HTPC環境[1] 〜 DVD,サラウンド,TV出力とドライバの設定について〜

■DVD を使う
■DVD ドライブについて
 次世代メディアと言われ続けていた DVD も,1999年頃からの DVD-Video タイトルの 増加と価格の下落により,一気に加速した感があります.売り上げ速報2001のデータによると,DVD-Videoがビデオカ セットの1年通しての出荷本数を抜いたのは 2001年になってからのようですが,1998年 から1999年に移った辺りで,急激に伸びており, 今現在も急激な 勢いで売上を伸ばしています.

 PC用の DVD-ROM ドライブは,1996年にDVDフォーラムにより規格が認定され,大手 の松下寿電子が生産を開始していますので,この年の中旬以降くらいから店頭でもよく 見かけるようになったのではないかと思います.感覚的にはかなり前からあったような気がし ますが,実際には5年前なんですね...

 出始めの頃の DVD-ROM ドライブは,あまり人気がなかったような覚えがあります. これは,DVD-ROM でしか利用できないソフトタイトルが殆ど無く(百科事典等のソフトのみ), DVD-Videoはまだ高価であったほか,PC の CPU は非力であり,DVD-Video 再生には専用のカードを必要としていたためだと思います.そのためもあって,『あえて DVD-ROM を購入する』というモチベーションは高くありませんでした.おそらく,出始め 当時に DVD-ROM ドライブを購入した方は,殆ど CD-ROM ドライブとしてのみ使用し ていたのではないでしょうか.

 CD-ROMの場合,ドライブによる違いは,何倍速再生が可能かやIDE/SCSIのどちらの タイプであるかという くらいしかありません.しかし, DVD-ROM ドライブの場合は 製造された時期により大きく分けて3世代に分けられ,いくつかの大きな仕様上の差が あります.

世代 DVD-ROM再生速度 特徴
第1世代 等速 一番初期に出たドライブ.CD-Rが再生不可
第2世代 2倍速 CD-R再生可能
第3世代 4倍速〜 CD-R/RW対応.ドライブによってはDVD-RAMも再生可.
この頃からフェーズ2(*)へ移行

 DVD-Video には,コンテンツ製作会社(映画製作会社など)の利益を尊重するために, 視聴可能な国を限定することの可能な仕組みが備わっています.メディア上にこの視聴 可能な地域をコードで表して記録しているわけですが,これをリージョンコードと 呼びます.

 北米は"1",日本や欧州は"2"のようなつけ方がなされており,主に『映画館で上映済 みでない地域に,DVD化されたソフトが流通しないように』と,いうことから策定されたと いう話です.なお, Regional Management Information Codeに世界地図で国とリージョンコードの 対応を説明したページもありますので,より詳しい情報を見たい場合はそちらも見てみて ください.ちなみに『どの地域でも視聴可』というリージョンコードもあり,これは"0"にアサ インされています.

 DVD-ROMの初期のドライブでは,ソフト側でリージョンコードを判別し,視聴が許さ れていない地域の場合は再生しないようになっていました.しかし,この ような仕組みでは,厳密にリージョンコードをベースとした視聴規制ができません.何故なら, ソフト側に『このPCはリージョンコード"2"である』と,記録しておいても,必要に応じて ソフトを再インストールしたり,設定ファイルを書き換えて"1"にしてしまうことも可能な ためです.

 しかし,このままではリージョンコードは意味を為さなくなってしまいます.そこで今度は DVD-ROMドライブ側に,ハード的にリージョンコードを持たせることが製造メーカーに 義務付けられました.その結果,大抵のドライブでは5回まではリージョンコードを変更 することが可能ですが,それ以降は変更することが不可能になりました.

 ハード的にリージョンコードを持たないタイプをフェーズ1,持つタイプをフェーズ2と言い ます.フェーズ2への移行時期('98年秋頃から)には,ハード的な制約を受けないフェーズ 1の第三世代ドライブを駆け込みで購入するユーザーも多かったような覚えがあります. しかし,フェーズ2に完全移行した現在,リージョンをチェックを無効にする(オールリージョン 化と言う) DVD-ROM ドライブ用のファームウエアが ハッカー(*)の手で作り 出されて公開されていたり,再生用ソフトにパッチを当て,リージョンコードをチェック しないようにするツールが 存在していたりします.違法性云々に関しての議論はあるかと思いますが,ユーザーにとっ ての不利益な事柄を,ユーザーの手で何とかできる状況にあるということが言えます.

 そもそも,オンラインショッピングが一般化しはじめ,インターネットを利用して海外 から正規の手続きを踏んでDVDを輸入するのが容易になった現在,果たしてリージョ ンコードがどれほどの意味を持つのだろうかという疑問を感じます.また,特殊なことを しかくても,DVD-ROMドライブ/DVDプレイヤーは低価格化が進んでいますし, いざとなったら数種類揃えて複数のリージョンコード再生環境を作ることも可能ですから.

■DVD 規格にについて
 当初 DVD はDigital Video Discとして規格が策定されていましたが,その後 汎用的な記憶メディアを目指すため,Digital Versatile Discとして名称が改め られました.また同時に,1995年から関係各社がコンソーシアムを作り,DVD-Rをはじめと する様々な統一規格の策定が始まりました.

 その後の混沌とした DVD 規格の乱立はご存知の通りですが,名称に『DVD』と冠され ていても,『DVD+RW』のように,正確にはコンソーシアムが正式に規格策定し たものではないものも存在します.同様の用途に対して複数の規格が存在するという 状況は,ユーザーにとっては混乱の原因にもなるわけですが,ここに至った状況を踏まえて 考えますと,とても興味深いことが分かり,また,なるべくしてなったのだということが分かります.

 少し余談が多くなってしまいましたが,DVD規格策定までの経緯,そしてその後のDVD を取り巻く環境,現在規格として公開されている一連のDVD規格に関して, DVD規格に関して ページにまとめました.

■DVD Video とサラウンドの関係
 最近は DVD Player が廉価になったこと,そして 5.1ch 再生用のデコーダ,スピーカー のセットが2万円前後で購入可能になったことなどもあり,サラウンドシステムも一般的に なって来ました.メーカーによって『ホームシアター』と,呼び,一通りのものをセット で販売している場合もあります.

 私はと言うと,'87年辺りにバイト先のマニアな上司に,如何に Dolby Surround Pro-Logicが素晴らしいかを懇々と説明され(自慢とも言う :-)),その際に NEC 製の Dolby Surround 対応 AV アンプをナケナシのバイト代で購入しました. ホントは Pro-Logic 対応のものが欲しかったのですが,当時の私には高価過ぎて 手がでませんでした.その上,スピーカーまでお金が回らず,フロントスピーカーも DENON 製のサラウンド用のスピーカーを使うという始末.しかし,はじめて実際にこれを使って 映画を観たときには,音場がこれほどまでに臨場感に影響を与えるのかと, びっくりしたものです.特に中古で買ったばかりの YAMAHA製 LD Player(結構レアな プレイヤーかも)で TOP GUN を観たときには感動ものでした.

 実はこの NEC 製の AV アンプ,つい最近まで,実に10年以上使用していました. 真面目な話,サラウンド未体験の人は, 3ch/4ch でも良いので,是非体験して みて頂きたいなと思います.PCで DVD を再生する場合,2ch stereo の Audio Out をデコーダーに入れて再生するだけで,Dolby Surround での再生が可能になり ます.また,SPDIF 出力(光/同軸)インターフェイスを使用することが可能で あれば,5.1ch での再生も可能になりますので,より完璧なサラウンド環境が手に入り ます.

 殆ど余談になってしまいましたが,サラウンドに関しての詳しい解説は, DVD Video で使用されているサラウンドに関する情報の方にまとめました.

■BKi810でHTPC
■HTPCとは何ぞや
 最近,HTPCという言葉がよく使用されていますが,これは,ホームシア ターPCの略です.家庭内映画館を実現するためのPCといった感じのニュアンスで すが,単にDVDプレイヤー代わりのPCといった意味ではありません.PCは一般のTV より高い解像度での出力が可能な他,高度なアルゴリズムを使用したソフトデコーダー が利用可能なため,たとえばXGA以上の解像度でダイレクトに出力可能なプロジェクタ を接続することにより,家庭用高級機以上の画質での再生が可能になります. 極めると奥が深いものであると言えましょう.

 ただAVマニア向けの詳しい解説は,本ページの趣旨から外れてしまいますので,ここ では割愛し,一般のPCユーザ向けの実践的な話題についてまとめることにします.

 なお,HTPCに求められそうな機能を簡単にまとめますと,以下のような事柄だと 思います.

    1.DVD Video 再生に十分なパフォーマンスを持った CPU
    2.高品質で画像を再生可能であり,パラメータを調整可能ななビデオカード
    3.きちんとしたアルゴリズムを使用してデコードする,DVD Video プレイヤーソフト
    4.高品質で音声を再生可能なサウンドカード
    5.DVD Video の鑑賞を妨げない静粛さ
    6.リモコン代わりに使用できる入力デバイス

(この辺りの話のより詳しい解説は, 迷光の間:シアターシステムにうまくまとめられています)

■画面表示環境を整える
 映画を鑑賞するときには,やはり大画面で迫力ある映像を見たいものです.可能で あればプロジェクタに出力したいところです.しかし,価格が10万円台になり,一昔前と 比べて入手しやすくなったとは言え,まだまだプロジェクタは一般的ではありません.また, 短焦点のプロジェクタも存在しますが,スペース的な問題で十分な環境を整えるのは 日本の住宅事情では少々厳しいものがあると思います.

 そこで,一般家庭でおそらく最も大画面で表示可能なデバイスであろう TV を利用し, DVD Video を再生することを考えてみます.

 BKi810は標準で,S端子およびコンポジットの映像出力端子を搭載しています.


BKi810 v3.3A 背面パネル.
黄色で色分けされたコンポジット端子(AV-Out), S端子(S-Out)が存在する

 基本的には,この出力端子とTVの映像入力端子とを接続することにより PC の表示 画面を TV に出力することが可能です.しかし,掲示板の書き込みや,これまでにお寄せ 頂いたメールを読みますと,かなりこの辺りの設定で戸惑っている方がおられるようです. そこで,この辺りの設定をまとめてみることにします.

 この画面は,Windows上で画面のプロパティを選び,『設定』->『詳細』で表示する ことが可能です.Win98のプレーンな環境に,BKi810 同梱の v1.6 ドライバーCDから ビデオのドライバーをインストールした状態では,このようなバージョンのものがインストール されています.
 ここで,『ディスプレイ』タブを選択すると,このように出力先をどこにするかを選ぶことが可能に なります.

 ここでは,『テレビモニタ』は選択できないようになっていますが,S端子にケーブルを接続して おくことにより,選択可能になります.また,画面上にも説明がありますが,TV出力する場合の 解像度はSVGA以下に制限されるほか,表示させた際の品質はかなり悪くなり,PC用モニタ のような高精細な表示は望むべくもありません.フリッカーや精細さに関しては,若干ではありま すが,『ファインチューニング』で調整することが可能です.

 なお,このバージョンのドライバでは,PCモニタに表示しているものと同じ物をTVに表示すること が可能です(ミラーモード).しかしその場合には,TVモニタの設定に引きずられる形でPC モニタ表示側のリフレッシュレートや解像度が落ちます.

 基本的に同梱されているドライバを使用する場合,あまり悩むこと無しにTV出力が 可能です.しかし,Intelから 最新版のGraphicドライバをダウンロードし,インストールすると,上記のような設定 画面は表示されなくなってしまいます.以下,Windows2000 用に win2k_xpm652.exe, Windows98 用に win9xm652.exe をインストールした際の設定について解説します.

 ドライバをインストール後に再起動すると,タスクトレー上に何やら液晶モニタのような アイコンが表示されるようになります.これを右クリックするか,この画面のように,デスク トップ上で右クリックし,『グラフィックのプロパティ』を選択すると Intel Graphics Technologyという設定用アプリケーションが起動します.

 画面解像度等を変更する際には,デスクトップで右クリックというのをよく使用するかと思い ます.新しいドライバを入れた後は,この右クリックをしてからメニューが出るまでにとても 長い時間がかかるようになりますが,これは正常です.(私も当初,おかしくなったんじゃない かと焦りました)

 Intel Graphics Technology起動後,『デバイス』タブを選択すると,このように 出力デバイスを選択する画面が現れます.

 もしここに,この画面のような『テレビ』が表示されていない場合,S端子の配線を確認 してください.以前のドライバであればケーブルさえ接続しておけば良かったのですが,今回 のバージョンでは,接続機器が通電されていないと(例えばビデオデッキに接続してある場 合,デッキの電源が入っていないとNG),接続先デバイスとして認識しないようです.

 なお,一度『テレビ』を認識させた後は,接続機器が通電されていなくても,選択する ことが可能になります.

 (コンポジット端子の利用に関しては確認していません)

 この画面で『テレビ』を選択し,画面設定をコンボボックスで指定します.画面下の『モニタを 有効にする』チェックボックスをチェックし,『OK』ボタン,または『適用』ボタンを押すことにより, PC画面がTVに出力されるようになります.

 しかし,ここで注意が必要です.新しいドライバでは,『PCモニタ』と『テレビ』は排他利用 になっているため,どちらか片方にしか表示することができません

 『TVに表示したけれども画質が…』のような場合や,ずれて表示されるときは,『テレビの 設定』で画質調整を行います.画面のちらつきはフリッカフィルタを調整することによって調整 可能ですが,フィリッカフィルタを効かせすぎると,精細さに欠ける『眠たい』画面になります.


 色の設定やビデオモードは,この画面で設定することが可能です.

 ちなみに DVD Videoを再生する場合は,派手な配色かつコントラストが高めなの方が 見栄えが良くなります.TV表示する場合は,ガンマ,コントラストを調整しておく方が良い でしょう

 一度きちんと設定しておけば,メニューからダイレクトに出力先を変更することも可能になります.
 Windows98でも,基本的な操作は同じです.(ウインドウが小豆系の画面は,Win98上での 画面をキャプチャしています)
 先ほど,メニューからダイレクトに出力先を切り替えられると書きましたが,ここでホットキーを 設定しておくことにより,キー入力でダイレクトに切り替えることも可能です.

 また,解像度や色数に関しては,メニューからダイレクトに変更することが可能です.

 なお,新しいドライバは若干安定性に欠けるかもしれません.XGAを超える 解像度で画面のプロパティを出そうとした際に,何度か画面がホワイトアウトしてしまうとい うトラブルが発生しました.同様の症状が出た場合は,一度リセットし,画面の解像度を 落として詳細な設定を行った後に,解像度を元に戻してみてください.

 通常の利用ではドライバが原因と思われる障害は発生していませんが,ご注意あれ. 使い勝手も前のものよりも落ちている気がしますし,『WindowsXPを使いたい』のような 場合以外は,あえてアップデートしない方が良いかもしれません.


『HTPC環境[2] 〜スピーカ,S/PDIF端子の追加,AVアンプ等〜』へ進む

『BKi810 活用メモ』 へ戻る