BKi810E v3.3A と v7.3A の違い

■組み立てに関して
 組み上げには, M/B 故障のために埃を被っていた,BKi810 v3.3A のケースと電源を 利用しました.なお,本ページでは,組み立て方法に関しては 詳しく言及しません.この辺りの話に関しては, こちらのページを参照してください.

 本ページでは,v3.3 との違いに関してのみ記述することにします.

■BKi810E v3.3A との違い
■M/B 全般に関して
 一連の BKi810 シリーズは,M/Bサイズおよび背面コネクタの配置は,独自仕様の ものとなっています.基本的に v7.3A もこれを踏襲しています.

 M/B のサイズは これまでの BKi810 のものと同一です.

 このジャンク品には,ATX電源を流用して使用するための電源コネクタ 自作用パーツ,説明書が同梱されていました.しかし,今回私は BKi810 用電源を使用することにしており,同梱されていたコネクタは使用して いません.なお,別の BKi810 マシンでは,私もATX電源を外付けで使用 しております. 詳しくはこちらのページを参照 してください.

 上が v7.3A,下が v3.3A(BKi810)のM/Bです.このように,部品レイアウト も酷似していますが,よく観察すると一部異なることが分かると思います.

外部端子のレイアウトは全く同じです.
M/B 上の PS/2 コネクタ上に,V7.3 とシルク印刷されています.
ぱっと見て大きく異なるのは,この部分のパーツのレイアウトと使用チップ.
そしてCPUソケット周りのパーツ配置とコア電圧生成部(?)周りの回路の違いです.

■外部端子裏側付近
 それではまず,外部端子の裏側付近を見てみましょう.

 NIC の使用チップを見ると,v3.3A では SiS 9000 と PCNet HT2001 の組み合わせ でしたが,v7.3A では,RealTek 製の RTL8139C と Lankom LF-H50X(物理層. 写真では左上の黒い立体的なチップ) の組み合わせに なっています.

NIC関係のチップ横には,IT8712F-A が鎮座しています.これは SuperI/O チップであり,シリアルやパラレルポートの制御を行うほか,温度監視も 行います

LF-H50Xの横には MAX3243C が実装されています.これは RS232C (シリアル)用 のチップです.チップのすぐ左には "COM1" とシルク印刷されており,1つピンを 欠いた9ピンのランドが立っています.これはシリアルポート用の端子であると考えられ, 標準的なコネクタに変換するケーブルを自作する必要がありますが,これまで BKi810 にシリアルポートが無いことによって不便を感じていた人には朗報でしょう.なお,モデムカード用のポートはそのまま残されていますので,シリアル ポートとして2ポート使える勘定になります.

モデムチップ付近を観察すると,UTC TDA2822 というチップが見えます (左写真中の電解コンデンサの林立した中). このチップはオーディオ用のアンプチップで,あり,チップ右上の4ピンの 白いコネクタが内部スピーカー用端子のようです.4ピン出ていますので, ステレオ(2ch)対応だと思います.

モデムチップの横にはモデムカード用のランドがあります.
配列は従来のBKi810と同じのようですので,このようにモデムカードを 使い回すことができます.

写真左上のネジ穴の右側近くにあるのは SPDI/F の端子です.ピン配列 等は従来と同じです.詳しくはこちらを参照してください.
写真下側の白いコネクタは FDD用ですが,その上側に黒いランドが見えます. この向かって右側部分の結線されていない部分はフロントUSB端子であり, BKS630と同じピン配置だそうです.

■フロント側付近

BKi810 v3.3A

BKi810E v7.3A

ランドこそあるものの,圧電ブザーは実装されておらず, 起動時の『ピッ』音はスピーカーを接続しないと(背面パネルのスピーカーout でもOK)出ません.
CPUソケットの爪の下には,パターン保護用のシールが貼られています. 最近はCPUクーラー固定用金具のテンションが高いため,ドライバを使用して 取り付けようとして『バキッ』と,行ってしまう事故が多いようですが, このような対策がなされていると『多少は』安心できます.

BKi810 v3.3A

BKi810E v7.3A

v7.3A は"Phoenix BIOS"と書かれたEEPROMが搭載されていますが, 起動すると見慣れた AWARD BIOS 画面が表示されます.

BKi810 v3.3A

BKi810E v7.3A

コア電圧生成部(?)周りは,回路がかなり変更になっています.
■BKi810E v3.3A との違い
 以上のことから,BKi810E v3.3A との違いを簡単にまとめると,以下のように なります.
  • Ethernet コントローラが RealTek製 RTL-8139に変更
  • Super I/O チップ(温度監視も含む)が IT8712F に変更
  • オンボードにシリアルポート(COM1)が増設.ただし背面コネクタ無し
  • オンボードの圧電ブザー撤去
  • 内蔵スピーカー用端子(2ch?)がオンボードに新設
  • CPUソケットの爪の部分に,パターン保護用シールが貼付済
  • メーカー公式サポートCPUのクロックが上昇(Celeron:800MHz→1.1GHz,Pentium3 :800MHz→1.0GHz)
  • VCore生成回路(?)周りが一新
  • 各所に電解コンデンサが増加

 一見地味なマイナーチェンジに止まっていますが,シリアルポートの新設や, 公式サポートCPU クロックの上昇は嬉しいかも.

■まとめ
 v7.3Aは,製造元の Web Page にラインナップされていたため,その存在 こそ確認されていたものの,国内では見かけることはありませんでした. しかし,今年(2003年)に入って,ジャンク扱いの M/B のみという形態で, 限定的ではありますが,国内にも出回りました.Faith で 10枚程度販売されていたのが確認されていますが,メーカーが抱えていた 保守用としてストックされていたものが,その他の店でも販売されている 可能性もあります. 今回入手した物は使用した形跡がなく(修理上がり品の可能性もありますが), とても状態が良いものでした.TV Out は PAL 仕様に設定されていました ので,日本向けではなく,インドやタイのような PAL を使用している東南 アジア向け,もしくはヨーロッパ向けにストックされていたものが放出 されたのかもしれません.

 今年に入り,v7.3A の M/B 販売ということで, BKi810 は新たな展開 (と,書くほど大げさな話ではありませんが)を見せました.とは言え, Socket370 ベースの PC は,今まさに終焉の時を迎えつつあります. 理由は至って簡単で,時代は Socket478 や SocketA が全盛.そして 最近は Socket940 (Opteron) も盛り上がる気配があります.一方 Socket370ベースの CPU は新規開発が止まり,現行製品も生産中止はいつに なるか…と,いった段階です.

 また,BKi810 で安心して使用できる Coppermine コアの CPU は 店頭から姿を消し, 現在は Tualatin コアのものばかりです.BKi810 に明るい未来は あるのかを考えると,答えは『否』でしょう.しかし,改めて考えて みると,ごく普通の Net 端末,文書作成用 PC としては,1GHz 近くの CPU と 512MB のメモリを搭載していれば,充分すぎる性能を持つで しょう.そういった意味では,故障の問題さえクリアできれば,あと 5年くらいは実用的に使えるかもしれません.

 ちなみに,店頭で新品を販売している所を目にすることはまず無くなりましたが, 中古品,新古品の流通は再び活発になって来ているような感じがします. 特に当サイトのアクセスログを見ていて感じるのは,"BKi810" をキーワード として検索した結果飛んでくるアクセスと,海外からのアクセス が急増しています(オンライン翻訳サービス経由でのアクセスも激増). 『私の BookPC 壊れたので直してくれ』と,米国からメールが来たときには 閉口しましたが,ヨーロッパ圏では今でもユーザーが多く,確認 できた範囲では,イギリス,フランス,デンマーク,スエーデンのサイト からはリンクもして頂いています.ある意味,日本のようなスペック至上 主義ではなく,使える物は多少古くても使い倒すという文化が 根強いのかもしれませんね.

 v7.3A は, BKi810 の有終の美を飾るに相応しいマイナーチェンジが 行なわれておりますが,不満も若干残ります.拡張性が無いため,USB2.0やIEEE1394 が搭載されていたら…と,残念でなりません.また,せめて Tualatin コアに 対応してくれていたら,パフォーマンス面でも,もう少し延命できるのですが…. v7.3Aで下駄を使用しての Tualatin コアCPUの動作検証は,いずれ試してみようと 思います.


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