのに1昼夜かかり,また,そこでハングアップに近い状態に なってしまいました.Vine2.6r1 であれば,フォーマットが数時間で無事に終了 すると思います.

■マウント
 ディスクは sda として認識されるようになっており,また,パーティション は sda1.マウントポイントとして /mnt/bk_disk にマウントする状況を例に 説明します.なお,以下コマンドは root 権限で実行し,予め mkdir /mnt/bk_disk をして,マウントポイントのディレクトリを作成 しておいてください.

 マウント後は通常のディスクとして利用可能です.

■SCSI接続の場合

SCSI IDが 1の場合,以下のようにコマンドを実行します."0 0 1 0" は,『SCSI インターフェイス0, Channel 0,SCSI ID 1, LUN 0』を意味します.

# echo "scsi add-single-device 0 0 1 0" > /proc/scsi/scsi
# mount /dev/sda1 /mnt/bk_disk
※1行目のコマンドは,Linux 起動時にディスクを 自動認識させた ときや,remove-single-device で切り離した後でない場合は不要です.

 実行後,mount コマンドを実行すると,どのようなデバイスがどこに マウントされているか表示されます.当該の行を抜き出しますと,

/dev/sda1 on /mnt/bk_disk type ext3 (rw)
 のように出力されているはずです.また,df コマンドを実行 すると,ディスク容量,使用容量,空き容量等も表示されます.

■USB接続の場合

 USB 接続の場合,デバイスは USB ケーブルを挿したと同時に認識されます. そのため,mount コマンドを実行するだけでOKです.

# mount /dev/sda1 /mnt/bk_disk
■アンマウント
 ディスクがマウント状態にある場合,Linux はディスクに遅延書き込みを 行うため,バチッとディスクの電源を切ると,キャッシュされている分だけ データを喪失する可能性があります. そのため,ディスクを取り外したり電源を落とす前には,マウントを解除 (アンマウント)する必要があります.

■SCSI接続の場合

 ディスクの電源を落とす場合,SCSI接続の場合はアンマウントしただけで は不都合が生じますので,SCSI デバイスとして切り離す旨,ドライバに 通知する必要があります.

 ディスクの電源を切る前に,以下のようにオペレーションを必ず行って ください.なお,remove-single-device に続くパラメータは,マウント時と 同じです.

# umount /mnt/bk_disk
# echo "scsi remove-single-device 0 0 1 0" > /proc/scsi/scsi
 上記コマンド実行後,mount コマンドを実行し,マウントが解除され ていることも確認してください.また,ディスクの電源を落とす場合は, cat /proc/scsi/scsi を実行し,SCSI デバイスとして切り離されている ことを確認してください.

■USB接続の場合

 USB 接続の場合,ケーブルを抜いた際にデバイスの切り離しが行われます. そのため,アンマウントコマンドの実行のみでOKです.マウントされていない のが確認できたら,後はおもむろに USB ケーブルを抜いても問題ありません.

# umount /mnt/bk_disk
■パフォーマンスのチェック
 Linux に接続されているディスクのパフォーマンスをチェックする際には, hdparm コマンドがよく利用されます.このコマンドは本来ディスクの 設定を変更するためのものですが,転送レートを測定することも可能です.

 例えば,sda デバイスの転送スピードをチェックする場合,以下のように 実行します.

# hdparm -tT /dev/sda
 今回使用した一連の機器では,以下のような転送レートが出ました.なお, 参考データとして,内蔵 IDE ディスクのデータも列挙します.

ドライブ,接続形態 buffer-cache reads [MB/sec] buffered disk reads [MB/sec]
内蔵 IDE 4G120J6
(参考値)
196.32 34.78
GAWA-DDDSCSIUSB +4G120J6
(SCSI接続)
200.00 15.35
IDEリムーバブルケース +AEC-7720U +4R120L0
(SCSI接続)
193.94 15.17
SOTO-3.5iUB +4G160J8
(USB1.1接続)
185.51 0.96789

 チェックするべき項目は,『buffered disk reads』です.この表からも 分かるとおり,IDE で直結れているディスクはかなり高い転送レートが発揮 されています.しかし,SCSI 接続のディスクの方はと言いますと, Ultra SCSI の最大レートである 20[MB/sec] に達しておらず,IDE 直結の約 半分くらいのレートになっています.GAWA-DDSCSIUSB, AEC-7720U のレート が共に同じくらいになっているのからも分かる通り, IDE->SCSI変換 はかなりオーバーヘッドが大きいということかもしれません.純粋な SCSI ディスクであれば,転送レートはかなり高い筈です(純粋なSCSI ディスクを 接続する場合,ディスク性能を考えると Ultra SCSIに接続するのは勿体ない ので,UltraWide SCSI や,さらに高速な SCSI バスに接続するのが好ましい でしょう).

 一方,USB 接続は USB1.1 の最大転送レートである 10[Mbps](1[MB/sec])に 近い値が出ていますが,絶対的なスピードとしてかなり見劣りがします.他社製 の同様の製品であれば,USB 2.0 接続時に 25[MB/sec]程度のレートが出るよう なので,P4-533のような USB 2.0 の利用できる Terminator であれば,そちらを 使用した方が良いかもしれません.

■バックアップの実行
■rsyncコマンドの説明
 UNIX ベースの OS を利用しているのであれば,rsync コマンドを 利用することにより,簡単に任意のディレクトリ間の同期を取るこ とができます.rsync は,ファイルのタイムスタンプをチェックすることにより, ファイルの同期をとります.また,デフォルトでは ファイルの削除(更新元にファイルが無く,コピー先に存在する場合)は行い ませんが,オプションを付けて実行することにより,削除を行うようにすることも 可能です.

 以下に,rsync コマンドの代表的な使い方の例を書きます.

# rsync -av --delete /export/hd0 /mnt/bk_disk
 このように実行すると,/export/hd0 を更新元とし,/mnt/bk_disk を更新先 として同期を取ります.なお,厳密には /mnt/bk_disk/hd0 というディレクトリが 作成され,この下に /export/hd0 の内容がコピーされます.

 オプションに関して説明しますと,"-av"というオプションは, "archive モード"を利用し,"verbose"で実行せよという意味になります. "-a"オプションを付けるということは,"-rlptgoD"オプションを付けるのと 同じであり,順に説明しますと,『ディレクトリの中身を再帰的にコピーせよ』 『シンボリックリンクはそのままシンボリックリンクとしてコピーせよ』 『パーミッション情報を維持せよ』『タイムスタンプを維持せよ』『グループ 情報を維持せよ』『オーナー情報を維持せよ』『デバイスファイルの場合はその ままコピーせよ』といった意味になります.また,"--delete"は,前述した通り, 更新元に当該ファイルが無い場合は削除せよという意味になります.

 一部オプションは root でないと有効になりませんので,root 権限で実行 してください.

 "-v"オプションは,『更新したファイルを逐次表示せよ』というオプションで あり,何も表示させたくない場合は,"-q"オプションを使用します.

 殆どの場合,実行オプションは "-av --delete" だけで事足りると思います. より詳細な rsync の使い方に関しては,man ファイルを参照するようにしてください.

 なお,rsync コマンドは,ネットワーク経由での利用も可能です.ネットワーク を介してデータを転送する場合は,データを圧縮して転送する"-z"オプションを 使用すると良いでしょう.

rsync はとても高機能なコマンドであり,特定のファイルを 更新から除外したりであるとか,デーモンモードで実行し, 透過的にミラーリングすることも出来ます.

■rsyncコマンドでバックアップを行う
 今回は SCSI 接続のディスクのみを使用し,実際に rsync でディスクを バックアップした際に要する時間を計測してみました.方法としては,内蔵 している2本の IDE ディスクを,それぞれ GAWA-DDDSCSIUSB に内蔵したディスク, AEC-7720U 経由で接続したディスクに rsync し,所要時間を計測することで行 いました.なお,ファイルシステムは全て ext3 でフォーマットして あります.

※たまたまファイルの大掃除をした直後でしたので, AEC-7720U経由でバックアップしたディスクの方は,容量がかなり少なくなって います

更新先 ファイル容量[KB] 所用時間[h:m:s] 実効レート[KB/sec]
GAWA-DDDSCSIUSB 86,537,696 1:55:28 12,491
AEC-7720U経由 43,441,376 1:14:39 9,699

 最初にお断りしておきますと,rsync はディスクの同期に先立ち,どの ファイルをコピーするべきかや,どのファイルを消しても良いかを一通り スキャンします.そのためのオーバーヘッドがかなり存在するため,所要 時間は純粋なディスクアクセス時間と比例しません.

 上記の結果を見ますと,大まかに見積もって 10[MB/sec]程度の実効レート が確保できると言って良さそうです.AEC-7720U の方は若干レートが低めで すが,これはファイルの内容に負うところが大きいと考えられます. GAWA-DDDSCSIUSB にコピーしたディスクの内容は,比較的大きなサイズの データが多く,また,数は少なめです.逆に考えますと,小さなファイルが 沢山ある場合,レートは低くなる可能性があります.

 DDS3 のテープドライブを用いてバックアップを行った際の実効レートは, 約 1[MB/sec]でした.この値はバックアップしたファイルの内容による大きな 変動が無かったことを考えますと,今回試みたような方法であれば 10倍以上の スループットが望め,時間で考えると1/10の以下の時間で済むと言えます.

 また,rsync は機構的に差分バックアップを行いますので,2回目以降の実行 時には(更新したファイルの数/容量にもよりますが)数分でバックアップが完了 することでしょう.同様のことはテープドライブを用いても行えますが,やや煩雑な 手続きが必要になるでしょう.

■電源に対する負荷
 今回,AEC-7720U 経由で 1台ディスクを増設したことにより,内蔵ディスクは 合計 3台 となりました.そのため,電源負荷が増すことが考えられ,M/B温度 (電源温度)の上昇が懸念されます.また,リムーバブルケースには通風口が 付いているため,ここから吸気したフレッシュエアーが電源を通らずに外部に 排出されることも考えられるため,その影響も心配です.

 現在使用中の Terminatorでは,別ページ でも述べた通り,スレーブに接続されて いるディスクは自動的にスピンダウンする設定にしています. そのため,非利用時にディスクは殆ど電力を消費しません.ディスクが スピンアップし,普通に利用した場合の温度変化のグラフを見てください.なお, グラフは,稼働状況監視用にインストールした RRDtool の出力グラフをそのまま 用いています.

※室温は 22度前後の状態で測定しています.


IDE HDDを普通に利用したときの CPU と M/B の温度変化
グラフのキャプションが誤っています.CPUとM/Bとで入れ替えて見て下さい

 グラフ中の 11:30 辺りからはじまる部分に注目してください. このグラフからは,M/B温度は1度の上昇に止まっていることが分かります. 電源の負荷に関しては,温度的には問題無さそうです.

 次に,普段スピンダウンしている IDE ディスクから,内蔵させた SCSI 接続 のディスクに rsync した際の,温度変化のグラフを以下に示します.


IDE HDDと AEC-7720U 経由を利用したときの CPU と M/B の温度変化
グラフのキャプションが誤っています.CPUとM/Bとで入れ替えて見て下さい

 グラフ中の右端がピークになり,これ以上の温度上昇はありませんでした. グラフを見ると,M/B温度の上昇は3度あります.先の実験の結果,IDEディスクを スピンアップして利用するだけでも1度上昇しておりましたので,SCSI 接続 ディスクを利用した場合の上昇は,実質2度であると言えそうです.しかし, rsyncは激しくディスクにアクセスしますので,電源に対する負荷が高くなった可能性 もあります.

 これらを総合して考えますと,ディスクを1台内蔵して利用した場合の温度上昇は 1度〜2度であり,2台を内蔵して同時に激しく利用した場合でも,3度に収まると 言えそうです.

■まとめ
 今回,ハードディスクを用いてファイルをバックアップを行うことに関して 検証しましたが,その効果は予想以上に高く,スピードおよび使い勝手の点で 大幅に改善されました.特にメディア交換が必要なくなったことは, バックアップを定期的に行う上で支障になる,『気軽さ』の面での大きな アドバンテージと言えます.

 私の場合,120GB ディスク2本をバックアップする必要があるため,現在は GAWA-DDDSCSIUSB および AEC-7720U それぞれに 120GB ディスクを取り付けて 運用しています.しかし,昨年末に MAXTOR から 250GB ディスクが発売され たこともあり,近々これの導入を考えています.ネックは価格であり,現在 5400rpm の 4A250J0 で 4万円もしますので,バイト単価を考えると割高になって しまいます.数ヶ月後に は3万円台前半に降りてくることが予想されますので,値がこなれた頃に購入し ようと思っています.


 ここまで色々と試行錯誤しましたが,もし,これからディスクを使用した バックアップシステムの導入を検討されている方にアドバイスをするとしたら, 次のような事柄になると思います.

■パフォーマンス重視型

  • SCSI 接続を利用
  • ディスクを内蔵するのは電源の負荷に直結するため,できるだけ外付けにする
  • 外付けの 5inch ドライブが利用可能な SCSI ケースを購入し,IDE リムーバブルケース + AEC-7720U と同様の構成が良いと思われる
  • 外付けケースを使用すれば,AEC-7720U の初期化をケース電源の OFF/ON で行えるため,リムーバブル化も問題なく実現出来る

■手軽さ重視型

  • USB 接続を利用
  • BigDrive対応の IDE->USB 変換ブリッジを採用したケースを利用する
  • 大容量のデータを頻繁に更新しないのであれば,rsync で最初にバックアップするときのみ時間がかかるが,更新時の所要時間はそれほど長くはならない

 今回,あまり SOTO-3.5iUB に関しての突っ込んだ解説はできませんでしたが, 250GB ディスク導入の暁には,これをメインにして行こうと考えています.

■その後['03/02/25]
 先週末に MAXTOR の 250GBディスク(5400rpm の 4A250J0)を購入し, SOTO-3.5iUB で使い始めました.動作音,発熱共に先日使用した 160GB ディスク よりも遙かに良く,騒音対策,放熱対策を行わなくても問題ないレベルです.

ディスク表面.MAXTOR 系(非Quantam系)の表面
ディスク裏面.基盤は DiamondMax16 系のもの
仕様はこんな感じ.DiamondMax16 120GB 5400rpm のディスクが+5V:795[mA], +12V:896[mA]であったり,7200rpm 80GB がそれぞれ 670[mA],960[mA] である ことを考えると,かなり低消費電力
Master/Slaveの設定はこの通り.最近のディスクは初期状態がCS(Cable Select) になっていることが多いようです

 まず,USB1.1 に接続し,1パーティションに切って ext3 でフォーマット を行いました.前回も感じたのですが,USB 経由でのディスクの使用は,かなり 負荷が高くなるようです.ピークで 15,平均でも7〜8くらいです. Pentium3-S/1.26GHz を使用した Terminator では若干のパフォーマンス低下で 済みましたが,C3/533MHz を使用した Eden では,X-Window のカーソルが固まって 動かなくなる程の状態になりました.


RRDtool で見た,フォーマット〜ファイルコピー時のロードの推移

 フォーマットに要した時間は,66分15秒でした.IDE/SCSI で接続した場合 と比較して,かなりの長時間を要しています.

 次に rsync に要した時間ですが,合計4つのディレクトリを rsync した所,次のようになりました.

rsync の実効レート
転送容量:write[byte] 転送容量:read[byte] 転送レート[bytes/sec]
28,882,980,695 393,332 984,084.57
79,557,855 58,564 660,717.17
47,422,020,301 668,996 989,508.49
76,501,772,279 3,183,588 971,090.74

 2番目の rsync のジョブは若干レートが落ちていますが(おそらく,転送データ が少なかったため,前処理等のオーバーヘッドが大きかったためと考えられる), 殆どの場合に於いてUSB1.1の転送レートとほぼ同じ値が出ています.

 都合,153GB 程をバックアップしたことになりましたが,それに要した時間は 約 2603分となりました.トータルで見ると,転送レートは約 980[kB/sec]です. 毎回のこの時間 を要するとしたら,とてもバックアップに使用できない感じですが,2回目以降は rsync で差分のみコピーされるため,私の用途であれば,次回以降,2時間以内に 収まりそうです.

 USB 接続のため,常に USB ケーブルを結線しておき,使いたいときには, SOTO-3.5iUB の電源を入れて Linux 側にディスクを認識させてmount し, rsync が終わったら umount して再びディスク側の電源を落とすだけでOKです. この手軽さはスピードが出ないと言う欠点を補って余りあるように感じています.

 余談ですが,DDS3 のテープドライブを使用して,同じ容量をバックアップ するとしたら…と,考えたときに,ぞっとするものを感じてしまいました.


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