静音化への挑戦

■動作音の静粛化を目指す
■BKi810の致命的な欠点
 BKi810 は機能,値段,スペースのバランスの取れた非常に良いマシンです.そしてパフォーマンスに関しても,小型のPCでありながら,多少ヘビーな使い方(DVD Videoの再生など)にも十分対応可能です.そのため,省スペース性を生かして24時間運転を行うサーバとして利用することを考えたり,TV出力を持つことから,リビングPCとして使用することを考えて購入する人は多いでしょう.しかし,それらの目論見は,購入後はじめて BKi810 の電源を入れたときに,脆くも崩れ去ってしまう人は多いでしょう….

 BKi810 の大きな問題点は,『動作音がうるさい』です.言葉で表現すると,『轟々』と表現するのがピッタリな音で,かなり大きな音を発しています.そのため,この騒音のためにBKi810の利用環境は著しく制限されてしまっています.

■騒音の発生源
 一般にPCの騒音の発生源は,各種のFAN,そしてディスクです.BKi810 の場合は騒音の原因は深く追求するまでもなく,電源FANの音であることはすぐに分かります.この部分は薄型の 6cm FAN をかなり高回転で回し,ケース内の熱せられた空気を電源部を通して強制的に排気するのに使用されています.また,単に FAN の回転音が大きいだけではなく,風切り音も相当大きく,ケース自身が共鳴しているのではないかという程の音がします.

■騒音対策
 ファンが発生させる音を抑えるためにはいくつかの方法がありますが,大きく分けて以下のような2つの方法に分かれます.

  • 空気を流れやすくする
  • 回転数を落とす
 前者は,空気の通り道をきれいにし,スムーズに風が通るようにするということです.このようにすることにより,風切り音が軽減されます.具体的には,電源ファンガードをより抵抗の少ないものにするのようなことが効果的です.

 後者は,ファンの騒音は回転数の3乗に比例することから,回転巣を落として静粛にしようということです.具体的には,ファン自体に供給する電源電圧を落としたり,定格で回転数の低いファンに交換するなどが行われます.

 今回はこの両方を行い,電源ユニットの外部に静音ファンを取り付けるということを行いました.ただ,気をつけなければならないこととして,BKi810 は基本的にこのファン1つでケース内および電源ユニット内の空気の循環を行っているため,ファンからの排気量が少ないと,冷却効果が下がります.その結果,廃熱が十分に行われず,CPUの熱暴走や発火を引き起こす可能性があるということです.ファンの選択の際には騒音の問題だけではなく,この辺りも検討してファンを選択しなければなりません.

■電源ファンの交換
■電源ファンの交換手順
 電源ファンは以下のように交換します.なお,以下の写真は V3.3A の場合であり,V1.6 の場合は別の方法でファンに電源を供給することが可能です.これについては後述します.

まず電源部を外す.当然ながらコンセントから抜き,M/Bに接続されているコネクタも抜いておく.
電源部には,シリアルナンバーが印刷されているシールが貼られている.これを剥すと保証は無くなる.つまり改造の結果発生した損害はメーカーは追わないということだ.

電源部を改造する場合,最悪発火の危険性もあるので,自信がない場合,責任が負えない場合は行わない方が良いだろう.

シールを破り,ネジを外して電源を分解.これでもう保証は無くなる.
電源のファンを外す.
ハンドニブラーを使い,ファンのゲージを全部取る.ここで出た金属片や金属粉はショートの危険性があるので,電源部からきれいに除去しておくこと.
交換用の SANYO製 6cm 静音ファン.オウルテックの製品であれば,入手しやすい.ただし,値段は多少高め.この他,松下/SANYOの薄型 6cm 静音ファンもあるが,薄型の方が高回転であり,騒音も 10[dB] ほど上がる.
ファンはこんな感じ.回転数を計測するセンサー付き.
静音ファンは定格電圧 12[V] で電流は 0.06[A] .
元々のファンは,定格電圧 12[V] で電流は 0.16[A] .一般に,電流量が多いほど回転数も多くなり,騒音は回転数の3乗に比例してうるさくなる.
今回使用するファンは,元々使われていたファンよりもかなり厚めなため,電源ユニットに内蔵することは不可能.また,厚さがあるため,ファンの回転数が減っても十分な風量は確保できそうだ.
元々のファンは,電源ユニットのボード上にコネクタ止めされ,そこから結線されている.コネクタを抜いても良いのだが,今回は配線を切断してファンの配線に直結するようにした.
新しく付けるファンの方はセンサの端子である黄色を短く切断し,残りの2本(+12[V],GND (0[V]) )はちょうど良い長さの所で切断しておく.
ファンと電源のファン電源供給用の配線を直結する.電源が側の赤をファン側の赤に,電源側の黒をファン側の青に接続する.
本当は熱収縮チューブのようなもので絶縁した方が見栄えが良いが,とりあえず電工用のビニールテープで絶縁した.線がショートしていたら目も当てられないので,絶縁はきちんと確認しておくこと.また,電源ユニットはかなり熱くなるので,低い温度ですぐに溶けるようなテープは使用を避けた方が良い.
新しいファンを電源ユニットの外側にネジ止め.ファンの配線を通すために切り欠きを作っておくと,ケーブルの取り回しが楽.バリやケーブル等がファンの回転を妨げないかを確認しておくこと.

電源ユニットをシャーシに取り付ける.外側に飛び出してファンが固定されているのが分かる.このままでも使えるが,やはりファンが剥き出しのままというのはあまり美しくない.
そこで,ファンにガードを付けることにした.ファンガードは200円〜300円くらいで売られている.
ファンのガードを固定するとこんな感じになる.見た目にも良いし,異物の巻き込みもある程度は防ぐことが可能.
使っているところを斜め後ろから見ると,こんな感じ.これで完成.
■v1.6の場合
 v1.6 の場合,M/B上にセンサ付きのファンを接続するためのコネクタが, CPU ファン用の他にもう1つ用意されています.ここに電源ファンのコネクタを接続し,回転数などもモニタできるようにするのも良いでしょう.


BKi810 v1.6 には,CPUファン接続用の端子の横に,センサ付きのファンを接続する端子があります.
ここに,静音電源ファンの配線を切らず,接続します.
配線は電源ユニット内を通して出します.取り回しはうまくやりましょう.(写真は単に接続しただけの状態)

■効果の検証
■騒音の低減について
 測定器を用いて厳密に計測しようかとも思いましたが,音圧レベルで言われるよりも実際に聞いてもらった方が違いがよく分かるのではないかと思い,マイクで音を録音することにしました.

 以下の音は,電源のファンから約 5cm 程離した所にコンデンサーマイクを置いて録音したものです.録音状態が悪く,音質的に多少問題があります(排気が直接当たり,一部ブレスノイズのような感じになってしまっている)が,ファン交換後劇的に改善されたのが分かると思います.

状態音声ファイル(MP3形式)
電源ファン交換前音声
電源ファン交換後音声
CPUファンの音(Windy Stream)音声

 交換前は,正直言ってここまで改善されるとは思いませんでした.新しい電源ファンはほとんど音を発していない感じです.電源ファンの音がしなくなった結果,今度は逆に CPU ファン(Windy Stream) の発する高い音が気になり始めました.

■冷却効果の変化について
 ファンの交換後,電源ファンの回転数の低下や取り付け位置の変更により,冷却効率が低下している可能性があります.その結果 CPU や M/B の温度上昇が激しくなったとしたら,パフォーマンスを取るか,静粛性を取るかの悩ましい問題になってしまいます.

 新しい電源ファンは厚みがあるため,回転数が以前より低下したとしても,フィンが掻き出す空気の量はそれほど変わらない筈だと書きました.それでは実際にどのくらいの温度変化があるのかを見てみましょう.

状態CPU温度 [度]M/B温度 [度]
電源ファン交換前4230
電源ファン交換後4231

 上記の結果は,これまでと同様,PentiumIII/750MHz を使用し,FDD を取り外した状態で DVD 再生を30分行った後での計測結果です.

 M/B 温度が1度上昇していますが,ほとんど誤差の範囲内と言っても良いでしょう.今回のような形で電源ファンを交換しても,冷却という面では特に問題がないと言えそうです.

■まとめ
■BKi810が静かに動くということ
 本ページの冒頭にも書いたように,BKi810 は自らが発する凄まじい騒音のため,利用形態にかなりの制約がありました.私自身,夜中に立ち上げるのは憚られる感じでした.しかし,静音化したことにより,『ちょっと使おうかな』というときにも抵抗なく立ち上げるようになりました.たかが音ですが,かなり心理的に影響するものです.もしかしたら,PC は CPU を多少パフォーマンスアップするよりも,無音化/静音化した方がはるかに快適に使えるようになるものかもしれません.

 しかし,電源ユニットを改造するというリスクを背負ってまで静音化すべきかどうかに関しては,意見が分かれる所だと思います.個人的な意見としては,静音化はとても魅力的ではあるけれど,少しでも改造に対して『怖いな』と感じた方や,電源ユニットの改造の結果,どのようなトラブルが発生する可能性があるかを想像できない方に関しては,行わないほうが良いと考えています.BKi810 を壊してしまったり,さらに深刻な被害が発生してしまったら,元も子もありませんから.

 今回は電源ファンの交換のみを行いましたが,その結果 CPU ファンの音がうるさく感じられる結果になりました.今後はCPUファンの音に対しても対策をとり,さらなる静音化を目指すことを考えています.


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