DVD規格に関して

■DVD規格
■DVD規格策定の流れ
 DVDとは,ハリウッドからの要求により,CDと同サイズで高画質,長時間の 記録が可能であり,LDの代替が可能な次世代デジタルメディアとして 開発されたメディアです.そのため,当初は動画(映画等のコンテンツ)を記録することが メインで考えられており,DVDはDigital Video Discの略とされていました. しかし,その後,次世代汎用記憶メディアを目指し,全ての民生用映像や 音声,情報メディアを融合し,デジタル多目的メディアと使用するために,Digital Versatile Discと改名されました.

 なお,現在DVDの規格は多数存在しますが,メディア形状は当初の目標通り, CDと同様の12cm,8cmの2種類のみに統一されています.

 このDVD統一規格が策定されるまでには,コンテンツを握るハリウッド,そして実際にメディア やドライブの生産 を行う多くの関係製造メーカーの思惑が複雑に絡み合い,紆余曲折がありました. その結果,一度はまとまった規格ではありますが,2001年現在,DVDフォーラムに参加 しているメーカーは事実上いくつかの陣営に分かれており,規格は分裂しています. そのため, DVD-R/+RやDVD-RAM/RW/+RWなど,類似の規格が存在し,市場で デファクト・スタンダードを争う結果になっています.


現在までの DVD 規格策定に関する流れ

1994/12 SONY,Philips連合がMMCD規格を提唱
1995/1 東芝,松下陣営がSD規格を提唱
1995/5 IBM,MS等の米コンピュータ業界がDVD技術仕様について9項目の要望を発表
1995/8 米コンピュータ業界がDVD規格の統一を要望.ソニー,フィリップスが規格統一を提案
1995/9 規格統一で基本合意.SONY陣営が大幅に譲歩
1995/12 DVD-video,DVD-ROMの規格を正式決定
1997/6 DVD-RAM規格策定(2.6GBのver1.0)
1997/9 DVD-R規格 ver1.0 を策定
1997/9 DVD+RW ver1.0,片面3GB(後にver2.0で4.7GB).を策定
(DVDフォーラムにおいてDVD-RAMと規格を争った.規格化で敗れた結果,SONY陣営は独自 フォーマットとして策定  http://www.sony.co.jp/Products/DataMedia/PR/sep3.html)
1998/9 DVD-audio規格策定
1998/11 DVD-R 4.7GBの ver1.9 規格策定
2000/2 DVD-RWをDVDフォーラムが認定
2000/2,5 DVD-R for Authoring ver2.0策定(コピープロテクションに関してDVD-R規格を分割)
2000/9,12 DVD-R for General ver 2.0策定
2001/5 独自規格のDVD+Rを発表(DVD+RWのサブセット)

■DVD規格の統一と分裂
 DVD規格策定に際しては,SONY,Philips連合と東芝,松下陣営が争った形になります. それぞれのグループが提唱する仕様は,物理仕様,論理仕様共に互換性が無く,各社が持っている 特許権や各社のメンツの絡みもあり,一時はDVD規格統一が危ぶまれました.しかし,1995 年に物理仕様は東芝案,論理仕様はSONY案という形で合意に達し,DVDコンソーシアム が設立され,DVDの規格化が開始されました.

 この規格統一に向けての話し合いは紛糾し,ユーザー不在の争いになっており,新聞にも 大きく採り上げられていたのは記憶に新しいところです.この争いは最終的に,『規格の統一 がユーザーにとって最も重要』との考えから,SONY連合が折れる形で合意に達っする ことができました.

 その後,DVDの各種規格はワーキンググループによって決定され,これまでに DVD-ROM,DVD-R,DVD-RAM,DVD-Video,DVD-Audio,DVD-RWの仕様が DVD フォーラムによって策定されています.そのほか,メーカー独自仕様として,DVD+RW, DVD+R仕様が存在します.DVD+RW はHP,SONYをはじめとする6社が DVD フォーラム 内でDVD-RAM とコンピュータ用書き換え型の規格としてスタンダードの座を争ったが 敗退,独自規格として発表したものであり,DVDフォーラムの策定した正式な規格では ありません.この結果,事実上再びDVD規格は分裂することになりました.

 また,Pionner は民生用VTR用としてDVD-R/RWを推進していますが, DVD-RAMを同市場向けメディアとして展開を狙っている企業もあるため,両規格の 衝突は避けられない状態にあります.現在,DVD-Rドライブは何種類か出荷さ れていますが,メーカーの思惑により,DVD-R/RAM 用ドライブと DVD-R/RW用 ドライブが出荷されているなど,再びユーザー不在の争いが始まっており,混沌とし た状態になりつつあります.

 その他,DVD-Audioに関しても火種は存在し,DVDフォーラムは DVD-Audio 規格を策定しましたたが,CDの基本ライセンスを持つSONY,Philipsは Super Audio CD (SACD)フォーマットの規格を99/3に発表し,これに対抗する構えです. これは,DVD-Audio規格策定に際してSONY陣営がイニシアチブを握れず, 意見が受け入れられなかったためだと言われています.

参考資料:Super Audio CD (SACD)と現行のCDとの比較

名称 SACD CD
符号化方式 1bit DSD 16bit Liner PCM
サンプリング周波数 2822.4kHz 44.1kHz
データ容量 4.7GB 640MB
再生周波数範囲
(理論値)
DC〜100kHz以上 DC〜20kHz
ダイナミックレンジ
(理論値)
120dB以上
(可聴帯域)
96dB
記録可能時間 109min(2ch) 74min
追加機能 テキスト,画像,動画 テキスト

■DVDの普及と映像メディアのスタンダード化
 DVDの普及に際しては,コンテンツを握るハリウッドがデジタルコピーの完全な 禁止を要求したため,コピーガードの仕様決定が難航したことなどの 様々な要因により,当初はなかなかDVD市場が立ち上がりませんでした. しかし,現在はDVD-Video 再生可能な PlayStation2 の普及や,ソフトの充実, ソフトの低価格化などがきっかけとなり,急速に普及した感があります.

 出荷枚数で見た場合, 売上速報2001のデータによると,1998年から1999年にかけて急速にDVD出荷 枚数が伸びており,2001年に移った段階で,ビデオカセットの出荷本数を抜いています.

 以前は『永久保存版のためにLDを買う』という人が多かったのですが,LDの 記録面貼り合わせに使用されていた接着剤が記録面を腐食することが分かってき ました.製造工程に問題があるLDの場合,2,3年で腐食が進むようです.腐食が 進行すると再生映像にノイズが発生し,ディスク上にもポツポツと目視可能な点が 増加し,時間が経つにつれて症状は悪化します.最近のLDであれば対策が為さ れていると思われますが,保管時のサイズ的な面も含め,LDからDVDへの移行は 急速に進むでしょう.

■DVD規格について
 2001年9月現在,DVD規格のメディアとして,以下のものが存在しています.

名称 容量 用途
DVD-ROM 4.7GB CD-ROMの後継を目指した,コンピューター用読み出し専用光ディスク.
DVD-R (片面 1層 3.9GB)
片面 1層 4.7GB
一度のみ書き込みが可能なタイプのメディア.
コピープロテクションの仕様により Authoring と General の2種類の規格が存在する. 前者はDVDのマスター作成用であり,書き込みには専用の高価なドライブが必要. 後者は汎用の書き込み用であり,一般の民生用としての使用を想定している.なお, 旧仕様では3.9GBの容量のタイプも存在したが,書き込みドライブが高価なため, あまり普及していなかった.
DVD-RAM version 1.0
 TYPE1(両面):5.2GB
 TYPE1(片面):2.6GB
 TYPE2(片面):2.6GB
     (カートリッジから取り出し可)

version 2.0
 TYPE1(両面):9.4GB
 TYPE1(片面):4.7GB
 TYPE2(片面):4.7GB
 TYPE4(両面):9.4GB
     (カートリッジから取り出し可)
 カートリッジ無し(片面):4.7GB

コンピュータ用の随時書き込み/読み出し用の光ディスク.10万回程度の 書き換えが可能.Ver 1.0では片面 2.6GBの容量を持ち,A,B面の合計で 5.2GBの容量を持つ.Ver 2.0では片面4.7GB,A,B面の合計で9.4GBと なっている.なお,両面のメディア使用時は,A,B面の同時利用不可であり, メディア挿入時に使用面を選択してドライブに挿入する必要がある(つまり,反対 側の面を使用する場合は一度イジェクトし,ひっくり返して挿入する必要がある).

片面のディスクにはTYPE2という規格が用意されており,これはカートリッジからメディア を取り出し,対応しているDVD-ROMドライブで読み出しが出来るようになる. また,Ver 2.0 からはカートリッジ無しでの書き込みにも対応しており,はじめから カートリッジ無しのタイプも売られている.同時に位置決め精度も向上したため, Ver 1.0 では一度カートリッジからメディアを出すとエラーチェックのためにアクセス スピードが遅くなったが,Ver 2.0ではそのようなことは無くなったほか,両面メディアの カートリッジレスでの使用も可能となった.

DVD-RW (片面 1層 3.9GB)
片面 1層 4.7GB
技術的にはCD-RWをベースとしている.DVD-Rに対する位置付けも,CD-Rに 対するCD-RWと同様であり,CD-RW同様1000回まで書き換え可能なメディアである. DVD-RW Ver1.1 からはDVDプレイヤーでも再生可能なDVDビデオフォーマット記録にも対応.
DVD+RW (片面 1層 3GB)
片面 1層 4.7GB
メディアは1000回まで書き換え可能.データ容量,トラックピッチ,データ変調方式 がDVD-ROM,DVD-Videoと同じ.反射率も DVD-ROMと同じであり,既存ドライブや プレイヤーとの再生互換性が高い.当初の仕様は片面3.9GBの容量であったが,実際に 製品が発表される前に,片面4.7GBの仕様に変更された.将来的には DVD-RW との 再生互換性も検討されている.
DVD+R 片面 1層 4.7GB 一度のみ書き込みが可能なタイプのメディア.DVD+RWに位置付けは,DVD-RWに 対するDVD-Rと同様である.
DVD-Video SD-5 (一層片面):4.7GB 133分
SD-9 (二層片面):8.5GB 242分
SD-10(一層両面):9.4GB 266分
SD-18(二層両面):17GB 484分
既存の映像メディアの後継を目指した,読み出し専用のメディア. 以下のような特徴がある.
1.リージョンコード対応
ソフトにリージョンコードを指定しておくことにより,再生可能なエリアを限定可能
2.マルチアングル
複数のカメラアングルから撮影した映像を最大9アングルまで記録することが可能. ユーザーが選択し,好みのアングルで再生させることが可能.
3.マルチ言語字幕
最大32ヶ国語の字幕まで記録することが可能.再生時にユーザーが選択することにより, 映像に選択された言語字幕がオーバーレイして表示される.
4.マルチランゲージ
8つの音声トラックにより,最大8ヶ国語までの吹き替え音声を記録可能. ユーザーが再生言語音声を選択できる.
5.多彩な音声記録フォーマットに対応
Dolby Digital(AC-3) 方式では,1ch〜5.1chサラウンドで音声を記録可能.5.1ch とは,左前,前センター,右前,左後,右後,サブウーハー用の音声をそれぞれ別チャンネル として記録し,映画館のような立体音響環境を再現できる.5.1chでの再生の際には,デジタル 出力(光/同軸)を5.1chにデコードするアンプおよびスピーカーが必要(左前,右前の音声のみ 再生させて,ステレオ音声として聞くことも可).その他,サラウンド用音声記録フォーマットとし てはDTS(Digital theater Systems)形式での記録にも対応している.
その他,非圧縮2chのリニアPCMの記録にも対応しており,96KHz/24bit のようなより 高音質での記録が可能である.
6.MPEG2形式で記録
映像はMPEG2形式で圧縮され,水平解像度500本,720*480画素/30fps, 4Mbps〜9.8Mbpsの高ビットレートでの高画質記録が可能である.可変ビットレート (VBR)にも対応しており,内容に応じて圧縮率を変化させ,画質をあまり落とさずに 長時間の記録も可能.
7.マルチアスペクト
縦横比として映画の16:9を横方向に圧縮して記録しており,ワイドテレビでの再生 時には,TV放送再生時のような引き伸ばした画面にはならず,高解像度での再生が可能. 普通の4:3比のTVでの再生時には,上下に余白を入れるレターボックス,画面中央部のみ を表示するパン&スキャン形式を選べる.
8.マルチストーリー
複数のストーリーからなる映像を記録することができる.複数のストーリー間を ユーザーがメニューで選択したり,製作者が設定した何らかの条件(ランダム等)で分岐 させることが可能.インタラクティブなソフトが作成可能.
9.パレンタルロック
暴力的なシーン,性的なシーンが含まれているソフトに対し,試聴制限することが 可能な機能.プレイヤー側で設定しておくことにより,ソフト側に記録された情報を読み, 自動的にカットして再生するようなことができる.バレンタルレベルは8段階まで設定可能.
10.コピープロテクト
主に,以下の4種類が使用されている.
CSS(Contents Scramble System)
CSSはデータを暗号化してディスク上に記録する方式で,再生時にプレイヤーとソフトで 40bitからなる暗号キーを交換し,復号化することにより再生する方式.そのため,データ ファイルをそのままコピーしただけでは利用できない
CGMS(Copy Generation Management System)
映像の世代コピーに関する プロテクト規格であり,何世代までコピーを許すかという情報をデータ内に埋め込む.ただし, コピーする機器がこの機能に対応していない場合,機能しない
DTCP(Digital Transmission Contents Protection)
コピー時に 送信側と受信(録画)側でキーを交換し,認証を行ってから暗号化したデータをデジタルコピー する規格
マクロビジョン
VHSソフトによく利用される,輝度情報を極端に変化させることによってノイズを 発生させ,ビデオデッキでのコピーを不可能にする方式
DVD-Audio DVD-Videoと同じ サンプリング周波数として44.1/88.2/178.4/48/96/192[KHz]が利用可能なほか, 量子化ビット数としては16/20/24[bit]が可能であり高音質な音声を記録できる. 理論的にはダイナミックレンジ144[dB]になり CD-Audio と比較すると250倍にもなる. チャンネル数は6chまで対応し,96KHz/24bit/6ch,192KHz/24bit/2ch で74分以上の 音声を記録可能.CDクオリティであれば,約8時間の記録が可能である.なお,転送レート の最大は9.6Mpbsまで.その他,静止画や動画,テキストも記録可能であり,インタラクティブ なソフトが作成可能.
DeCSS騒ぎ(DVD-Video で使用している,デジタルコピーを困難にする暗号化手法である CSS が破られた)の関係で発売が延期されてい たが,CSS2の代わりにCPPM(Content Protection for Prerecorded Media)と呼ばれる 56bit のキーを採用するコピープロテクションが採用された.暗号鍵更新システムも備える.

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