USBを使用しての拡張[5]

■持っておきたい周辺機器:プリンタ
■PCとプリンタの切っても切れない関係
 私の自宅に,PC なるものがはじめて導入されたのは 1982年頃のこと です.当時最新鋭の『ビジネスパソコン』,NEC製 PC-8801 という Z80 8bit CPU を搭載したマシンでした.その後購入したデスクトップマシンを列挙し ますと,Macintosh 512K, Macintosh Plus, MacintoshII, NeXTcube, FMV-575SX, 自作 PC 数台(ベアボーン含む)といった感じになります.

 ちょっと濃い遍歴を辿っていますが,必ず購入 している周辺機器があります.それは『プリンタ』です. NEC PC-PR406 -> Apple ImageWriterII -> LZR650 -> Canon BJC210 -> EPSON MJC-830C -> Canon LBP-320 といった具合に,ふと振り返ると かなりの台数購入して来ました.常に所有しているマシンから何らかの 方法で紙に印刷できるようにしています.

 最近はPCのネットワーク接続が一般的であり,インターネット端末としてのみ 使うという人も多いかもしれませんが,やはり何かと紙に出力したいと思う 機会は多いと思います. 流石に昔のように,『PC はワープロ代わりに使用し,最終出力 は紙に印刷して渡す』と,いう風潮はなくなりました.しかし,PC を 使用せずに閲覧する可能性のあるドキュメント作成用であるとか, 風呂敷残業の友 :-< としてのプリンタの存在は,無くてはならないものに 近いものを感じています.また,家庭向け用途と しては,年賀状印刷などに多用している人も多いでしょう(私の知人は,年賀状 印刷のためだけに PC を使用していたりします…).

 OA化(死語?)による『ペーパーレス化』が叫ばれて久しいですが, 印刷物の方が 何かと都合が良かったり,紙にしか実現できない事柄も多々存在します.Adobe の社長が Acrobat (PDF) の紹介の際に,『ライバルは紙だけだ』と, 言った話は有名です.一昔前には,OA化の推進により紙の消費量が少なくなる といった見通しがなされていました.しかし,実際には急激に増えてしまった といった事実も,これを裏付けているでしょう.

■プリンタの選び方
■プリンタに求めること
 どのようなものを印刷するかという用途にも依りますが,プリンタを新規に 購入するとしたら,主に以下のような事柄を考慮して選択すると良いでしょう.

  • 本体の価格
  • ランニングコスト
  • 印刷方式
  • 設置サイズ
  • 印刷可能な用紙サイズ
  • 印刷スピード
  • 解像度/印刷物の綺麗さ
  • 静粛性
  • その他機能

■写真画質は本当に必要?
 ごくごく当たり前の項目を列挙しましたが,意外に『価格・印刷物の綺麗さ』 のみに着目して機種選定する人が多いような印象を受けます.特に『印刷物の 綺麗さ』に関して言及すると,おそらく日本国内のみの事情だと思いますが, 通常の印刷物よりも,写真の印刷品質を重要視されているような印象を持ちます.

 そのためだと思いますが,雑誌記事や店頭印刷サンプルなどを見ますと, 『こんなに綺麗です!粒状感は殆どありません!』と,専用フォト 用紙に印刷したサンプルが並んでいます

 しかし,ちょっと待ってください.

 確かに印刷サンプルは,一歩間違うと銀塩写真の同時プリントよりも綺麗な仕上がりに見える ものが並んでいます.『これ程のクオリティのものが自宅で印刷できるなんて!』 と,思って即座に購入したくなる感覚も分からなくはありません.しかし,ここ で『写真画質の印刷を大量にするか』を自分の用途に照らし合わせて 考えると共に,ランニングコスト,印刷スピードなどもじっくり吟味した 方が良いと思います.

 確かに写真画像を『フォト用紙』に印刷すれば,店頭で見たものと 同等の品質のものが得られるでしょう.しかし,フォト用紙はかなり高価ですし, 写真画質で印刷を行うと猛烈にインクを使用すると共に,膨大な印刷時間が 必要になります. 用紙代としてA4サイズ 1枚辺り100円近くのものを必要とし,そして最高品質で 1枚印刷するのに5分以上かかってしまうプリンタもざらにあります.

 『写真はたまにしか印刷しない』『普通紙(PPC用紙)に印刷することが多い』 のような場合は,普段主に利用する用途の印刷サンプルを一度確認してみた方が 良いと思います.かく言う私の場合,自宅で印刷する対象は,各種 ドキュメントや Web Page がメインであり,普通紙に印刷することが殆どです. この場合,普通紙にワープロから印刷したサンプル(カラーが必要な場合はグラフ 等をカラーで印刷した物)を確認するとベターだと思います.

 とは言え,私も『写真画質の綺麗さ』は捨てがたいものがあります.フィルム スキャナで取り込んだ物や,デジカメ画像を印刷することがたまにあります. 欲張りな意見ですが,可能であれば両立できる物.両立できない場合は, 写真画質が納得行く程度の品質を保ちながら,普段の利用に満足できる品質の物と いった観点から,印刷品質をチェックするようにした方が良いと思います.

■用途に合った仕様を満たしているかをチェック
 次にチェックする項目としては,用途に合った仕様を満たしているかです.

 まず最初に用紙サイズですが,大抵の人は A4 サイズ or Letter size までの 印刷可能なプリンタであれば,ほぼ日常的な使用では問題ないでしょう.また, 年賀状印刷等を行う場合には,はがき印刷に対応しているかもチェック項目の 一つです.EPSONのプリンタのように,写真を印刷するためにロール紙に対応して いたり,EPSONやCanonのフラグシップモデルのように,CD-R のラベルプリントに も対応しているなど,特殊な印刷形態にも対応できる場合もありますが,これら も『必要であるか否か』で判断すると良いでしょう.『あればあったで うれしい』機能ではありますが,それをメインに考えてしまうと,別の部分 (例えばコストなど)が犠牲になる場合があります.

 次に印刷時に問題になる事柄として,解像度/印刷物の綺麗さ,印刷スピード, 静粛性等が挙げられます.用途にも依りますが,解像度は(写真画質を求めなけれ ば)600dpi(dot per inch)〜1200dpi程度でも充分です.また,印刷物の綺麗さは 印刷スピードとも関係してきますので,普段利用するシーンを考えて選ぶと良い でしょう.なお,大抵のプリンタは印刷品質を選択可能であり,品質をあまり求め ない場合,『試し刷り』のようなイメージで高速に印刷するモードを備えています.

 そして意外に無視されがちであり,実運用時に大問題となりがちなのは,その 静粛性です.なかなか店頭で試してみるわけには行きませんが,評判を調査し, 印刷時の騒音や振動に関してチェックしておいた方が良いでしょう.流石に 最近は轟音を立てるプリンタは少なくなりましたが,パソコンラックの最上段に 設置した場合,振動でラック自体がゆっさゆっさと激しく揺れるようなものもあります. 特に深夜に印刷することが考えられる場合には,要チェック.

 そして設置サイズ.設置面積に関しては自明だと思いますが, 店頭でパッと見て選んだだけという場合は,ちょっとした盲点があります. プリンタは印刷時に本体に給紙し,また,印刷物を排紙する必要があります. 本体はコンパクトであったとしても,A4用紙を上から給紙し,前面に排紙する ような場合,意外にスペースを取ってしまったり,設置場所が制限されてしまう 場合があるので,注意が必要です.

■レーザプリンタとインクジェットプリンタ
 一昔前は熱転写,ドットマトリクス,昇華型,レーザー,インクジェット 等,様々な印刷方式のプリンタが店頭に並んでいました.しかし, コンシューマ向けに関してはかなり淘汰が進み,現在家庭用として売られている ものは,レーザーとインクジェットの2タイプに絞られてきました.

 これら2種類の印刷方式に関して簡単な解説をしますと,レーザー方式 は感光ドラムの印刷したい部分に帯電させ,トナーと呼ばれる微細な粒を吸着させ, そして熱で印刷用紙に転写する方式です.最近はカラー・レーザープリンタも 廉価になって来ており,ハイエンドユーザーであれば十分購入可能な価格帯に まで降りて来ました.機構的には,モノクロプリンタはトナーが黒一色なのに 対し,カラープリンタは Cyan, Magenta, Yellow, Black と4色のトナーを利用 する部分こそ異なりますが,基本的な構造はほぼ同じです.

 一方インクジェット方式は,インクタンクに納められたインクを紙に 直接定着させて印刷を行います.モノクロプリンタは黒一色ですが,カラー プリンタは数種類のインクを利用します.色数はメーカーや機種によって異なり ますが,最近は微妙な色調も表現するために,多色化が進んでいます.例えば EPSON 等は 7色ものインクを使用します.

 それでは改めて,レーザプリンタとインクジェットプリンタの特徴を 簡単に挙げてみます.

レーザープリンタの特徴:

  • 印刷が高速
  • カラーの印刷品質がインクジェットに劣る(使用するトナーによる色再現性の限界)
  • 消費電力が多い
  • 構造が複雑なため高価
  • 印刷物に耐水性がある

インクジェットプリンタの特徴:

  • 印刷が遅い
  • カラー印刷が得意
  • 構造が簡単なため廉価
  • (カラー印刷の場合,レーザープリンタと比較して)ランニングコストが安い
  • 印刷物に耐水性が無い/乏しい

 個人的な意見ですが,1台でオールラウンドにこなそうと考えているので あれば,インクジェットプリンタの良いモデルを.モノクロ(グレースケール) の配布物を自宅で頻繁に作成するような場合,モノクロレーザープリンタ の方が何かと便利だと思います.『カラーレーザープリンタは万能選手に ならないの?』と,いう疑問も出るかと思いますが,グラフや図などのカラー 印刷には問題ないのですが,写真画像の印刷には不向きです.

■インクジェットプリンタの印刷方式
 一口に『インクジェット』と言いますが,その方式はコンティニュアス 方式(業務用プリンタに採用されているものがある.常にインクは噴射しており, 電荷制御でインク粒を偏向させ,紙に吸着させる)および, オンデマンド方式(必要に応じて紙に直接インクを噴射)の2種類に分け られます.そしてコンシューマ向けの製品はほぼ全てオンデマンド方式です.

 そしてオンデマンド方式は,インクの噴射方式で大きく分けて2種類,少し 細かく見ると,『ピエゾ方式』,『サーマルインクジェット方式』, 『バブルジェット方式』の3種類に分類されます.

 まずピエゾ方式ですが,原理は至って簡単で,ヘッドにインクを充填し, ピエゾ素子を用いてノズルから押し出す方式です.ちょうどスポイトに圧力を 加えることにより,先端から内容物が押し出されるのと同じ原理です.射出する インクの量を可変にしやすいというメリットがある一方,ヘッドの仕組みが複雑 なため,高コストになるというデメリットがあります.EPSON 製プリンタ等に 採用されています.

 次にサーマルインクジェット方式ですが,これはヘッド部にヒーターを取り付け, 加熱することによりインクに気泡を生じさせ,その圧力でノズルからインクを射出 する方式です.ヘッド構造が単純なため安価であり,ノズルを増やしやすいという メリットがあります.HP(ヒューレット・パッカード)製プリンタ等に採用されて います.

 最後にバブルジェット方式ですが,これは Canon が方式名を前面に押し出して 製品を売っているため,耳にしたことのある人が多いと思います.構造的には サーマルインクジェット方式とほぼ同じですが,ヒーターの位置と数が異なります. ピエゾ方式とサーマルインクジェットの中間的な特徴を持っているため,メリット は両者の中間的なものであり,インク量をピエゾ方式程ではないが可変にしやすく, ノズルをサーマルインクジェット方式ほどではないが増やしやすいというものを 持っています.
 昔 Canon の研究員が,たまたまインクの入った 注射器の針の上にハンダゴテを落としてしまい,そのときに勢いよくインクが 飛び出したのを見てこの方式を思いついたという逸話を聞いたことがあります.

 なお,ここでインクジェット方式に関して詳しく解説したのには理由が あります.ピエゾ方式とサーマルインクジェット/バブルジェット方式の 2種類の方式のメリット・デメリットの部分で,『ヘッド構造』の話を しました.前者方式はヘッドが構造が複雑で高価であり,後者方式は単純で あるため安価であるという部分です.『構造はユーザーには関係ないヨ』や, 『でもプリンタ本体はどのメーカーも同じくらいの値段だよね』と,いう 突っ込みがありそうですが,実はこの部分に,非常に重要な事柄が隠れています.

 具体的に書きますと,前者方式は EPSON が採用しており,高価になるヘッド 部分は本体内蔵.インクタンクのみ交換式です.後者方式は HP, Canon が採用 しており,機種にもよりますが,インクカートリッジはインクタンクとヘッドの 一体型になっています.そのため,後者方式を採用しているインクカートリッジ は前者方式のものに比較し,高価になります.

 一見前者方式の方がランニングコストが安くなりそうで良く見えますが, ここに落とし穴があります.ピエゾ方式の場合はどうしてもインク詰まりを 防ぐために,定期的にメンテナンスをしてやらなければなりません.具体的 には,ノズルの目詰まり等を防ぐためにインクを定期的に噴射し,ノズルの部分に 古いインクが乾いて固まらないようにしなければならないということです.

 また,比較的頻繁にプリンタを使用する場合は良いのですが,長期間 使用せずに久しぶりに使用しようとしたたら,インクが乾いて目詰まり を起こしていたなんてこともあり得ます.このような場合,サーマル インクジェット方式の場合はインクカートリッジの交換で新しいヘッド になりますが,ピエゾ方式でかつ,ヘッドが本体内蔵の場合,修理に 出さなければなりません.目詰まりと言っても画質が若干悪くなるレベル のものから,見るも無惨に印刷されるレベルまで様々ですが,何年か前に 聞いた話では,この修理には1万円近くかかるとか.

※最近流行の写真画質追求の結果,ヘッドが複雑化/高価になったためか, サーマルインクジェット方式を採用したプリンタであってもヘッドが 本体内蔵式になっているものもあります.例えば Canon の最近の機種 などがそれです.その結果,ピエゾ方式と同様,定期的なメンテナンスが 必要であり,目詰まりを起こした場合は修理扱いになります.

 最近は以前よりインクが詰まりにくいような工夫がされていますが, ピエゾ方式のプリンタを使用しており,かつ,年に数回印刷する程度の 使用頻度の人の場合,印刷をしなくても,たまにプリンタの電源を入れて やるのが良い でしょう.EPSON 製プリンタを使用した経験のある人でしたらご存知の ことと思いますが,電源を入れた際にインクの空打ち :-) をするように なっており,ヘッドのクリーニングをします.結構な量噴射させるよう で,私が以前使用していたプリンタでは,プリンタの使用頻度の低さも あって,空打ちだけでインクの殆どを使い果たしてしまいました :-P

■インクジェットプリンタで使用するインクの種類
 インクジェットプリンタを使用場合,そのインクの種類に関しても 注意を払った方が良いでしょう.

 インクジェットプリンタ用のインクは,大きく分けて染料系顔料系の2種類に分けられます.これらはインクの性質が異なります. 大雑把に説明すると,色素が液体(水,アルコールなど)に溶解するものを 染料,溶解し ないものを顔料と言います.つまり,紙にインクをドロップした場合, 染料系のインクの場合は紙に浸透したものが乾燥して色が定着します. 顔料系の場合,色を表現する色素は液体と共に紙に噴射されますが, 紙に染みこまずに表面に貼り付くというイメージになります. 概念的な例えですが,染料系インクは 水彩絵の具,顔料系インクは色の付いた微細な粉末を水に混ぜたものと考 えると分かりやすいかもしれません.

 片方が完全に有利であればそちらがメインストリームになる筈である のに,現在どちらも存在することからも分かる通り,それぞれメリット・ デメリット,技術的な実現の困難さが存在します.そのため,片方が 完全な有利/不利ということはありません.

 染料系インクは現在主流のインクです.ノズルの目詰まりが発生しにくく, 印刷が綺麗(発色,粒状感,透明さ,鮮明 etc)であるというメリット がある反面,耐光性,耐候性,耐水性が悪いというデメリットがあります.
 一方,顔料系のインクの場合,染料系インクのメリット・デメリットが それぞれ逆になった特徴を持ちます.また,使用するインクの成分や紙に も依りますが,一般に染料系インクの方が印刷時に滲みやすく,顔料系 インクの方がシャープでクッキリとした印刷が可能です.一般的に, インクジェットプリンタ用紙はインク受理層と呼ばれるコーティングが なされていたり,速乾性を高める工夫がされています.そのため, 染料系インクを 利用した場合でも印刷時の滲みが少なくなります.しかし,普通紙,所謂 PPC用紙を使用する場合,顔料系インクを使用しなければ,レーザプリンタ のようなシャープな印刷結果を得られないでしょう.

 この説明を読み,顔料系のカラーインクを使えば良さそうだと思われるかも しれませんが,顔料系インクは成分を均質に分散させておくのが困難です. そのため,コンシューマ向けの製品で,顔料系のカラーインク(黒インク以外)が 使われることはほぼ無いと言って良いでしょう.

 また,何かとレーザープリンタと比較されるのが,耐光性耐候性そして耐水性です.前者2つがが悪い場合,光を 当てたり,ガスに触れていると,次第に褪色します.つまり,明るい 所に長期間貼るようなポスターや,長期間保存したいものの印刷には 向かないということを意味します.

 しかし,これら欠点は,日々続けられているインクの研究により,近年急速 に改善されて来ました.例えば HP はインクの改善により,耐光性20年以上. 純正プレミアムフォト用紙に印刷した場合,20年以上の耐候性があると 謳っています.とは言え,レーザープリンタにはどうしても劣るでしょう. また,酸性紙(PPC用紙をはじめとする用紙は大抵これです)に印刷する 場合,数十年経つと用紙そのものが変色し,そしてボロボロになります. 長期間保存する場合は中性紙(文房具としては,『100年ペーパー』のよう な名前で売られています)に印刷するなど,工夫が必要でしょう.

 次にインクジェットプリンタのアキレス腱とも言える耐水性の悪さ です.これに散々悩まされた結果,『やはり書類の印刷はレーザープリンタ でなければダメ』と,考え到った人も多いと思います(かく言う私も その一人).元旦の天候が雨の年に,年賀状の印刷がドロドロに流 れてしまったものを受け取ったり,汗で濡れたた手で印刷物に触れてしまい, 字が滲んでしまった経験がある人は多いのではないかと思います.

 顔料系インクを使用すれば,このような事故は劇的に改善されますが, カラー印刷では顔料系インクが利用できません.とは言え, これも最近は耐水強化剤の添加をはじめとするインク成分の改良により,数年前と 比較して劇的に改善されています.また,どうしても気になる場合には, 対策の施された用紙を使用したり,印刷面に保護フィルムを貼ったり, 画材屋等で売られている,定着液やラッカーをスプレーをすると良いと 思います.耐候性が高まるほか,UV対策がなされている場合もあり, 耐光性も高まります.

■ランニングコスト
 本体購入時にはなかなか目が向かず,いざ本格的に使用するようになって から驚く可能性のあるものに,ランニングコストが挙げられます.用紙代や 電気代を除いて考えますと,レーザープリンタの場合はトナーとドラム(一体 型のものもあります).インクジェットプリンタの場合はインクカートリッジ (インクタンクとヘッドが分離型のものもあります)の代金がこれにあたります.

 レーザープリンタの消耗品はえらく単価が高いため,ランニングコストも 高価に思われがちですが,実際に使用してみると,モノクロ印刷の場合は案外 そうでもありません.個人で利用する程度の頻度という前提条件が付きますが, 画像を多用しないものばかり印刷している場合,忘れたころにトナーが切れる という感じです.トナーのみで試算しますと,モノクロ 1枚辺り約1円〜5円 くらいです(文字ばかりのものを印刷している私の感覚では,1円未満のような 気も…).

 一方,インクジェットプリンタの場合,インクカートリッジの単価は割と 安いものの,かなり減りが早く感じられます.フラグシップモデルで見た 場合,メーカー公称値でモノクロ印刷の場合は1円〜2円くらい.カラー印刷 の場合で10円弱〜50円でしょうか.殆どのメーカーでJIS規格のサンプル画像 を印刷した場合のコストを公開していますので,比較してみると良いで しょう.

 なお,上記値は純正インクを使用した場合です.サードパーティ等から 発売されている詰め替えインクを使用すると,一枚辺り1円未満になる 場合もあります.ただし,詰め替え時に注射器を使用する必要があるもの もあるほか,印刷品質が今ひとつになったり,故障時にはサポート 対象外になる危険性もありますので,その利用は自己責任ということになり ます.

 その他,ランニングコストに響く物としては,インクの色数,インク カートリッジの形態,ヘッド一体型かなどがあります.

 順に説明しますと,色数が多ければそれだけ1カートリッジ辺りの容量が 制限されやすい他,1色でもインク切れになると印刷ができなくなる場合が あります.次に形状ですが,最近のプリンタは多色利用 にも関わらず,Canon 製以外は数色を1個のカートリッジに納めています. そのため,他の色はまだ残っているのにカートリッジごと交換しなければ ならないということになります.最後の『ヘッド一体型』に関してですが, これはカートリッジの値段そのものが高めになります.

■付加機能
 ロール紙印刷CD-R印刷に関しては簡単に前述しましたが, 機種によっては,この他にも付加機能を搭載している物があります.

 私の場合,普通に紙に印刷する機能を有するプリンタの購入を 検討していたために重要視しませんでしたが,ヘッドを交換する ことにより,スキャナとしても利用できる物が存在します.また, 最近流行なものとして,複合機と呼ばれるものがあり, プリンタ機能以外にスキャナやFAX,コピー機能を搭載して いる製品が売られています.PC本体を購入して 周辺機器をこれから揃えようという方にとっては,単機能のプリンタよりも 複合機の方が魅力的かもしれません.価格的にも割安になるほか,設置面積 的にも魅力的でしょう.

 ただし,複合機のそれぞれの機能の性能は,単機能の製品と比較した場合, 一般に劣ります.また,個別機能が陳腐化した際に,部分的にアップグレード を行うことは難しいというデメリットがあります.とは言え,個人的には HPのhp psc 2150 は良いなぁと思ったりもします.プリンタエンジンは HP の最新機種と同じ ものですし,スキャナ機能も 1200dpi*2400dpi/48bit と必要十分.値段も 手頃ですし,付加価値を考えるとお勧めかも.実際,店頭ではかなりの売れ 行きを示しているようですし,購入した知人(複数)の評判もまずまずです.

 少々脱線しましたが,プリンタ購入する際に個人的に求めたい機能は, 両面自動印刷機能です.通常のドキュメントを印刷する際に紙の節約が 行える(単にコスト的な問題だけではなく,印刷物保管時のスペースの問題も 改善)ほか,両面に印刷する必要のある 葉書などを印刷する際には,とても重宝します.特に年賀状などを大量に印刷 される方にとっては嬉しい機能だと思います.

 その他,最近の流行は「ふち無し印刷」でしょうか.従来の プリンタですと,どうしても紙送りなどのために印刷できないエリアが 存在します.やはり四隅まできちんと印刷出来た方が,何かと便利です. また,用紙全面に写真を印刷する ような場合,上下左右でスペースがバラバラな場合は少々間の抜けた印象を 持つものになってしまいます.

■HP DeskJet 5550を購入
■購入に到るまでの道
 少々前振りが長くなりましたが,私は hp deskjet 5550 を購入しました.前々から常々,普通紙印刷の綺麗さや両面自動印刷機能, サーマルインクジェット方式の採用,静粛性等でHP のプリンタには魅力を 感じていたのですが,1つだけネックになっているものがありました. それは写真画質です.

 無論,私は写真印刷をメインにするつもりはありませんが,それでも たまに写真印刷をします.新規に購入することを考えた場合,EPSON や Canon 製の派手な広告展開を見ていると,従来のHP製機種は今ひとつの 感がありました.しかし,HP は日本市場向けモデルとして DeskJet 5551, ワールドワイド商品としてDeskJet 5550を発表し,写真画質印刷にも 十分対応できる製品を発売するとのアナウンスがありました.そして 私は発売日を待ち,日本橋のとある量販店に向かいました.とりあえず カタログを収集に….しかし,気が付くと DeskJet 5550 の箱を抱えて 帰宅を急ぐ私がいました….『このプリンタ,スターウォーズみたいで デザインが格好いいでしょ?』なんて店員に勧められたような気もしま すが,きっと気のせいでしょう :-).

 5550と5551の大きな違いは,そのデザインと標準添付のインクカート リッジ,そして両面印刷機能の有無です.5551は6色のインクカート リッジが標準添付されているほか,5550ではオプション扱いの両面印刷 機能も標準です.しかし,基本的なプリンタエンジンは同一ですので, 5550を購入した場合でも,フォトインクカートリッジを購入すれば 同じように写真画質で印刷 できます.また,両面印刷機能もオプションを取り付ければ利用できます.
 一番大きな違いは見た目です.5551はメタリックな青を基調とした カラーで四角いスマートな形状をしているのに対し,5550はシルバーを 基調として丸っこいデザインをしています(しかし,実際の設置面積的 にはそれほど違いはありません).

 私が5550を選択した理由は『スターウォーズみたいでしょ』と,勧め られたことではなく :-),その価格差です.7千円近く価格差があり (当然5551の方が高い) ましたが,5550はキャンペーンを行っており,両面印刷モジュールをセット で付けてくれるとのこと.これは葉書両面印刷に正式対応しているとメーカーは 謳っていないが,使えるとのことでした(実際使えました).この金額差 であれば,フォトインクを追加購入しても 5550 の方が安くなります.

 ちなみに購入金額は2万円を若干切る額でした(追加購入した消耗品 は除く).これだけのクオリティの物がこんなに安く買えるなんて…. 驚きました.

■HP DeskJet 5550
本体と両面印刷モジュール.
配送してくれるか頼んだところ, 『十分持っていけますよ〜』と,言われたので担いで持って帰りました. 途中,ちょっとだけ後悔したかも.
両面印刷モジュールは deskjet 948c 用.キャンペーン品.HPの在庫処分(?)
待望の写真画質.でも,『**』と,なっていることからもお分かりのように, 5550の場合はオプションのフォトインクを追加購入しなければいけません.
印刷スピードも高速.黒インクは顔料系のため,レーザープリンタにと比べても,それほど見劣りしません
葉書印刷もでき,3辺ですがフチ無し印刷も可能
推奨システムはこんな感じです.OSが最低限動くスペックがあればOKということです.
内容物一覧
スターウォーズみたい…ですか?
プリンタ側のボタンは3つあり,下から電源ボタン,排紙ボタン, キャンセルボタン.

印刷中に「あ!今すぐこの印刷ジョブをキャンセルしたい!」 と,いうことはよくありますが,そういうときにキャンセルボタンがあると至極便利

コネクタは正面向かって右後ろに集中.上からプリンタ,USB(1.1),ACアダプタポート
ノーマルの状態では,背面はこのようになっています.これを外して両面印刷モジュールを取り付けます
両面印刷モジュールの型番
ずりずりっと滑り込ませ…
奥までカチッとはめたら完成
両面印刷モジュールを取り付けると若干奥行きが増します
インクは全面の蓋を跳ね上げて取り付けます.
同梱されていたインクカートリッジ.黒インクカートリッジと3色インクカートリッジ.合わせて4色
プリンタの電源を入れた状態で蓋を跳ね上げると,インク取り付け部分が 右から移動し,このように中央で停止します.取り付け蓋に書かれている 数字は,インクカートリッジの種類を表します.間違えないように入れましょう.
向かって右側には黒またはフォトインクを入れます.

同梱されていた黒インクカートリッジ.ヘッド一体型です. 取り付け時には,ノズルを保護しているシールを剥がします.

同じく同梱されていたカラーインクカートリッジ.3色が1パッケージになっています.




インク取り付け部のカバーを跳ね上げ,インクカートリッジを奥まで差し込み, 再びカバーで固定すれば取り付け完了です.

用紙はこのように150枚までスタックでき,排紙トレーの下に収納されます. そのため,設置面積が少なくて済むほか,用紙の交換も前面から行えるので楽. 用紙を入れたままで長期間放置しても,紙がたわんでしまって紙詰まりの 原因になることが無いというメリットもあります

余談ですが,このようにネットワーク接続可能なプリンタサーバを直接接続し, ネットワークプリンタとして使用することもできます.ただし,このプリンタサーバ (Corega Fast PServer) はサードパーティ製のためか,5550 で利用した際に自動 両面印刷機能が使用できませんでした.HP 純正のプリンタサーバであれば, 問題なく使用できるかもしれません

追加で購入したフォトカラーインクカートリッジ.3980円也.黒インクと 排他利用になります.箱の上の方に『PICTY』と印刷されていますが,これは NEC が HP からプリンタのOEM供給を受けており,PICTYブランドで販売しているためです.

パッケージ裏には取り付け方法の親切なマニュアルが書かれています.


併せて購入してきたHP純正のプレミアムプラスフォト用紙 (つまり,最高グレードのフォト用紙).つや消しと光沢の2種類.値段は1枚辺り約90円

おまけとして,アイロンプリント用紙(プリンタで印刷した物をアイロンで Tシャツ等に転写できる)まで付いてきました

純正用紙ラインナップ.
一般に,用紙はサードパーティ製の方が安上がりになります.HP の場合は印刷時に センサで用紙を自動認識しますので,プリンタのプロパティで用紙のグレードを 指定しなくても大丈夫.そのため,他社のプリンタと比較して,サードパーティ製用紙 が使いやすいかもしれません(*).なお,私の場合,普段は文房具屋などで売られている, ごく普通のPPC用紙を使用しています.

(*)『この○○って紙,純正品のどのグレードと対応しているんだ?』と,いうこと はよくありますので…

 本当はプリンタサーバを利用して LAN に直結し,共有プリンタとして 使用することを目論んでいました.しかし,前述の理由により,BKi810 に 直接接続することにしました.また,DeskJet 5550 はプリンタポート も利用可能ですが,太いケーブルを取り回すのが面倒なため,USB接続で 使うことにしました.

■使用してみて
■まとめ
 家には現役のプリンタとして,カラーインクジェットプリンタの MJC-830C および,モノクロレーザープリンタの LBP-320 が稼働し ていました.しかし,DeskJet 5550 の導入により,前者は役割を終 えて廃棄(購入当初は, Linux で普通に使えるカラープリンタとし て重宝していたのですが,Linux からカラーで打ち出す頻度が殆ど 無くなったのと同時に,画質的に著しく見劣りするため).後者は プリンタサーバを利用した共有プリンタとして現在も動いています が,使用頻度は著しく低下しました.

 さて,5550 の実際の使い勝手ですが,以下のようないくつか気に なった点があります.

  • インクの減りが結構早く感じる(とは言え,インクジェットプリンタとしては優秀だと思います)
  • 両面印刷を行う際に,一度排紙トレーに排紙し(このとき,アームで スタックから浮かせた状態で保持),乾燥を待ってから 再び給紙&裏面の印刷を行う.この待ち時間が少し長く感じる
  • 4辺縁無しの方が便利に思えるケースが若干あった.特に年賀状印刷…
  • 不安定な所に設置したためもあり,左右方向への振動がやや 大きく感じた
  • 用紙自動認識は行うが,用紙サイズまではチェックしない.その ため,サイズの小さな紙をセットしてA4用紙として印刷すると,インクが 変な所に付着し,印刷物が汚れる(ただし,付着したインクは拭けば 簡単に取れます)
  • 年賀状の両面自動印刷を行った際に,乾燥時間が不十分である ためか,スタックしたものにうっすらと写ってしまったり,両面印刷 モジュールのレールの部分に掠れが出た
 しかし,致命的な欠点と言えるほどのものはありませんでした.

 一方,良い意味で驚いた点としては,

  • 普通紙印刷がとても綺麗で,特にモノクロ印刷の品質はレーザープリンタが不要に思えるほど
  • 普通紙に印刷した場合でも,裏写りが殆ど無い
  • 滲みや掠れが殆ど無い
  • 6色インクを用いたプレミアムプラスフォト用紙への写真画質印刷には唖然とするほど綺麗
  • 以前使用していたインクジェットプリンタと比較して,耐水性に関して隔世の感がある
  • 両面印刷は予想以上に便利

 タイミング的に年賀状印刷に間に合ったこともあり,2002年に購入した 周辺機器として,我が家で最も活躍したものになりました.満足度の高い 買い物でした.


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