崩壊そして復活

■崩壊までのカウントダウン
■崩壊の予兆1 【ブルースクリーン】
 K7DDRが届き,一通りのことを行って無事に動作することを確認 (ベンチマークしたりとかしていただけですが :-))後,実運用に 移すに際し,機器構成を変更しました.その際に,ディスクをより 大容量なものに交換し,Windows2000を再インストールすることに しました.すると,インストール中にブルー画面に…

 そういえば,検証前にインストールした際には,BIOS 設定で FSB 100MHz になっており(インストール後に気が付いた),インストール後に 133MHz に設定した覚えが….

 つまり,現構成では,FSB 133MHz で使用する場合,何らかの問題 が発生する可能性があるということになります…

■崩壊の予兆2 【演算エラーの発生】
 とりあえずは FSB 100MHz 設定で Windows2000 をインストールし, インストール後に FSB 133MHz に設定して使用してみました.そして 動作状況の確認のために SuperPI を実行したところ,演算エラーが 発生しました.

 このような場合考えられる原因としては,オーバークロック,CPUの 冷却不足,CPUの低電圧化のしすぎなどです.

 当初は問題なく動作していましたし,ASUS Probeで見ますと,CPU 温度は負荷を上げても44度前後です.動作クロックに関しては定格で 動作させていますので,問題がある筈はありません.

 また,なにげに負荷のやや高くなるソフトを使用していると, 『エラーが発生しました』と,一瞬画面にダイアログが表示され, 電源が落ちる現象も発生.根本的な解決を図らなければ,精神衛生上 非常によろしからぬ状況です.

■そして崩壊 【不意に電源断】
 説明の順番が前後しますが,メモリを交換,コア電圧を1.4Vに変更 という鉄壁の布陣で臨み,FSB 133MHz で再度 Windows2000 を インストールしてみました.すると,一通りドライバが読み込まれた後に 一旦画面がブラックアウトする部分で,唐突に電源が落ちてしまう ようになりました.ほぼ 100% の再現性です.

 その後 CPU 交換も含めてあれこれ試し,OSインストールは完了しました が,Mobile AthlonXP1800+ とサーマルコンポーネントの組み合わせで負荷の 高いソフトを動かすと,しばらくすると同じように電源が落ちてしまいます.

 正直言って,この状態は使い物になりません.当初は問題なく 使えていたのに…気分は激しくブルーです.

■そして試行錯誤
■原因の追及
 私が Athlon ベースの M/B を使用するのは,これが3枚目になります. Socket7 時代には,AMD製 CPU+VIA製 chipset 構成でかなり苦労した覚えが ありますが,Athlon ベースに移行後は,ここまで深刻なトラブルを抱えた ことはありませんでした.最近は安心かつ安定して使える環境になってきた なぁと実感していたのですが…

 さて,仮に K7DDR のハード的な故障であった場合,ベアボーンキットですの で,ケースさら送り返さないといけないのか…と,その労力を考えると少々気が 滅入りました. また,近場の店で購入した場合は箱に詰めて持っていき,店頭にて口頭で 症状を説明すれば良いのですが,通販の場合は症状の説明や交渉も大変 そうです.

 しかし,まずなによりも,原因も突き止めるための努力を行わず, ショップに『調子悪いでー』と,送り返すのは言語道断です.まずは 分かる部分から問題を切り分け,原因を探ることにしました.

■メモリ問題の調査
 殆どの場合,OSインストール中にブルースクリーンが表示されて 落ちるのは,メモリ周りの問題が原因です.例えば,メモリがきちんと スロットに差し込まれていなかったり,使用しているメモリの品質が 悪かったり,M/Bのチップセットとの相性が悪かったりする場合に 発生します.

 Terminator TU でもメモリ相性問題がややキツイことが知られていますが, 一般に,DDR メモリは SDRAM と比較して相性問題が激しく出る傾向に あるようです.また,私の周りのトラブル事例を見てみますと,VIA 製 chipset では問題が発生しにくいが,Intel や SiS 製 chipset では 特に相性問題に遭遇する確率が高いようです.

 今回使用した SAMSUN チップの DDR メモリは,ノーブランドに分類され るような低品質のものではありません.また,VIA 266Tチップセットを 使用した別の手持ちの M/B では問題なく利用できていました.その他, K7DDRでも,完全に利用不可ということではなく,FSB 100MHzであれば 問題なく利用できているという状況です.

 『×メモリ』とまでは言いませんが,K7DDR との組み合わせでは, メモリチップの微妙なタイミングのズレにより,所謂相性問題が発生 しているのだと思います.案の定,別のメーカー製メモリに変更した ところ,この症状はピタリと収まりました

■電源断問題
 最近の Asus 製 M/B には,Athlongがオーバーヒートした際に,CPU が自ら発する熱で焼けてしまわないように,一定温度を超えた際に ハード的に強制的に電源を落とす, C.O.P(CPU Overheating Protection) という機構が備わっています(詳しくは, What is ASUS C.O.P Technology?参照のこと).

 K7DDR の M/B でもこの機能が有効か等,きちんと確認したわけでは ありませんが,おそらく K7DDR でも,この機構が働いて緊急停止している のだと想像されます.

 しかし,Asus Probe で確認すると,CPU 温度はせいぜい44度. それにも関わらず,OS インストール時にはほぼ 100% の頻度で 電源が落ちますし,重いソフトを動かした際にも電源が落ちます. 少々腑に落ちないものを感じます

 原因として,以下の2つを考えてみました.

  • Mobile AthlonXP 非対応の M/B で使用しているための不具合
  • 本当にオーバーヒートしている

 まず前者を検証するために,手元に転がっていた SocketA CPU の AthlonXP 1900+(Palominoコア)を使用して実験を行うことにしました.

 最初に AthlonXP 1900+ にサーマルコンポーネントを取り付け,ノーマル のケースファンを使用し,回転数は Q-FAN コントロール下で使用してみる ことにしました.すると,Windows2000 のインストール時に,Mobile AthlonXP 1800+ と同じタイミングで電源が落ちます.また,落ちるタイミングでケース ファンの回転数は上昇していません.Q-FAN は,温度に応じて回転数を上昇 させる機構だと考えていたのですが….

 そのため,ハード的な障害を疑いましたが,一応 Q-Fan を disable にし, ケースファンを最高回転数で使用する設定にして試してみました.すると, 今回は何も問題なくOSがインストールでき,無事に起動しました(この間, ファンの発する轟音たるや,凄まじいものがありますが…).

 ちなみに,インストール後の定常状態での温度は,Asus Probe で見ると CPU が 51度,M/B が 47度です.

 次に,CPUに猛烈な負荷をかけて発熱を促すために, 『午後のこ〜だ』 で耐久ベンチを行いました.すると,5分も耐えられずに電源が落ちます. ちなみに Asus Probe で最後に読みとれた CPU 温度は,57度でした.そして 電源が落ちた後にすぐさまケースを開け,サーマルコンポーネントに 触れてみますと,触るのが苦痛に感じられる程の温度になっています.

 これらのことを踏まえますと,次のような事柄が推測できます.

  • ケースファンの回転数は,Q-FAN を設定していたとしても,CPU 温度と 連動して上昇しない.おそらくM/B 温度とのみ連動して回転速度を上げる (今回は試していないが,CPU FAN の Q-FAN設定は,CPU 温度と連動するものと 推測される)
  • AsusProbe の表示するCPU温度が AthlonXP 1900+ で 57度,Mobile AthlonXP 1800+で 44度であっても電源が落ちる.一定の敷居値を超えると 電源が落ちるわけではなさそうだ
  • 電源が落ちるのは,オーバーヒートによる C.O.P 機構発動によるものと 考えられる
  • 電源が落ちるのは Mobile AthlonXP を使用したための不具合ではない
  • AthlonXP 1800+(Palominoコア)をCPUファンレスで使用するのは危険
 次に Mobile AthlonXP 1800+ に再びサーマルコンポーネントを取り付けて 検証しましたが,やはり OS インストールの時点で電源が落ちます.Mobile AthlonXP を使用する場合,玄人志向の下駄を使用する必要があるために 背が高くなり,その結果,背の高いサーマルコンポーネント上部が FDD に 若干干渉するようになります.そのため,取り付け後にサーマルコンポーネント を手で少し揺する程度では分からない程度の傾きが発生しており,CPU コアに 密着していないのではないかと思われます.その結果,CPUの排熱がうまく 出来ずにオーバーヒートし,C.O.P が動作するということなのではなかろうかと 考えました.

一見うまく収まっているように見えます
ケースファンの前にスペースも空いており,空気の流れは良さそうです.
しかし…写真では分かりにくいかもしれませんが,若干 FDD に干渉します. そのため,フィンを1本曲げないとうまく収まりません.大幅に下側にずらせば OKそうですが,今度は PCI スロットと干渉してしまいます.

 電源が落ちた後にサマコンに触れてみますと,辛うじて触れる程度の温度上昇 に止まっています.Asus Probe の報告する 44度は妥当な線かとは思われますが, 下駄を使用した場合には実音度よりも低く報告されるという話があるので,あまり 当てに出来ないかもしれません.つまり,CPU の熱がうまくヒートシンクに伝 わっていない可能性もあるということです.

 また,C.O.P は CPU のコア温度によって直接トリガがかかるようになっている ようですが,BIOS や Asus Probe の表示する温度は,別のセンサーから読んで いるような感じもします(コア温度よりもかなり低く報告されるのはこのためだ と考えられますが,確認はしていません).

■そして解決
■メモリの問題を解決
 SAMSUN チップのメモリの使用はあきらめ,手持ちの PC2100 512MB DDR メモリの中から,巷で非常に評判の良い LEGACY 製 (Micron OEM?)および,比較的 評判の良い, NANYA製の CL2 DIMM をそれぞれ1枚づつ挿し,合計1GB構成で使用 することにしました.厳密には memtest86 等を使用してエラーレートを確認した 方が良いのですが,とりあえず FSB133MHzにて使用した場合でも問題なくWindows 2000 のインストールが完了し,動画編集などの比較的重い付加をかけた場合でも, 落ちなくなりました.

LEGACY製メモリ PC2100 DDR SD-RAM CL2 512MB
印刷は『Lei』
NANYA製メモリ PC2100 DDR SD-RAM CL2 512MB
印刷は『NANYA』
■演算エラー問題
 コア電圧を1.4Vに変更することにより対応しました.変更後,エラーが出ること は無くなりましたが,当初問題なく動作していたのが謎です.他の問題が絡んでいる 可能性も捨て切れませんが,結果オーライで良しとすることにします.

下駄のコア電圧 1.4[V]化は,左写真の赤矩形でマークした部分をパターン カットし,赤線で結んだ部分をショートさせます.
加工を施した写真.なお,上記説明では2つのピンを別々に GND に落とす 旨説明を書きましたが,このように隣同士をショートさせ,1本で GND に 落とす方法で行っても OK です.

■電源断問題
 サーマルコンポーネントのフィンを折り曲げてFDDと干渉しないようにする 手も考えましたが,CoolerMaster製の DORACO-XP というCPUクーラーを使用する ことにしました.ちなみにこのクーラーは大型のファンを使用し,また,温度に 合わせて回転数を制御するため,静音ファンに分類されるものです. 結果,すこぶる安定し,OSのインストールおよび各種ソフトを使用した場合でも 問題なく動作するようになりました.

 問題はファンが1つ増加したことによる騒音の増大ですが,騒音と安心とを 天秤にかけた場合,安心の方が重く感じられため,若干の騒音の増加には目を つぶることにしました.

 ちなみに,DRACO-XP を使用した場合の CPU および M/B 温度は,それぞれ 定常状態で 39度,50度です.そして「午後のこ〜だ」で耐久ベンチ10分間 を行った際には,それぞれ 43度,54度まで上昇し,これ以上上昇することは ありませんでした.

CoolerMaster DRACO-XP
ヒートシンクは 80x68x37mm,ファンは 70x70x15mmサイズ.ファンの回転数は 内蔵する温度センサにより 2200〜4300rpmに可変.騒音は 26〜38[dB].エアフロー は最大37.54[CFM]とのこと.
対応CPUは,Duron 1.7[GHz](1.3[GHz] OKってことです),AthlonXP は Throughbred コアで 2600+まで.Palomino コアで 2200+ まで.Socket370 であれば,Pentium3/Celeron で 1.6GHzまで.
AMD 純正のファン(BOX版に同梱されているファン)と比較すると一回り大きい.
ちなみにM/Bから電源を取るためにはケーブル長が足りないので,延長ケーブル必須.
ソケットの爪3つで固定するタイプ.取り付けやすいように,マイナスドライバで 押し込むための引っかけも付いている
フィンはこのような感じ
裏面にはシリコングリスが塗布済み.しかし,一旦剥がして塗り直した方が良い
Cooler Master DRACO XP は,比較的大きな CPU クーラーに区分 されるものですが,K7DDR には余裕で収まります.
このように,CPU ファン上部にも充分なスペースが確保できます.
ファンの電源は M/B から取らず,電源から取ることにしました.
■リセットスイッチの増設
 試行錯誤中に,度重なるハングアップ(電源ON/OFFも利かない)の度に ケースを開けてリセットピンをドライバでショートさせるのに嫌気がさし, リセットスイッチを増設することにしました.とは言え,スイッチは剥き出 しの上に配線の取り回しも美しくないので,現在は暫定的に取り付けてある という感じです.

 いずれ機会を見つけて綺麗に加工してみようと思っています.

手っ取り早く追加するために,このような既製品を使用することに しました.
M/B 上のリセットピンと接続します.左に伸びている青白の2本の ラインがそれです.
ケーブルはケース前面の穴を介し,外に引き出します.フロント パネル取り付け時には,下部の吸気口からスイッチを引き出します.
■画面の解像度を1280x720以上に設定できない問題の解決
 OS インストール後,付属 CD-ROM からビデオドライバをインストールした 際に,何故か再起動すると 1280x720 以上の解像度が選べなくなるという問題 が発生しました.なお,Windows ですと,使用モニタが利用できないモード (解像度)を選択できなくする機能が付いておりますが,これが原因ではあり ません.再起動前は設定も出来,ビデオチップのモード一覧には表示されている にも関わらず,再起動すると高解像度表示が利用できなくなります.

 あれこれ試行錯誤しましたが,CD-ROM 挿入時のトップメニューからドライバ のインストールをすると,何故かこういった状態になることがあるようです. 解決方法としては,デバイスマネージャーで CD-ROM 内のディレクトリを指定し, 直接ドライバをインストールと良いようです.

■まとめ
 正直,これほどハマるとは思っていなかっただけに,かなり大変でした. しかし,Q-Fan の機構についてや,Asus Probe (そしておそらく BIOS も)で 表示される CPU 温度は,あまり当てにならなさそうであるという発見もあり ました.

 今回使用したパーツ類は一部イレギュラーなものも含まれていますので, 品質の良いパーツ(メモリ),正式サポートされている CPU,CPUクーラーを 使用していれば,おそらくこういった事態に陥ることはまれだと思います.

 安心確実に安定したマシンを K7DDR を使用して組む場合,これらのことに 留意してパーツ選択をした方が良いと思われます.メールで教えて頂いた お話では,一時期市場に出回っていた,サラブレッドコアの AthlonXP 1700+ (コア電圧が 1.5[V]のタイプ)であれば,至極発熱も少なく,良い感じに安定 しているそうです.


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