USBを使用しての拡張[7] MOドライブ

■リムーバブルメディアについて
■リムーバブルメディアの栄華盛衰夢の後
 一昔前であれば,誰でも使えるリムーバブルメディアと言えばフロッピー ディスクでした.ちょっとしたデータをバックアップしたり,他人とやり取り する場合などに活躍しました.しかし,画像や音声,動画データ等も扱うよう になると,1.44MBという容量はあまりにも小さいため,一時期,これを更新すべく, 数多くのコンシューマ向けリムーバブルメディアが発売されました.

 これらはメーカー 独自の仕様のものも多く,百花繚乱の様相を呈していたことは記憶に新しい ところです.その多くは容量の不足や高いメディアの入手性や単価,信頼性に 対する不安などで自然淘汰されて行きました.現在も残っており,かつ,現役で広く 使われている 規格はそれほど多くありません.ある意味,中途半端な規格の製品は, 廉価かつそこそこの容量を持つ CD-R/RW が普及したことにより,市場から 駆逐されてしまったとも言えるでしょう.

 私の身の回りを見てみますと,(主観的に判断するところの)過去のメディア としては,PD,DVD-RAM(片面2.6GBのタイプ),Zip100が多数転がっています. 現在もこれらメディアが読み書き可能なドライブが手元にありますが,使用頻度 は極めて少なく,まとまった数量ストックしている未使用メディアは一向に減る 気配はありません.おそらく今後も使用されることは滅多に無いでしょう…

 一方,私が最近比較的良く使用するメディアは,CD-R,DVD-R/RW/RAM です. ここ1年ほどで DVD-R の利用頻度が高まり,それに伴って CD-R の利用率が 低下してきましたが,使い捨てに近い用途には未だに多用しています.

 そしてふと気が付くと,12cm メディアばかりが幅を利かせています.

 どのような構成のPCであっても,CD/DVD-ROMドライブは付いている場合が多いため, データの受け渡しの際に,『うちにはドライブが無いから読めない』と,いうことは まず無いと思います(DVD-RAMは除く).そういった意味では,落ち着く所に落ち 着いたような感じもします.また,将来的にも,DVD 系メディアは無視できない ほど(メーカーが急に切り捨てられないほど)普及していますし,仕様的にも 益々の発展が望めそうであり,過去の規格が全く使えなくなる(読めなくなる) という状況は考えにくいため,安心して使用できます

 しかし,日本国内の場合,現在も比較的広く使用されているリムーバブル メディアがあります.それが MO (光磁気ディスク) です.

■MO の概要(動作原理等)
 MOディスクとは『Magneto Optical Disk』の略であり,日本語で表記すると 『光磁気ディスク』となります.文字通り,光(レーザー光)と磁気を使用して, メディアにデータを記録/読み取りを行うメディアです.

 発表当時,リムーバブルディスクと言えば普通の磁気記録が一般的で,フロッピー ディスクのお化け的なものが大半でした.そのため,磁気を帯びた製品に近づける ことにより簡単にデータが破壊されてしまうほか,経年変化に対する耐久性の問題 が指摘されていました.

 そのような中で発売されたコンシューマ向けの MO ドライブは,作業用のデータ 一時置き場的な用途や,他人との大容量データ交換用のみならず,保存メディア としても安心して利用できるリムーバブルメディアが出たという意味で,広く 一般に好意的に受け入れられた感があります.

 なお,現在 MO と言うと,コンシューマ向けの 3.5inch が真っ先に頭に浮かび ますが,5inch のタイプも存在します.そして 5inch タイプの MO は,その昔 Canon が製造し, NeXT に使用していたドライブや(家の押入の中で埃を被って います…. 当初からその動作音の派手さのために心配されていた通り,ドライブの耐久性は ありませんでした…),現在も MRI コンソール等で使用されているような SONY 製 ドライブも存在します.しかし,本ページでは基本的に,3.5inch の メディア/ドライブに関してのみ解説することにします.

 MOの規格は,富士通とソニーが 策定しており,現在一般に販売されているドライブは,富士通製やオリンパス製が 殆どです.

 MO はメディアの片面1層のみ使用し,最初期には1メディアで 128MB の容量 を持ち,その後 230MB, 540MB, 640MB, 1.3GB と順調に容量を増やし,現在最も容量 の大きなものは 2.3GB のタイプ(2001年10月発表)のものまで出ています.基本的に 下位互換性を持たせる形で発展してきているため,例えば 1.3GB のメディアに 対応したドライブであれば,128MB〜1.3GB までのメディア全てに対応します(※).

※128MB〜540MBの メディアはブロックサイズが512byteでしたが,640MB以上のメディアの場合は 2048byteです.そのため,古いソフト/OS の場合,640MB〜のメディアが利用 できない場合があります.

 動作原理等に関しては, こちらのページに大変 詳しくまとめられていますので,一読をお勧めします.

 屋下に屋を架す感じですが,MO の動作原理は以下のような磁性体の特性を 利用しています.

  • 一般環境では全く影響を受けないような強力な磁性体でも,高温(キューリー 温度)に晒された場合には,容易に外部磁気の影響を受け,磁極を反転させることが 可能になる
  • 磁性体に光を照射した際に,反射面の磁界の方向によって反射光回転角が 微妙に変化する(Kerr効果)
 そして上記の特性を利用し,以下のような方法でメディアに対して データの書き込み/読み出しを行います.

  • ラベル面の反対側からレーザー光を1ミクロン程度の範囲にスポットで照射し, 瞬間的に(書き込みを行う)磁性体エリアをキューリー温度に上昇させる
  • ラベル面側に取り付けられた磁気ヘッドを使用し,データの書き込みを行う(極性変化等)
  • データ読み出しは,書き込み時よりも弱いパワーのレーザー光を照射し,照射 した場所の磁界の方向を読み出す

 なお,従来方式では 3.5inch メディアには 1GB が限界と言われていましたが, 1999年11月5日に発表された 1.3GB(GIGAMO)以降では,MSRという方式を使用してデータ の読み取りを行っています.

■MO のメリット,デメリット
 放送業界,CAD業界,出版業界では現在も MO の利用が一般的なようであり, Mac ユーザーにも MO ユーザは多い傾向があるようです.容量的に大きいと言えなく なってきた MO が未だに使われるのには理由があります.個人ユーザの多くは過去の 資産継承という意味で(ある意味惰性的に)利用していると考えられますが,改めて 2003年現在の目で見た MO のメリット,デメリットを考えてみましょう.

メリット:

  • メディアの記録方式として安定した方式を使用しているので,長期保存に適する
  • カートリッジ封入タイプなので傷が付きにくい
  • 他環境で『読めない』といった事故は発生しにくい
  • メディア単価が廉価

デメリット:

  • 書き込みが遅い
  • メディアのバイト単価が割高
  • ドライブの耐久性が低い(埃に弱い等,トラブル事例をよく聞く)
  • ドライブ,メディア共に扱いが次第に縮小されつつある

 長期保存に関して少し解説を行うと,CD-Rのような色素を使用した物の場合は 紫外線などにより特性が変化し易いため,経年変化という面で非常に弱いものと言えます. 一方, CD-RW や DVD-RW/RAM のように物理的に安定な相変化を使用したものが好ましいと 考えられますが,実際に使用してみると -RW 系メディアは数十回でも書き込み不可に メディアも多く,耐久性に疑問があります.

 書き込みスピードに関しても解説を行うと,MO の書き込み時には『消去→書き込み→ベリファイ』 といった3段階のステップを踏みます.ここで『書き込み→ベリファイ』と2ステップで書き込み を行う方式もあり,『OW (Over Write)』と言います.このモードを使用するためには メディアもそれ専用のものが必要であり,ドライブも対応している必要があります. OWを使用すると 50% 近く書き込みスピードが向上しますが,元々それほど高速な デバイスではないため,劇的なパフォーマンスアップを体感できないかもしれません (メディアがかなり高価になることから,私の周りで使う人は少ないです). また,高速化のアプローチとして,メディア回転数の向上やキャッシュメモリの増量と いったアプローチも採られています.

■MO を使う
■USB MOドライブ HMO-1300USB
 数年前,日本国内においては,リムーバブルドライブと言えば MO ドライブで あると言えるほどのシェアを持っていました.そして周りの人が持っているから メディアのやり取りも楽ということから,益々シェアを増やすという良い循環が なされ,今後も盤石かに思われていました.そして PD や DVD-RAM(片面2.6GBの タイプ) をはじめとする強力な対抗馬が出てきても,将来は明るいと思われてい ました.しかし,CD-R メディアの下落や廉価なCD-R/RWドライブの普及により, 一気に黄昏のときを迎えたかに思えました.

 しかし,最近は再び MO ドライブの需要が伸びてきているようです.この原因 は,最近のノート型PCでは FDD を内蔵せず,また,FDDが別売りに なりはじめたからです.そのため,多くのユーザーは『FDDドライブを買うので あれば,もっと容量のある MO ドライブを』ということで, USB 接続タイプの MO ドライブを購入することが多いのだとか.携帯に適した小型の USB バスパワー タイプのドライブが廉価に販売されていることもあり,この傾向に拍車がかかった のかもしれません.

 USB 接続の MO ドライブの大半は,『USB 大容量記憶装置デバイス』,すなわち マス・ストレージクラスのドライブとして動作します.これはどういうことかと 言いますと,Windows に特殊なドライバをインストールしなくても使用でき,挿せば 即使えることを意味します.また,USB バスパワーのドライブであれば,本体から 電源供給可能ですので,AC アダプタも不要です.ノート型PCで利用する場合,特に 持ち運び等をする場合はとても便利な機能と言えるでしょう.

 私の場合はと言いますと,MO の利用頻度はそれほど高くはありません.また, これまで自宅でヘビーに使用してきたわけでもないため,過去の遺産もありません. とは言え,たまに人から送られてくるデータが MO に入れられていたりですとか, ちょっとしたデータの持ち運びの際に,12cm メディアは少々嵩張るから…といった あまり前向きでない理由で現在も使い続けています.その 程度と言えばその程度ですが,これまで使用してきた SCSI 接続の 640MB ドライブの 調子が悪くなってきたため,買い換えを検討していました.都合の良いことに, 大阪日本橋に『あぷあぷ』が出店し,その開店セールのときに安価で売られている ものを見つけたため,購入した次第です.

 なお,デスクトップで利用することを考えていたため,USBバスパワータイプに 拘る必要はありませんでした.そしてどうせならと 1.3GB 対応(GIGAMO)の タイプを購入しました(※).『それなら 2.3GB 対応のドライブを購入すれば?』…と, いう意見も出てきそうですが,未だ 2.3GB 対応のドライブを店頭で目撃したことは ありません.このドライブ,販売実績はどのくらいあるのでしょうか…

※購入当時,USBバスパワータイプは 640MB 対応ドライブしか存在しませんでした. 現在は,USB バスパワー対応の GIGAMO ドライブである DynaMO 1300U2 Pocketが売られています.

富士通純正の HMO-1300USB.日本橋の『あぷあぷ』1号店で19,800円で購入(2002年12月)
スペックは,128MB〜1.3GBメディア対応で,230MB〜640MBはオーバーライト対応. 回転数は 4,558rpm/ 3,214rpm(1.3GB メディア).シークタイム23ms,キャッシュ2MB. 消費電力は 13.5[W]以下.

122x162x34[mm]で630[g]と小型軽量の USB (1.1)接続タイプです.

内容物一覧.縦置きスタンドや,小型のACアダプタが同梱.ドライバーCDも 付いてきますが,USB マスストレージクラスのドライバ が入っているOS(ex. Windows Me/2000/XP)であれば,ドライバ不要です.

ドライブ正面と背面.1.3GB メディアに対応していることを示すGIGAMOのロゴ 付き.なお,イジェクトボタンはアクセスランプと兼用です.

背面には,電源スイッチも付いています.また, USBポートは mini-B 端子という特殊な形状ですが,ケーブルが同梱され ているので問題ありません.ただし,それほど長いケーブルで はないので,設置場所によっては別途購入の必要があります.

正面に捕えていないので少し見にくいのですが,BKi810 横の外付け ATX電源の上に設置.横置きの他,同梱のスタンドを使用して縦置きも可能かつ 小型ですので,置き場所に困ることは無いでしょう.

ちなみに BKi810 に接続する場合は,本体の USB ポートに接続せず,USB Hub 経由で接続した方が良いでしょう.(BKi810 は,本体のUSBポートに直結すると 動作しない機器が多数存在します)

■USB MO driveの使い勝手
 Windows Me/2000/XP であれば,基本的に挿せばそのまま『リムーバブルディスク』 として認識します.何ら設定の必要がありません.とても手軽です.

 次に気になるスピードですが,本ドライブは USB 2.0対応ではなく, USB 1.1 対応ドライブのため,転送速度が気になる所です.ちなみに USB の 転送速度は,USB 2.0, USB 1.1 それぞれカタログスペックでは 480[Mbps], 11[Mbps]となっており, 雲泥の差です.そこで HDBench 3.22 を使用して転送スピードを計測した所, 以下のようになりました.なお,共に メディアはFAT32でフォーマットしており,20[MB]のデータで計測しています.

メディア Read [KB/sec] Write [KB/sec] Copy [KB/sec]
1.3GB991981282
640MB999665301

 USB1.1 の転送速度は大雑把に見て 1[MB/sec] 程度ですので,まぁ順当な結果 かなと思います.MO はその動作原理上,読み込みは高速に行え,書き込みは低速 になります.それを考慮しながら上記のデータを読むと,読み込みに関しては 共に USB 1.1 の転送スピードで頭打ちになっており,1.3GB メディアに関しては, 書き込みスピードも USB 1.1 の帯域が足を引っ張っているように見受けられます.

 ちなみに,640MB 対応の SCSI 接続の MO ドライブ(FUJITSU M2513A)では, HDBench 2.61 で計測した結果,Read は 1,747[KB/sec],Write は 510[KB/sec] でした.640MBメディアに着目すると,読み込みは USB1.1 がボトルネックに なっている反面,書き込みスピードに関しては,ドライブの世代が新しくなるのに 伴って若干スピードアップしているように見受けられます.

 何れにしても,ハードディスクの転送スピードが 33[MB/sec] を超えるのが当たり 前になっている昨今,このスピードはかなり遅いと言っても過言ではありません. CD-ROM/R と比較した場合,1.3GB メディア利用時の読み込み/書き込みスピードは, 約6.6倍速ということになります.CD-R よりも(パケットライトソフトを利用した 場合も含めて)使い勝手は良いのですが,このスピードでは割り切った使い方が 必要だと思います.

 例えばファイルの2重化をすることによるバックアップや,ファイルの一元管理 を考えた場合,LAN 上にファイルサーバ的用途のマシンを稼働させておくというの も手だと思います.私の場合,Asus Terminator TU に Linux を入れ,samba を使用 して Windows とファイル共有可能にしています.このような環境で BKi810 (100Mbps の Ethernet Switch 経由で接続)からネットワークドライブとして利用した場合, Read/Write/Copy はそれぞれ,10224/9926/428 [KB/sec] 出ます.USB 接続の MO では 逆立ちしても敵いません.

■まとめ
 ファイルのやり取りも含め,殆どの事がネットワークを介して行われる ようになってきた昨今,リムーバブルメディアの意義は,『大容量』と 『安定性(耐久性・長期保存性)』,そして『バイト単価の安さ』に求め られてきているように思われます.そのような中,今回 MO ドライブを新規 購入したわけですが,これら要件の中で『安定性』以外は心許ない限り です.

 しかし,過去の資産があったり,周りの人と MO を使ってデータをやり 取りすることが多い場合は,まだ数年はバリバリと使えるメディア(規格) であると思います.

 改めて今回購入した USB MO ドライブに関してまとめると,

  • USB接続かつドライバ不要なので設定が楽
  • 小型軽量などで設置や取り回しが楽
  • ファンレスなので静か.また,埃を吸い込まないので良いかも
  • 電源スイッチが付いているので,使用開始/使用終了時にケーブルの抜き挿さしをしなくて良いので楽
といったメリットがありました.一方,
  • バスパワーでないため,ACアダプタが必須
  • USB2.0 対応ではないため,パフォーマンスが低い
といったデメリットもありました.

 最近何気なしに近場の電器店の売り場を見ていて気になっているのは, ドライブもさることながら,次第に MOのメディア陳列棚の面積が少くなって きたことです.また,一応 230MB,640MB のメディアは潤沢に陳列されている のですが,1.3GB メディアは置いていない店もあります.

 バイト単価に関しても,他のメディアと比べると必ずしも安くはないことを 考えると,ニッチ的な用途に対して補助的に使用するというのが良さそうです.

 そして一番気になっているのは,このドライブの耐久性です.
 以前使用していた SCSI 接続の MO ドライブは1年少々経過した時点で使用 できなくなり,分解してレンズを磨くという手段で復活しましたが,しばらく すると再び不調になりました.ファンを搭載しており,埃を吸い込みやすいと いう構造上の問題があったわけですが,それにしてもあまりに短命でした.

 このときには幸いにしてメディアをソフト的に壊すまでは到りませんでしたが, クラッシュを気にしながら使うというのは精神衛生上よろしくありません. 今回購入したドライブはファンレスタイプのため,耐久性の面で先のドライブ よりはマシだと思うのですが,今後何年使えるかな…と,気になっています. 杞憂に終わると良いのですが…


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